ドクターインタビュー

日本赤十字社愛知医療センター 名古屋第二病院
腎臓病総合医療センター 移植外科 部長

渡井 至彦 先生
日本赤十字社愛知医療センター 名古屋第二病院
腎臓病総合医療センター 移植外科 部長

渡井 至彦 先生
渡井 至彦 <font size="4">先生</font>

目次

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Chapter 2: 日本の献腎移植、生体腎移植の現状について

-----まず献腎移植についてですが、日本では1年間にどのくらいの献腎移植が行われているのでしょうか。

現在日本では、年間約1600例の腎移植が行われていますが、献腎移植(脳死下、心停止下)は、その内の1割以下となっており、2014年は127例でした(*1)。献腎移植の待機者は12,000人以上(*2)ですので、移植を待っている人の約1%にしか、献腎移植が行われていないという状況です。現在、移植希望の登録から移植日までの平均待機期間は、成人で16~17年、16歳以下のお子さんで約4年となっています(*3)
※ 2021年では、年間移植件数が1,773件で、その内、献腎移植は125件(*4)でした。献腎移植の待機者数は2023年10月末時点で約14,000人(*2)、平均待期期間は2021年末時点で約14年8カ月(小児含む)(*5)です。

-----献腎移植を希望する場合はどのような手続きが必要でしょうか。

まず、慢性腎臓病治療を受けている施設や透析施設の先生に、献腎移植を受けたいという希望を伝えていただき、献腎移植施設を紹介してもらってください。移植施設を受診し、献腎移植についての説明や、医学的適応判断の後、組織適合性検査を受け、臓器移植ネットワークに登録される流れとなります。

-----生体腎移植を希望する場合はどうしたらいいですか。

生体腎移植を行っている施設はたくさんありますので、まずは主治医の先生にどの施設で移植を受けたらいいのかを相談し、紹介していただくのが一番いいと思います。

-----多くの慢性腎不全患者さんは腎移植の適応になるというお話でしたが、具体的にはどのような適応基準がありますか。

生体腎移植に関して言うと、先ほどもお話ししたように、ドナーになれる人は、親族(6親等以内の血族と配偶者および3親等以内の姻族)に原則限定されており、腎提供は、ドナーの方の自己意思によるものでなければなりません。例えば腎提供による金銭の授受があるとか、精神的な強要があるということは絶対あってはいけないので、まずはドナーの方の意思、そして移植を行う上での倫理的な問題がないことを確認する必要があります。
その上で、ドナーの方が片方の腎臓を提供することによって、健康が害されるようなことがないことを確認し、次に腎臓を提供してもらうレシピエントの状態、先ほどお話ししたような、がんや感染症にかかっていないか、ということを評価する必要があります。
最近、移植を希望される人の中には肥満の人も多くなっています。外科手術を行う際、肥満の人は感染症や血栓症などの合併症が多いといわれていますので(*6)、病的な肥満、特にBMIが35以上の人は減量してから腎移植手術を行うことが原則になると思います。

-----年齢制限などはありますか。

ドナーの年齢に関しては、日本移植学会の生体腎移植のドナーガイドラインでは70歳以下、もしくは身体年齢を考慮して80才以下となっています。レシピエントの年齢に関しては検査の結果、手術を受けられる状態であると判断されれば移植は可能です。

-----生体腎移植においてドナーとなられる方はレシピエントからみてどのような関係の人が多いのでしょうか。


       最近の腎移植②(1:29)

以前は親から子への腎移植が多かったのですが、最近は慢性腎不全患者さんの高齢化もあり、末期腎不全になったときにはご両親がすでに他界されているというケースや、かなり高齢で腎臓を提供するような手術を受けられないというケースが多くなっていますので、10年ほど前からは、配偶者から腎提供を受ける夫婦間腎移植が増えています(*4)

-----生体腎移植を希望してから、実際の移植手術まではどのくらいの期間が必要でしょうか。

施設によって異なりますが、当院では外来での検査と入院での検査を組み合わせて行うため、約3カ月が必要です。急いで準備をしても1カ月半~2カ月は必要です。

-----移植前の3カ月間にはどのような検査を行うのですか。

移植前にはさまざまな検査が行われますが、ドナーとレシピエントの適合性を調べるために、血液型、組織適合性検査を行い、その後ドナーとレシピエントの健康状態に関する精密検査を行って、移植が可能かを判断します。
感染症のチェックでは、レシピエントとドナーにB型肝炎、C型肝炎などの感染症がないかの検査と共に、レシピエントが麻しん(はしか)や流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、水疱瘡など、種々のウイルス感染症に対する抗体を持っているかどうかを検査します。持っていなければ手術の前にワクチンを打つ必要があります。C型肝炎の感染がある人は、腎移植前に治療をした方がいいといわれています。その他、全身の血管の状態や心臓の状態も評価します。

-----術前の検査により腎移植ができないと判断されることもあるのでしょうか。

腎移植の実施基準は施設によって大きく異なります。腎移植を希望される人の半数以上が適応でないと判断される施設もあるようです。当院では、腎移植の適応でないと判断されている人は希望された人の10%弱です。

