2018.11.22 管理栄養士コラム
これまで、CKD患者さんが合併しやすい心血管疾患として虚血性心疾患と大動脈弁狭窄症を紹介しましたが、これらの疾患が進行すると「慢性うっ血性心不全」を引き起こします。そのため、慢性うっ血性心不全もCKD患者さんが合併しやすい心血管疾患の1つです。
■症状
呼吸困難は、慢性うっ血性心不全の代表的な症状の1つです。
通常、肺で酸素を取り込んだ血液は心臓に送られ、心臓のポンプ機能で全身へと送られます。ところが、慢性うっ血性心不全になると、心臓がうまく機能していないため、さかのぼって肺をめぐる血液もうっ血し、肺が正常に機能できなくなって呼吸困難を起こします。また、肺と周囲の壁の間に水分が過剰に溜まり、肺を圧迫することも呼吸困難の原因です。症状が、体を起こしているときに比べて、横になると強くなるようであれば、かなり重症です。
また、全身がうっ血すると、血管(静脈)にかかる血圧が高くなるため、血液中の水分が組織に漏れ出して、脚もしくは全身にむくみ(浮腫)が現れます。
■原因
CKD患者さんにおける慢性うっ血性心不全の原因として、最も多いのは虚血性心疾患です。虚血性心疾患では、心臓の働きに必要な栄養(血液)が不足するため、心臓の機能が低下します(*1)。
次に多いのは、大動脈弁狭窄症などの心臓弁膜症です(*1)。大動脈弁などの心臓の弁が硬くなり、血液が弁を通過しにくくなるため、うっ血が起こって心臓の機能も低下します。
CKDが進行している患者さんでは、食塩の取り過ぎも原因になることがあります。食塩に含まれるナトリウムが血液中に増えすぎると、血管内に水分が引き込まれ、体液(血液)が過剰になってうっ血が起こります。
また、睡眠時無呼吸症候群(SAS)※も、CKD患者さんにおける慢性うっ血性心不全の発症や悪化の原因の1つです。CKD患者さんはSASを合併することが多く、透析導入前のCKD患者さんでは約50%、導入後の患者さんでは50~70%が合併していることが報告されています(*2)。
※睡眠時無呼吸症候群:睡眠中に10秒以上の呼吸停止を繰り返して起こす病気。
睡眠中に繰り返して呼吸が止まると、血液中の酸素が不足するなどして、全身により多くの酸素(血液)を送り出そうとするため、心臓に負担がかかります。また、SASは、高血圧、虚血性心疾患、突然死の原因にもなります。
<出典>
*1 平方秀樹 他 日本透析医学会 血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン 日本透析医学会雑誌44:337-425,2011
*2 Roumelioti ME, et al. The relationship between volume overload in end-stage renal disease and obstructive sleep apnea. Semin Dial 2015;28:508-513