教えて!ドクター

Q

慢性腎炎と診断されました。
何が原因でしょうか?

慢性腎炎と診断されました。
何が原因でしょうか?

回答いただいた先生
東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 主任教授 横尾 隆 先生
東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
主任教授 横尾 隆 先生
慢性腎炎の原因

掲載日:2023/10/13

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A

慢性腎炎は、その多くは腎臓の糸球体の炎症が長期間続く病気の総称で慢性糸球体腎炎と言われています。慢性糸球体腎炎は、以下のような病気に分類されます。

慢性糸球体腎炎の分類
● IgA腎症
● 膜性腎症
● 膜性増殖性糸球体腎炎
● 巣状分節性糸球体硬化症
 など


慢性糸球体腎炎を正確に診断するためには、腎生検が必要です。蛋白尿が続く場合などは、慢性糸球体腎炎が疑われ、腎生検が行われます。

☞ 参考:教えて!ドクター「腎生検とはどのような検査ですか?痛いですか?

慢性糸球体腎炎の原因は、その分類によって異なります。

● IgA腎症の原因
IgA腎症は、免疫※1 において重要な役割を果たす抗体※2 の1つであるIgA(免疫グロブリンA)が異常な形で作られ、それらが糸球体に沈着して炎症を引き起こす病気です。
根本的な原因は、はっきりとはわかっていません。発症しやすい人種や家系があり、遺伝子が関係している場合もあることがわかっていますが、それだけが原因ではなく、環境因子などのさまざまな要因が絡んでいると考えられています(*1)

※1 免疫:体に侵入した異物を排除する生体の防御システム
※2 抗体:病原体などの異物を体内から排除する働きを持つ、免疫グロブリンというタンパク質

● 膜性腎症の原因
膜性腎症は、抗体の1つであるIgGなどが糸球体の基底膜(血液のろ過膜)に沈着し、炎症を引き起こす病気です。
原因不明の場合が多いですが、以下のようなものが原因となって発症する場合もあります(*2)

・感染症
・薬剤
・がん
・自己免疫疾患
※ など

※自己免疫疾患:免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気

● 膜性増殖性糸球体腎炎の原因
膜性増殖性糸球体腎炎は、糸球体の血管の壁が厚くなる病気です。
原因不明の場合もありますが、以下のような病気が原因となって発症する場合もあります(*3)

・感染症(特にC型肝炎)
・自己免疫疾患
・がん
 など

● 巣状分節性糸球体硬化症の原因
巣状分節性糸球体硬化症は、糸球体の一部が硬くなる病気です。
原因不明の場合(一次性)もありますが、以下のようなものが原因となって二次性に発症する場合もあります(*4)

・遺伝子の変異
・ウイルス感染
・薬剤
 など


慢性糸球体腎炎は、原因が分からないことも多いですが、原因が分かれば、それを治療することで改善する場合もあります。

☞ 参考:教えて!ドクター「『慢性腎炎』と診断されました。治りますか?
☞ 参考:基礎知識「慢性糸球体腎炎

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<出典>
*1 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)難治性腎障害に関する調査研究班 編. エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン2020 東京医学社 2020:3-4
*2 山縣邦弘 他. II.一次性ネフローゼ症候群の病態・診断・治療3.膜性腎症 日内会誌2009;98:1023-1029
*3 金子佳賢, 成田一衛. 膜性増殖性糸球体腎炎 日腎会誌 2010;52:899-902
*4 佐藤博. 巣状分節性糸球体硬化症 日腎会誌 2010;52:888-893


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