-----ドナーの方の希望で、予定していた移植手術を中止することもできるのでしょうか。

もちろんできます。先ほどお話ししたように、ドナーの方の自発的な臓器提供の意思が一番大事ですので、移植手術の準備の段階で、臓器提供したいという気持ちが揺らいできたような場合には、手術を中止するのが原則です。

-----手術の所要時間はどのくらいですか。

麻酔がかかっている時間を除くと、ドナーの手術時間は3時間程度です。レシピエントの手術時間は3~4時間くらいです。

-----手術後の入院期間はどのくらいですか。

当院では3週間ですが、全国的には10日~2週間という施設もあります。当院が入院期間を3週間にしているのは、術後1週間程度で手術の傷の状態は落ち着くのですが、移植直後は拒絶反応を起こさないためにも特に免疫抑制薬の血中濃度の管理が重要ですので、その管理のためと、患者さんに退院後の生活の注意点や、薬の飲み方に関してなどの指導・教育を行うためです。

-----退院後、どのくらいで社会復帰できるのでしょうか。

移植後の患者さんには3週間の入院の後、約1カ月間は自宅で療養していただき、その後、仕事への復帰をお勧めしています。

-----移植後はどのくらいの頻度で通院するのですか。

当院では移植後3カ月は1週間に1回、半年までは2週間に1回、その後は、1年後までは3週間に1回通院していただき、移植後1年以降は1カ月に1回の通院になります。

-----退院後の生活の注意点を教えていただけますか。

渡井先生

まず、決められた薬をしっかりと飲むことが何よりも大切です。免疫抑制薬の飲み忘れは、そのときには大きな問題にはならなくても、数週間、数カ月後に拒絶反応の引き金になります。
また、移植後の患者さんが心配されるものに感染症がありますが、感染予防に関してはスタンダードプレコーション(標準予防策)という考え方があります。その中でも手指衛生は予防策の基本となるものです。腎移植の感染予防においても、特別なことをする必要はありませんが、せっけんを使った手洗いが基本になります。また、免疫抑制薬の服用量が多い移植後約3カ月間は、不要不急の人ごみへの外出は避けていただくことをお勧めしています。
感染予防のワクチンに関しては、インフルエンザワクチンは、移植直後でなければ接種した方がいいといわれています。移植者は健常者と比べて抗体が付きにくいので、当院では2回の接種をお勧めしています。肺炎球菌ワクチンに関しても、自費にはなりますが、5年に1回、接種していただくことをお勧めしています。

-----その他、生活上の注意点はありますか。

移植後の生活における制限というのはそれほど多くなく、食事に関しても、免疫抑制薬の血中濃度に影響があるグレープフルーツや、ある種の柑橘系の果物、セント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)の含有食品などは避けていただいていますが、その他は衛生面に気を付けていただければ問題ありません。お刺身などの生ものも、新鮮なものであれば食べて大丈夫です。
逆に移植後、元気になって食べ過ぎてしまうことによる体重増加には注意が必要です。移植後は何種類かの免疫抑制薬を服用することになりますが、その中の1つである副腎皮質ホルモンは多少、食欲を増進させる作用を持っています。移植後の患者さんの中にはそれが体重増加の原因だと思っている人もいらっしゃいますが、実際には食欲が増すほどの量を服用しているわけではありません。体重増加・肥満は高血圧や脂質異常症の原因になりますので、体重の管理はとても大切です。

-----薬をしっかりと飲むことと、感染症予防、食べてはいけないものを食べない、生活習慣病予防をすることが大切だということですね。

そうですね。また、発熱や体の不調を感じた場合には、早めに主治医に連絡して診断を仰ぐということが大事です。

-----これまで行われた移植手術の中で特に印象に残っているものはありますか。

どの移植手術も印象深いものですが、小児の移植に関しては特に印象深いものがあります。小児の場合、身長が75cm、体重が最低9kgになれば、大人の腎臓を移植することができるようになるので、ご両親や、祖父母の方がドナーとなって腎移植を行うケースが多いです。腎移植前は食欲もなく、鼻から管を入れて、強制的に栄養を取らせていた子が、移植後は自分で口から食べられるようになり、体重が増えて筋肉も付き、走ったり遊んだりすることができるようになります。そのような姿を見ると、本当に移植手術を行ってよかったと思いますね。普通の子どもと同じように教育を受けて成長できるということはとても重要なことです。

-----移植した腎臓はどのくらいもつのでしょうか。

日本における腎移植の成績でいうと、生体腎移植後1年で、移植腎が機能している確率(生着率)は98%くらい、移植後10年で80%くらいとなっています(*1)。腎移植の成績は非常によくなっています。
※2021年時点では1年生着率:98.7%、10年生着率:81.1%(*4)

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<出典>
*1 日本移植学会・日本臨床腎移植学会 腎移植臨床登録集計報告(2015) 移植 2015;50:138-155
*2 日本臓器移植ネットワーク 移植に関するデータ
*3 日本臓器移植ネットワーク NEWS LETTER 19,2015
*4 日本臨床腎移植学会・日本移植学会 腎移植臨床登録集計報告(2022) 移植 2022;57:199-219
*5 日本臓器移植ネットワーク NEWS LETTER 26,2022:7
*6 Doyle SL1, Lysaght J, Reynolds JV. Obesity and post-operative complications in patients undergoing non-bariatric surgery. Obes Rev 2010;11:875-886


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