腎移植の適応と手術までの流れ

腎移植手術を受けるまでの一般的な流れについて説明します。

生体腎移植の条件(移植者・ドナー)

監修:長崎医療センター 泌尿器科 部長 錦戸 雅春 先生
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生体腎移植が受けられる条件

日本移植学会が作成した「生体腎移植ガイドライン」では、腎移植の希望者(レシピエント)の適応基準を以下のように定めています。

レシピエントの条件

1. 末期腎不全患者であること
具体的には、以下のような患者さんが該当します。

透析療法血液透析腹膜透析)を受けている
❷ 透析導入前でCKDステージがG5(eGFR が 15 mL/分/1.73m²未満)

上記❷で示しているとおり、腎移植は透析導入前でも受けることができます。この場合の腎移植を「先行的腎移植(PEKT)」といい、近年では生体腎移植の約40%(*)を占めています。
先行的腎移植を受けるためには、早めの準備が必要になります。先行的腎移植に興味がある場合は、CKDステージ3b(eGFR 30~44 mL/分/1.73m²)くらいの段階で、一度腎移植を行っている病院に相談することが望ましいです。

PEKT

2. 全身感染症がないこと
腎移植を検討している段階で全身感染症があっても、その後に完治すれば腎移植を受けられる可能性が出てきます。全身感染症には、風邪などの軽微な感染症も含まれます。そのため、腎移植を受けることが決定していても、移植手術前に風邪を引いてしまうと、手術が延期されることもあります。
※病原体が特定の部位に限局して病変を起こすのではなく、全身に広がって症状が出る場合を、全身感染という。

3. 活動性肝炎がないこと
肝炎ウイルスに感染していても肝炎を発症していない場合や、肝炎を発症したものの、その後症状がおさまっている場合などは、活動性肝炎にはあたらないため、腎移植を受けられる可能性があります。近年は抗ウィルス薬が進歩し、肝炎が治癒する可能性もありますので、肝炎の状態と移植の時期については肝炎の専門医に相談しましょう。

4. 悪性腫瘍(がん)がないこと
過去にがんがあっても、治療後、2~5年程度経過を観察して再発がなければ(いわゆる根治という状態)、腎移植を受けられる可能性があります(がんの種類や進行度などによって異なります)。

なお、年齢には特に規定がなく、腎臓以外の体の状態が良好であれば、高齢な方でも移植を受けられる可能性があります。実際、2021年に70歳以上で生体腎移植を受けた方は、全国で93名いらっしゃいました (*)
☞ 参考:腎移植の基礎知識「高齢者の腎移植

高齢者の移植

生体腎ドナーになれる条件

生体腎ドナーとなるためには、倫理的な観点から、まず以下の条件が大前提となっています。

❶ 腎臓を自発的に提供する意思があること
❷ 腎移植希望者(レシピエント)の親族(6親等以内の血族と配偶者および3親等以内の姻族)

家系図

❷における配偶者や姻族は、レシピエントと血のつながりがありません。しかし、現在は免疫抑制薬の進歩により、非血縁者間の移植や、ドナーとレシピエントの血液型が異なる場合の移植が可能になっています。そのため、最近はレシピエントの配偶者が生体腎ドナーになることも多く、近年では生体腎移植の約40%が夫婦間の腎移植です(*)
☞ 参考:腎移植の基礎知識「ABO血液型不適合移植」「夫婦間腎移植

夫婦間移植

生体腎ドナーとなるためには、腎提供して腎臓が1つになった状態でも健康の維持が可能と医学的に判断されることが絶対条件です。そのため、日本移植学会が作成した「生体腎移植ガイドライン」では、腎臓提供者(ドナー)の適応基準を以下のように定めています。

生体腎ドナーの条件

レシピエントの場合と同じように、全身性の活動性感染症は完治していれば、悪性腫瘍(がん)は治療後2~5年程度再発がなければ、ドナーになれる可能性があります。

生体腎移植が受けられる条件も、生体腎ドナーになれる条件も、患者さん自身やご家族で判断するのではなく、腎移植を行っている病院(移植施設)で確認してもらうことが大切です。詳しく検査した結果、腎移植が可能と判断される場合もあります。逆に、検査で今まで気付いていなかった病気が見つかることもあります。
可能性の1つとして生体腎移植について知っておきたいという場合でも、主治医に相談して紹介状を書いてもらい、一度ご家族と一緒に移植施設を受診してみましょう。
☞ 参考:日本臓器移植ネットワーク「移植施設一覧

家族で受診

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<出典>
* 日本臨床腎移植学会・日本移植学会. 腎移植臨床登録集計報告(2022)移植 2022;57:199-219


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