腎移植ライフ

腎移植後の妊娠・出産
~腎移植後の生活で知っておきたいこと ④~

腎移植後の妊娠・出産
~腎移植後の生活で知っておきたいこと ④~

大阪大学 先端移植基盤医療学 准教授 市丸 直嗣 先生

大阪大学 先端移植基盤医療学 准教授 市丸 直嗣 先生

腎移植後の妊娠・出産<br/>
<font size="3">~腎移植後の生活で知っておきたいこと④~</font>

掲載日:2017/01/19

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透析患者さんを含めた末期腎不全の女性患者さんは、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)などの女性ホルモンのバランスが大きく崩れているため、排卵障害が主な原因で不妊となることが多く、妊孕率が極めて低いことが知られています(*)。また、妊娠できた場合も、出産に至るまでのリスクが大変高く、透析管理も難渋します。
一方、腎移植後は、腎機能の回復に伴い、ホルモン動態や卵巣機能が改善されるため、透析中に比べて妊孕率が高くなり(*)、妊娠後の母体や胎児の合併症が少なくなります。
※妊孕(にんよう):妊娠すること

■腎移植後に妊娠を希望する場合
腎移植後の女性患者さんは、透析中に比べて妊娠・出産できる可能性が高くなりますが、主治医の許可を得るまで避妊が原則必要です。
移植後に妊娠を希望する場合は、移植後の経過年数(移植後1年~2年程度)や、移植腎機能が安定していること、血圧が良好に管理できていることなど、いくつかの条件をクリアしなければなりません。また、腎移植後に服用する薬の中には胎児に影響がある薬もあるため、主治医から妊娠の許可を得た後、主治医の指示のもと、服用薬の変更が必要になります。そして服用薬の変更後も、一定期間、避妊する必要があります。
腎移植後に妊娠を希望する場合は、主治医に相談の上、計画的に進めていく必要があります。また、主治医の許可のもとに、不妊治療を受けることもできます。

準備

①服用薬の変更(主治医の指示のもと)
腎移植後に服用する免疫抑制薬や降圧薬、脂質異常症や高尿酸血症の治療薬、抗血小板薬や抗凝固薬などの中には、胎児への影響がある薬もあります。そのため、移植後に妊娠を希望する場合には、事前に主治医に相談し、移植後の経過年数や腎機能、血圧の状態など、腎移植後の妊娠適応基準を満たした後、必要に応じて服用薬の変更をしてもらう必要があります。

② 避妊(決められた期間)
腎移植後の妊娠適応基準を満たし、服用薬を変更した後も、しばらくは薬の影響があるため、主治医の許可が出るまでは、一定期間避妊する必要があります。

③ 血圧のコントロール
妊娠のためには、血圧を140/90mmHg未満にコントロールする必要があります(*)

■妊娠後の注意点
健常妊婦の場合も、さまざまな合併症が母体や胎児に起こることがあります。加えて腎移植後の妊娠・出産の場合は、母体には妊娠高血圧症候群、蛋白尿、移植腎機能低下、移植腎水腎症、尿路感染症などの合併症が起こりやすく、胎児には子宮内胎児発育遅延などが起こりやすくなります。
そのため、妊娠後は外来通院の頻度を増やして免疫抑制薬の濃度の調整を行い、血圧や食事、体重の管理を行います。

妊娠後の注意点

①血圧、食事、体重の管理
妊娠後も血圧の管理をしっかりと行い、新たな高血圧や、高血圧の増悪を認めた場合は、厳密な血圧コントロールを行う必要があります。
また健常妊婦同様、適切な食事管理、体重管理を行います。

② 免疫抑制薬の濃度の管理
決められたスケジュールで移植外来を受診し、免疫抑制薬の濃度をチェックします。

③ 定期的な血液検査や尿検査、胎児のモニタリング
健常妊婦同様、決められたスケジュールで妊婦健診を受けます。 産婦人科と移植外来を並行して受診し、それぞれの主治医の専門的な管理を受けることが必要です。

■出産後の注意点

母と子

出産後は、妊娠のために変更した薬を元の薬に戻します。移植腎を長くもたせるためにも、出産後も服薬管理や食事管理などの自己管理をしっかりと行い、決められたスケジュールで移植外来を受診します。
また、出産後の授乳に関しては、免疫抑制薬などを内服しているため、主治医に確認してから行うようにしましょう。

☞ 参考:レシピエントインタビュー 生体腎移植者 田中 恵 さん(仮名)


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<出典>
* 日本腎臓学会 腎疾患患者の妊娠-診療の手引き- 東京医学社、2007


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