ドクターインタビュー

- 1型糖尿病の慢性腎臓病患者さんへ -

膵腎同時移植を知っていますか?

九州大学病院

移植外科医  加来 啓三 先生
糖尿病専門医 中村 宇大 先生

- 1型糖尿病の慢性腎臓病患者さんへ -

膵腎同時移植を知っていますか?

九州大学病院

移植外科医  加来 啓三 先生
糖尿病専門医 中村 宇大 先生

<font size="3">- 1型糖尿病の慢性腎臓病患者さんへ -<br/><font size="4"> 「<font color="green">膵腎同時移植</font>」</font>を知っていますか?</font>

膵腎同時移植(すいじんどうじいしょく)とは、主に1型糖尿病が原因で末期腎不全となった患者さんを対象に、膵臓と腎臓を同時に移植する治療法です。九州大学病院は、2001年から膵腎同時移植を行っており、豊富な診療実績を持っています。
九州大学病院の移植外科医の加来啓三先生(胆道・膵臓・膵臓移植・腎臓移植外科 助教 写真:左)と、糖尿病専門医の中村宇大先生(腎・高血圧・脳血管内科 講師 写真:右)に、日本における膵腎同時移植の現状と課題についてお聞きしました。

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取材日:2019/05/15

目次

Chapter 1: 1型糖尿病患者さんの糖尿病性腎症と腎代替療法の選択肢

-----まず、1型糖尿病とはどのような病気でしょうか。

中村先生
糖尿病には、大きく分けて1型糖尿病(インスリン依存型糖尿病:IDDM)と2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病:NIDDM)があります。 1型糖尿病は、自己免疫の異常によって起こる病気です。本来は体内に侵入した菌やウイルスなどを排除する免疫機能が、血糖値を下げるインスリンというホルモンを作っている膵臓のβ(ベータ)細胞を攻撃して壊してしまい、インスリンがほとんど出なくなるために血糖値が上昇します。そのため、インスリンを毎日、自己注射する必要があります。 2型糖尿病は、いわゆる生活習慣病の1つです。体質的な要因に生活習慣が影響し、血糖値が高い状態が長年続くと、インスリンが膵臓から分泌されにくくなったり、効きにくくなったりして、インスリン注射が必要になることもあります。

膵臓と腎臓

-----糖尿病患者さんのうち、1型糖尿病患者さんの割合はどれくらいでしょうか。

中村先生
近年、日本では糖尿病患者さんが増えており、全国で1,000万人程度いると言われていますが(*1)、1型糖尿病はそのうちの5%程度とされています(*2)
当院は大学病院ですので、通院している糖尿病患者さんに占める1型糖尿病患者さんの割合は少し高く、9%程度になると思われます。腎・高血圧・脳血管内科に通院している糖尿病患者さんは800名程度ですので、常時70名程度の1型糖尿病患者さんを診察しています。

-----糖尿病が進行して糖尿病性腎症を発症する患者さんもいらっしゃると思いますが、1型と2型で、糖尿病性腎症の発症に違いはありますか。

中村先生
1型糖尿病の方が、血糖コントロールが難しい患者さんは多いです。ただし、2型に比べると血圧が正常な患者さんが多いので、必ずしも2型より糖尿病性腎症になりやすいというわけではありません。むしろ、2型糖尿病患者さんは、肥満があって血圧が高い方が多いので、糖尿病性腎症になりやすいかもしれません。

-----糖尿病性腎症を発症した後、1型と2型で治療に違いがありますか。

中村先生

中村先生
当院では、血清クレアチニンが2~3 mg/dL程度になったら、糖尿病専門医と腎臓専門医で一緒に診療するようにしています。そして、腎代替療法が必要になったときには、腎臓専門医から治療法の説明をしています。その過程に1型と2型で違いはありませんが、提示できる腎代替療法の選択肢は少し異なります。
2型糖尿病患者さんの腎代替療法の選択肢には、腎移植生体腎移植、献腎移植)、血液透析腹膜透析があります。これは、慢性糸球体腎炎腎硬化症といった他の慢性腎臓病が原因で末期腎不全になった場合と同じです。しかし、1型糖尿病患者さんの場合、これらに加えて膵腎同時移植という選択肢もあります。

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<出典>
*1 平成28年 国民健康・栄養調査(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/kekkagaiyou_7.pdf
*2 田嶼尚子 厚生労働省研究事業 1型糖尿病の疫学と生活実態に関する調査研究


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