ドクターコラム

透析医療の進歩がもたらしたもの

透析医療の進歩がもたらしたもの

奈良県立医科大学 泌尿器科学教室・透析部 病院教授 吉田 克法 先生

奈良県立医科大学 泌尿器科学教室・透析部 病院教授
吉田 克法 先生

透析医療の進歩がもたらしたもの

掲載日:2016/01/21

わが国の透析医療の歴史は、50年足らずの浅いものです。当初の透析治療は生存率も低く、様々な合併症による苦痛と極度の食事・水分制限から、「透析になったら終わり」と言われるほど辛いものでした。しかし今は、20年、30年と透析を続ける方や、仕事や趣味を続けながら充実した「透析ライフ」を送っている方が沢山いらっしゃいます。
こうした変化の陰には、医学の発達と世界トップクラスといわれる医療技術の進歩があります。高性能なダイアライザーの開発や透析液の清浄化技術の向上は、老廃物の除去能力を高め、透析不足による合併症を大幅に減らしました。

例えば、最近注目されている血液濾過透析(HDF)も、優れたダイアライザーや透析液があってこそ成立する技術です。HDFは、拡散に加えて血液を希釈し濾過することで血液を浄化しますが、これにより、血液透析では取りきれなかった大分子量の老廃物の除去が可能となり、透析アミロイドーシスなどの合併症が改善されるようになりました。また、血液に補液を加えることで、血流量の増加が可能となり、透析中の血圧低下も防げるようになりました。
一方で、透析では補いきれない部分もあります。それについては、薬剤が重要な役割を担っています。赤血球の増加を促して腎性貧血を改善するエリスロポエチンや、血中のリン濃度を下げる高リン血症治療薬などの分野では、近年、優れた薬剤が次々と開発されています。
また、進化は治療効果だけに留まりません。例えば、穿刺部に貼るパッチタイプの麻酔薬は、穿刺時の痛みを和らげますし、ベッドサイドへのテレビ設置や食事の提供といったサービスは、快適性を追求したものです。また、在宅透析夜間透析は、透析量の増加という利点だけでなく、患者さんのライフスタイルを軸に据えた時の、重要な選択肢となりえます。

皆さんもすでにご存じだとは思いますが、腎代替療法には、透析以外にも「腎移植」という方法があります。正直なところ、もし腎移植のできる環境にあるならば、医学的観点とQOL(生活の質)のいずれの面においても、腎移植が望ましいのは事実です。しかしながら、たとえ腎移植が困難な状況であったとしても、これまで述べたように、現代の透析医療は、身体の状態やライフスタイルに合わせて柔軟に対応し、選べる治療へと変貌しています。私たち医療者もできる限りのサポートをしていきますので、より快適な、自分なりの「透析ライフ」を実現していただきたいと思います。

☞透析ライフについては、こちらでより詳しく紹介しています。

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