ドクターインタビュー

進歩し続ける慢性腎臓病治療

神戸大学大学院 腎臓内科 名誉教授
医療法人社団 一陽会 服部病院 腎臓内科部長 兼 透析センター長

西 愼一 先生

進歩し続ける慢性腎臓病治療

神戸大学大学院 腎臓内科 名誉教授
医療法人社団 一陽会 服部病院 腎臓内科部長 兼 透析センター長
西 愼一 先生

西先生

目次

Chapter 2:近年の慢性腎臓病治療の進歩と今後の展望②

末期腎不全患者さんが、自分に合った治療法を選ぶために

----- 腎代替療法については、近年どのような変化がありましたか。

「腎代替療法専門指導士」や「腎臓病療養指導士」といった資格ができたことは、1つの進歩です。患者さんが腎代替療法を選ぶ際、それぞれの治療法についての説明を、これらの資格を持つ医療スタッフが行う病院が多くなりました。日本では、腎移植血液透析(および血液濾過透析)腹膜透析の3つの腎代替療法のうち、血液透析を選ぶ患者さんが圧倒的に多いのですが、説明不足のため、安易に血液透析が選ばれることも多くありました。そのため、これらの資格を作り、3つの治療法について詳しく説明ができるスタッフを育成するようになりました。
神戸大学病院でも、資格を持った看護師が詳しく説明するようになって、腹膜透析や腎移植を選ぶ患者さんが明らかに増えました。これからは、本当に自分に合った治療法を選べる患者さんがもっと増えていくと思います。

----- 腎移植については、近年どのような傾向がありますか。

西先生

高齢夫婦間の生体腎移植が増えています。かつては高齢者同士の移植はリスクが懸念されていましたが、今では70代のご夫婦で行われることも珍しくありません。もちろん、腎移植を受ける患者さんも、ドナーになる方も、体の状態が良いことが条件です。ただ、腎移植は、透析療法よりも患者さんのQOL(Quality of Life:生活の質)が明らかに良いですし、患者さんが希望すれば、医師も最大限検討してくれると思います。自分には無理だと思っていても、関心があるなら、一度医師に相談してみるといいと思います。

☞ 参考:腎移植の基礎知識「夫婦間腎移植」「高齢者の腎移植

----- 透析療法については、近年どのような傾向がありますか。

血液濾過透析(HDF:Hemodiafiltration)を受ける患者さんが、この10年ほどで飛躍的に増え、今では透析患者さんの約半分を占めるまでになりました(*1)。血液濾過透析は、血液透析よりも尿毒素を効率よく取り除くことができ、生命予後も良く、透析合併症も起こりにくいなどのメリットがあります。 また、ダイアライザーの透析膜の改良なども継続的に行われています。これらの技術的な進歩のおかげで、透析患者さんの状態は昔から比べてずいぶん改善されました。

----- 腎移植も透析療法も進歩しているのですね。

一方で、患者層の高齢化に伴い、「透析も腎移植も受けない」という選択肢(保存的腎臓療法)を希望する患者さんも増えています。それも1つの医療のあり方ではありますが、医療者としてどのように対応するべきか検討が必要な課題となっています。

----- 今後、新しい腎代替療法が生まれる可能性はあるのでしょうか。

最も期待したいのは、やはり腎臓の再生です。iPS細胞を使う方法など、数多くの研究が行われているので、いつか腎臓が再生できる時代が来ることを願っています。

☞ 参考:コラム「iPS細胞を用いた腎臓の再生研究の現在(総論)」「試験管の中で腎臓をつくる

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<出典>
*1 花房規男, 他. わが国の慢性透析療法の現況(2021年12月31日現在) 透析会誌 2022;55:665-723


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