ドクターインタビュー

市立札幌病院 腎臓移植外科 部長
市立札幌病院 腎臓移植外科 部長

原田 浩 先生

原田 浩 <font size="4">先生</font>

原田先生が率いる市立札幌病院 腎臓移植外科では、北海道における腎移植の約半数を行っています。また、透析を経ないで腎移植を行う、先行的腎移植(プリエンプティブ腎移植)にも積極的に取り組み、現在では年間の移植の約半数が、透析を経ない先行的腎移植となっています。
長年、腎移植医療に携わってこられた原田先生に、腎移植医療に対するよくある誤解や、腎移植医療の現状について、そして市立札幌病院における取組みについてお聞きしました。
※原田先生は、現在、はらだ腎泌尿器クリニック 院長としてご活躍されています。

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取材日:2016/05/20

目次

Chapter 1: 腎移植医療に対するよくある誤解

-----まず、腎移植に関する基本的な情報についてお聞きしたいのですが、腎移植は誰でも受けられる治療なのでしょうか。

腎移植は、ドナーとなっていただける方がいらっしゃり、ご自身の健康状態が良ければ、誰でも受けられる治療です。

-----実際、こちらの病院では、腎移植を希望して受診された人のうち、どのくらいの人が移植を受けることができていますか。

当科を受診した人のうち、実際に腎移植を受けた人は約半数くらいだと思いますが、最初から移植を強く希望して受診された人に限れば、7割くらいの人が移植を受けることができていると思います。

-----どのくらいの腎機能となった段階で腎移植を検討し始めた方がいいのでしょうか。

色々な意見がありますが、先行的腎移植を行うのであれば、遅くともeGFRが20、できれば30mL/min/1.73m²までに、CKDステージでいうとG4までに検討し始めてほしいです。糖尿病の患者さんの場合はもう少し早い方がいいですね。また、肥満がある患者さんの場合は、減量のための調整時間などが必要になりますので、さらに早い段階で検討し始めてほしいと思います。
腎移植を希望しているのであれば、どれだけ早く移植施設を受診しても問題はありません。腎不全は生涯ずっと付き合っていかなければならない病気ですので、腎移植はその中の1つの治療でしかありません。そのように考えた方がいいと思います。

-----腎移植を希望して受診する人の中には、移植に対してどのような誤解をしている人が多いですか。

原田先生

一番多いのは、腎移植を受けるには、かなりのお金が必要だと思っている人です。数十万円~数百万円かかると思っている人がいまだにかなり多いですね。医療にお金がかかるのは当たり前ですが、現時点では、腎移植を受ける患者さんの自己負担は健康保険と医療補助制度によって、きわめて少額(移植した月で数万円~0円)で済むようになっています。
費用の次に誤解が多いのが、血液型不適合の移植はできないと思っている人です。また、輸血が可能な組み合わせ(例えば、O型からA型、AからAB型の移植など)は、以前から移植可能ですが、それさえもできないと思っている人が今でもいらっしゃいます。血縁者間でないと移植ができないという誤解もまだ多く、夫婦間の移植はできないと思っている人もいます。
その他には、最近では、透析を経ない先行的腎移植がだいぶ浸透してきましたが、いまだに透析をしないと移植はできないと思っている人もいます。加えて、入院期間に関する誤解もあります。施設によっても異なりますが、最近は、レシピエントは手術後2週間くらいで退院できますが、2カ月間くらい入院すると思っている人も多いです。
実際のところ、当院における血液型不適合移植は、全体の移植件数の3割弱となっており、夫婦間移植も5割くらい、透析を経ない先行的腎移植も同じく5割くらいを占めるまでになっています。

-----今お話しいただいたようなさまざまな誤解によって、移植を断念している人がいるかもしれないということですね。

そうですね。自分には腎移植はできないと思って透析導入した人の中にも、移植ができる可能性がある人はいらっしゃると思います。導入当時の知識が更新されないまま、透析を10年以上続けてしまうと、さまざまな合併症によって、いざ移植を受けたいと思っても、手術ができない状態になってしまう場合もあると思います。できるだけ早い段階で、患者さんが正しい知識を得られるようになってほしいと思います。

-----移植施設で腎移植に関する相談をしたり、話を聞いたりするのは無料でしょうか。

当院ではレシピエント移植コーディネーターがまず移植の相談に対応させていただいておりますが、もちろんお金は頂いておりません。お話をさせていただいた上で、移植を前向きに考えてみたいということであれば、外来を受診し、各種検査を受けていただく流れになります。
まずはご自身で制限をかけずに、話を聞きに来てほしいと思います。

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