透析療法の種類

透析療法には「血液透析」と「腹膜透析」の2種類があります。また、血液透析にはさまざまな手法があります。

長時間透析、オーバーナイト透析、在宅血液透析

監修:増子記念病院 両角 國男 先生
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血液透析は、一般的には週3回、1回4~5時間行いますが、近年では、24時間働き続けている腎臓の機能により近づけるために、透析時間を長くしたり、透析の回数を増やしたりする透析方法が注目されています。

透析療法の種類

長時間透析とは

長時間透析は、1回6時間以上、週3回を基本とした、週18時間以上の血液透析を行う方法です。
長時間透析では、標準的な血液透析(週3回、1回4~5時間)と比較して、緩やかに、より多くの尿毒素や余分な水分の除去ができるため、合併症の減少や、貧血の改善、栄養状態の改善効果などが期待できます。

長時間透析のメリット

【長時間透析のメリット】
・高血圧や心機能が改善される
緩やかにより多くの尿毒素や余分な水分を除去できるため、ドライウェイトの達成が容易になり、透析中や家庭における血圧のコントロールが良好となるほか、心機能の改善が期待できます。
※ドライウェイト:血液透析後の適正体重(余分な体の中の水分を取り除いたときの体重で、透析後の目標体重となる)

・貧血が改善される
十分な透析によって、造血を阻害する因子などの尿毒症物質が除去されることや、食欲増進に伴う栄養状態の改善などによって、貧血が改善すると考えられています。

・食欲が増進し栄養状態が改善される
食事制限が緩和され、味覚も回復して食欲も増進することから、栄養状態の改善やQOL(生活の質)の向上が期待できます。

・薬剤の投与量が減少する
血圧の正常化による降圧薬の減量・中止、ヘモグロビンの上昇による造血ホルモン剤の減量、血清リン値の低下によるリン吸着薬の減量といった、薬剤投与量の減量が可能であることが報告されています*1,2
※ヘモグロビン:赤血球の大部分を占めている血色素のこと。ヘモグロビンは主に貧血状態を判断する指標となる。

・生命予後が改善される
標準的な透析(週3回、1回4時間程度)と比較して、生命予後が改善されることが報告されています*3

【長時間血液透析のデメリット】
・治療による患者さんの拘束時間が長時間化する
・実施可能な施設が限定される


☞ 参考:透析患者インタビュー 長時間透析患者 長屋善彦さん

オーバーナイト透析とは
 

オーバーナイト透析は、夜間の睡眠時間を利用して血液透析を行う方法です。
日中の活動に支障をきたすことなく透析治療を受けることが可能で、長時間(7~8時間)の透析を行うことができるため、長時間透析のメリットが最も期待できる透析法です。
しかし、現時点ではオーバーナイト透析が実施可能な透析施設は限られています。

オーバーナイト透析


在宅血液透析とは
 

在宅血液透析とは、透析施設と同じ透析機器を自宅に設置し、医師の管理のもと、患者さん自身が自宅で血液透析を行う方法です。
患者さんの生活スケジュールに合わせて好きな時間に自宅で透析を行うことができ、回数も自由に決められるので、頻回透析や隔日透析、長時間透析オーバーナイト透析など、通院透析では実施できる施設が限られる透析方法を行うことが可能です。

在宅血液透析

現在、日本で在宅血液透析を行っている患者さんは、全透析患者さんの0.2%にあたる529人(2014年末調査)ですが、年々増加傾向にあります。

在宅血液透析割合

【在宅血液透析のメリット】
・標準的な血液透析(通院透析:週3回、1回4~5時間)と比較して生命予後がよい
緩徐な条件で十分に透析治療を行っている患者さんが多いため、通院透析患者さんと比較して生命予後が向上することが報告されています*4,5

・通院透析と比較して生活の質(QOL)や社会復帰度が高い
患者さんの都合に合わせて好きな時間に透析を行えるため、通院透析に比べてQOLが高く、社会復帰をする上でも有利な治療法です。

【在宅血液透析のデメリット】
・患者さんや介助者の理解、技術の習得が必要
透析前に行う機器の準備や自己穿刺など、患者さんご自身やご家族などの介助者の、透析の知識や技術の習得が必要になります。

・自宅への透析機器設置に関わる初期費用や水道・光熱費などの維持費用が必要
自宅における治療スペースの確保や、透析機器の設置に関わる準備費用、在宅血液透析開始後の水道代や光熱費は、患者さんの自己負担となります。

・医療スタッフが不在のため、緊急時の対応が遅れる危険性がある
在宅血液透析はきちんと自己管理ができ、介助者(ご家族など)の協力が得られる方に向いています。在宅血液透析の適応に関しては、以下のような基準が定められています。

在宅血液透析適応条件

☞ 参考:透析ライフ「在宅血液透析の生活パターン
ドクターコラム「在宅血液透析のススメ 〜自由と自立、より良い透析と生活を求めて〜

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☞【参考】
腎移植・腹膜透析・血液透析...どうやって治療法を選ぶ?「腎代替療法 私の選び方
動画体験シリーズ「血液透析

<出典>
*1 Charra B, Calemard E, Ruffet M, et al. Kidney Int 1992;41:1286-1291
*2 Ok E et al.Nephrol.Dial.Transprant.2011;26:1287-1296
*3 Mastrangelo F,Alfonso L,Patruno P,et al.Nephrol Dial Transplant 1998;13(Suppl.6):139-147
*4 渡邊有三 在宅透析会誌31:959-965,1998
*5 Kjellstrand CM, Buoncristiani U, Ting G, et al. Nephrol Dial Transplant 2008;23:3283-3289


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