ドクターコラム

腎代替療法の選び方

腎代替療法の選び方

大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学 教授 猪阪 善隆 先生

大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学 教授
猪阪 善隆 先生

腎代替療法の選び方

掲載日:2016/01/21

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腎代替療法には、血液透析腹膜透析腎臓移植の3つがあります。

3療法
2016年末の透析患者さんのうち、血液透析患者さんが97.3%を占め(*1)(2021年末では97.0%(*2))、腹膜透析患者さんの割合は、ここ数年減少傾向にあります。また、諸外国に比べると、日本の腎臓移植件数、特に献腎移植の件数が少ないのが現状です(*3)。つまり、日本においては、腎代替療法の選択は極端に血液透析に偏っています。腎臓病が進行した患者さんが腎代替療法を選択するにあたって、十分な説明を受けていないことがこの要因の一つと思われます。

☞参考:数字で見るCKD!

日本腎臓学会のCKD(慢性腎臓病)診療ガイド2012では、CKDステージG4 (糸球体濾過量が15~29mL/min/1.73m²に相当します)で進行性に腎機能が低下する場合には、腎代替療法に関する詳細な情報提供が推奨されています。しかし、忙しい外来診療の中では十分な情報提供が難しいこともあるでしょう。患者さん自身も透析療法を受け入れたくないという気持ちから説明を受けることができないのかもしれません。

情報提供を受ける患者さんもいくつかのタイプに分かれるように思います。「医者にすべてお任せしたい」患者さんもいれば、逆に「全ての情報を聞いて、自分で判断したい」患者さんもおられます。しかし、「ある程度情報は聞きたいが、最終的には決められない」患者さんが多い気がします。

治療法の選択にあたっては、これまでは医師が主導する意思決定がなされていたことが多かったです。しかし、時代とともにインフォームド・コンセント(説明と同意)という意思決定がされるようになってきました。腎代替療法の選択という局面においては、医学的な情報に加えて、患者の価値観やライフスタイルの情報が最善の選択をするうえで非常に大事です。

医師への相談
近年、治療法の選択の際に、医療者と患者の双方がお互いの情報を共有し、意見を出し合って意思決定するShared Decision Making(シェアード・ディシジョン・メイキング)という考えが提唱されています。
腎代替療法選択にあたっても、このような意思決定は重要です。大阪大学医学部附属病院では、腎代替療法選択外来を設けて、医師と看護師がペアとなり約30分かけて腎代替療法の情報提供を行っていますが、患者さんの価値観やライフスタイルなどの情報もお聞きするようにしています。同時に医療者の立場から、患者さんに適した医学的なアドバイスを加えることもしています。

療法選択はライフスタイルを大きく変える可能性があり、患者さんにとって最適と思える選択が医学的に不向きの場合もあります。逆に、医療者にとって最適と考える選択が、患者さんのライフスタイルに合わない場合もあります。患者さんが腎代替療法を選択する際には、自分のライフスタイルを踏まえて主治医の先生ともよく相談することが、患者さんにとって、よりよい療法選択をすることにつながると思います。

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☞【参考】
私はこうして治療法を選びました「腎代替療法 私の選び方
動画体験シリーズ「自分にあった治療法を見つけよう~療法選択外来の実際
3療法経験者インタビュー 松尾 裕子 さん

<出典>
*1 日本透析医学会 統計調査委員会 図説 わが国の慢性透析療法の現況(2016年12月31日現在)
*2 花房規男 他. わが国の慢性透析療法の現況(2021年12月31日現在) 透析会誌 2022;55:665-723
*3 USRDS. 2023 Annual Data Report//End Stage Renal Disease:International Comparisons


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