腎移植ライフ

腎提供後の生体腎ドナーの自己管理
~腎移植後の生活で知っておきたいこと⑥~

腎提供後の生体腎ドナーの自己管理
~腎移植後の生活で知っておきたいこと⑥~

聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科 助教 谷澤 雅彦 先生

聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科 助教
谷澤 雅彦 先生

腎提供後の生体腎ドナーの自己管理<br/>
<font size="3">~腎移植後の生活で知っておきたいこと⑥~</font>

掲載日:2017/07/27

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生体腎ドナーの安全が保障されていないと、生体腎移植は成り立ちません。

CT
生体腎ドナーになれる方は、原則として腎移植を受ける方(レシピエント)の親族(6親等以内の血族と配偶者および3親等以内の姻族)であり 、本人が自発的に腎提供を望んでいることが前提条件です。その上で、さまざまな検査で腎機能や尿蛋白、全身の状態(がんがない、感染症がない、尿管結石がない など)を確認し、 安全性が確認された方のみが生体腎ドナーになることができます。

☞ 参考:腎代替療法の基礎知識「生体腎ドナーの適応条件

腎提供後、2つあった腎臓が1つになっても、腎機能はもともとの50%に永続的に低下するわけではありません。ドナーの腎機能は、腎提供直後は50%程度に低下しますが、数カ月たった頃から残された1つの腎臓が失われた腎機能を補おうとして肥大化するため、日本人では提供前の腎機能の65~70%程度にまで回復することが知られています(*1,2)

ドナーは腎提供後も提供前と変わらない生活ができます。ただし、提供前に比べて腎機能が低下するだけでなく、血圧が上昇しやすくなる(*3)、蛋白尿が増えやすくなるという報告もあります(*4)。また、ドナーに限らない話ですが、歳をとるほど糖尿病やがんになる確率は高くなります。
ドナーになれるのはとても健康な方ですが、このように腎提供後に腎機能が低下するリスクもあるので、定期的に移植施設もしくは近くの病院でフォローアップを受け、腎機能や体調のチェックを行うことがとても大切です。

☞ 参考:ドクターコラム「生体腎ドナーの腎機能と健康

■腎提供後の自己管理のポイント
腎提供後の日常生活では、以下のポイントをおさえて自己管理を行うことが大切です。

自己管理のポイント

① 1年に1回はドナー外来を受診する
腎提供後(2週間)、1カ月、3カ月、6カ月、1年、以降、最低でも1年ごとを目安に受診します。腎提供後10年、20年たっても、継続して尿検査と腎機能検査、血圧測定などを受ける必要があります。
ドナー外来は、腎提供を行った病院で受診することが望ましいですが、遠方である場合や多忙な場合は近くの病院でも構いませんので、きちんと年に1回は検査を受けることが大切です。
※通院頻度は施設によって異なります。

定期通院

② 生活習慣病に気を付ける
腎提供後の日常生活に特に制限はありませんが、1つになった腎臓に負担をかけないためにも、一般の方と同様に、喫煙や肥満を避け、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病に気を付けます。

生活習慣病を予防するためには、一般的に推奨されている適度な運動や健康的な食事(塩分や動物性脂肪の適度な制限、野菜や果実を多く摂取するなど)を心がけます。
また、定期的に体重や血圧を測定して記録し、変化がわかるように"見える化"すると効果的です。

運動、食事、記録

ドナーになった方は病気ではないので、過度な制限は必要ありません(腎提供後に過度な制限をしなければならない方は、ドナーになることができません)。腎提供後は"ますます健康的な生活を送る"というくらいの意識を持つと良いでしょう。

③ がん検診や各種のワクチン接種を受ける
胃カメラ
腎提供後、ドナーの腎機能は提供前の65~70%程度になりますが(*1,2)、基本的には健康への影響はありません。一方で加齢による影響は、一般の方と同様に誰にでも現れます。
ドナーがいつまでも健康であることは、レシピエントの強い願いでもあります。そのため、ドナーになった方には、年齢相応のがん検診を受けることをお勧めします。

ワクチン接種
また、各種のワクチン接種も大切です。特にレシピエントと同居している場合、レシピエントは感染症にかかりやすいので、うつさないためにもドナー自身の感染予防は重要になります。毎年インフルエンザワクチンの接種を受け、65歳以上になったら5年毎に肺炎球菌ワクチンの接種を忘れずに受けることをお勧めします。

■腎提供後の生活の心がけ
生体腎ドナーの方は病気ではありません。腎機能が軽度に低下していること以外は健康な方です。そのため、腎提供から時間がたつと、通院が途切れたり、健康への意識が薄れたりすることも少なくありません。
生体腎移植の目指すべきゴールは、レシピエントとドナーの両者が長期間に渡って身体的にも精神的にも安定した状態を保つことです。生体腎ドナーになったときは、そのことを忘れずに、レシピエントと一緒に健康的な生活を続けましょう。

一家団欒

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<出典>
*1 Yazawa M, et al. Kidney function, albuminuria and cardiovascular risk factors in post-operative living kidney donors: a single-center, cross-sectional study. Clin Exp Nephrol 2011; 15: 514-521
*2 Kido R, et al. Very low but stable glomerular filtration rate after living kidney donation: is the concept of "chronic kidney disease" applicable to kidney donors? Clin Exp Nephrol 2010; 14: 356-362
*3 Boudville N, et al. Meta-Analysis: Risk for Hypertension in Living Kidney Donors. Ann Intern Med 2006; 145:185-196
*4 Garg AX, et al. Donor Nephrectomy Outcomes Research (DONOR) Network. Proteinuria and reduced kidney function in living kidney donors: a systematic review, meta-analysis, and meta-regression. Kidney Int 2006; 70:1801-1810


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