慢性腎臓病の原因疾患

慢性腎臓病の原疾患(原因疾患)にはさまざまなものがあります。

IgA腎症

監修:大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学 教授 猪阪 善隆 先生

慢性糸球体腎炎の中の代表的な病気

慢性腎臓病の原因疾患の1つに慢性糸球体腎炎があり、慢性糸球体腎炎はさらにいくつかの種類に分けられます。IgA腎症(アイ・ジー・エーじんしょう)は、その中の代表的な病気です。腎臓の糸球体にIgAという抗体が特に多く沈着することが特徴です。

原因疾患

異常な抗体が引き起こす

私たちの体には、侵入した異物を排除する「免疫」という防御システムが備わっています。免疫において重要な役割を果たすものに免疫グロブリンがあります。免疫グロブリンは、一般的に「抗体」と呼ばれ、体内に侵入した異物と結合し、排除するようにはたらきます。抗体にはさまざまな種類があり、そのうちの1つが免疫グロブリンA(Immunoglobulin A)、すなわちIgAです。

IgA

IgA腎症の患者さんの体内では、異常なIgAが作られています。この異常なIgAが、他の抗体である免疫グロブリンG(IgG)から異物とみなされて結合されたり、集まってかたまりを作ったりし、それらが糸球体に沈着すると考えられています。

IgAの沈着

異常なIgAが沈着した糸球体の細胞は、炎症を起こす物質を放出するようになります。また、異常なIgAは、補体の活性化などを通じて炎症を起こす物質の放出を促進します。このようにして、糸球体が炎症を起こし(腎炎)、腎臓の機能が障害されていきます。

※補体:抗体同様、免疫の一部を担い、異物を攻撃するタンパク質

機序

異常なIgAは、口の奥にある扁桃(へんとう)が産生場所の1つであるとされていますが、作られる根本的な原因は、まだはっきりわかっていません。発症しやすい人種や家系があり、遺伝子が関係している場合もあることがわかっていますが、それだけが原因ではなく、さまざまな要因が絡んでいると考えられています。

IgA腎症は、国内で10万人あたりに年間3.9~4.5人程度発症すると推定されています(*1)。発症する年齢層は幅広く、10代で診断されることも少なくありません(*2)

自覚症状がほとんどなく、大半は尿検査で見つかる

IgA腎症では、ゆっくりと時間をかけて腎機能が低下していくため、長期間、自覚症状はほとんどありません。しだいに蛋白尿が増えてくるようになりますが、見た目にはわからないため、多くの場合、健診などの尿検査がきっかけで病気が見つかります。風邪をひいたとき、一時的に血尿の症状が強くなってコーラ色の尿が出る場合があり、それがきっかけで見つかることもあります。
診断の確定や治療方針の検討を目的として、腎生検が行われる場合もあります。

尿検査

多くはありませんが、ネフローゼ症候群を伴う場合もあります。
また、診断後20年で、約40%の患者さんが末期腎不全に至るという報告があります(*3)

IgA腎症は、原因や発症メカニズムについて解明されていないことが多く、また、患者数が少ないことなどから、国が定める難病の1つとされています。指定された条件を満たしている場合、医療費の助成を受けることができます。

☞ 参考:慢性腎臓病の基礎知識「慢性腎臓病にかかわる医療費助成制度について

主な治療法

IgA腎症の主な治療法には、飲み薬や点滴による薬物療法の他に、生活習慣の改善や外科的治療があります。

<生活習慣の改善>
腎臓に負担をかけないように、医師や管理栄養士などの指導のもと、生活習慣の改善を行います。
食事療法では、塩分の摂取を制限します。腎機能が悪くなると、タンパク質の摂取を制限することもあります。
禁煙を行い、肥満にも気を付けます。

生活習慣の改善

<外科的治療>
異常なIgAを作り出す扁桃を、手術で摘出する治療法もあります(扁桃摘出術)。ステロイドパルス療法を組み合わせる場合もあります。

手術

IgA腎症が早期に発見されれば、これらの治療によって寛解する(蛋白尿や血尿がなくなる)場合もあります。寛解しない場合は、基本的に薬物療法や生活習慣の改善を継続する必要があります。


IgA腎症の治療法は、今日においても十分に確立しているわけではありません。しかし、前述のように病気を発症するメカニズムが少しずつ分かってきており、より適切な新しい治療法の開発が期待されています。

※ 治療は必ず主治医の指示のもとに行い、必要に応じて主治医に相談しましょう。

<出典>
*1 渡辺 毅,他.厚生労働省科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)分担研究報告書 疫学・疾患登録分科会「全国疫学アンケート調査とDPC データベースの対象疾患患者数調査への応用」
*2 遠藤正之. IgA 腎症の疫学・症候・予後 日腎会誌2008;50:442-447
*3 Koyama A, et al. Natural history and risk factors for immunoglobulin A nephropathy in Japan. Research Group on Progressive Renal Diseases Am J Kidney Dis 1997;29:526-532


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