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2.入院生活について
① 術後の経過について
手術が終わると目が覚めた状態で病室に帰ります。硬膜外麻酔や点滴などの麻酔によって痛みをできるだけ減らす努力がなされるので、許される範囲で出来る限り早くから体を動かし、ベッドから下りる努力をすることが、肺炎などの合併症予防につながります。
手術当日は腎機能としての尿量と全身状態を1時間ごとに測定します。また、血液・尿検査を頻回に測定し、その頻度は徐々に減っていきます。施設によっては、腎移植後は集中治療室に入る施設もあります。手術後5日目頃に尿道カテーテルを抜いて、自分で排尿をするようになります。免疫抑制剤を調節し、全身状態と腎機能が安定して、自己管理ができるようになれば、退院が見えてきます。入院期間は施設によって2~6週間と差があるようです。
② スタッフ、患者さんが一緒になって気をつけていくことは
第一に、尿量に応じて適切な排泄、水分補給を行うことが大切です。尿が腎臓に逆流しないためと、手術でつないだ尿管がしっかりつくまで、膀胱が膨らみすぎないようにする必要があるからです。そのため、膀胱容量を設定し、一回の排尿量がそれ以下になるように間隔を設定していきます。特に長い間透析を行われていた方は、膀胱がとても小さくなっているため、頻回の排尿が必要になります。また、尿量に応じた飲水が必要で、十分に飲水ができない間は点滴を行います。
第二に、拒絶反応や薬の副作用などの早期発見、早期治療が重要です。このため、頻回に血液・尿検査をします。自覚症状より、これらの検査や血圧・体重測定結果の異常が先に現れてくることがあるからです。
急性拒絶反応の起きる可能性は、現在行っている免疫抑制療法ではABO血液型が適合した腎移植でも約10数%と考えられ(*1)、ほとんどの場合、治療可能です。急性拒絶反応の中でも、抗体が原因となる抗体関連型超急性拒絶反応があり、多くは48時間以内に発現すると考えられていますが、術前のクロスマッチ検査陰性※1の方では可能性は高くありません。抗体関連型超急性拒絶反応が起こった場合、血漿交換※2を含めた強力な免疫抑制治療を行う必要があります。こうした治療を行っても拒絶反応が抑えられない場合、ごくまれですが腎臓が機能しなくなる可能性があり(*)、移植腎を摘出しなければならない場合もあります。
第三に、日常生活に向けて、徐々に自己管理を行っていくことが大切です。内服の内容と時間を把握して間違えないようにすること、血圧や体重などの測定を退院後も継続していくことが、移植腎臓維持のために重要です。また感染症にも注意しましょう。
☞ 腎移植ライフ:腎移植後の服薬
☞ 参考:腎移植の基礎知識「腎移植手術について」
※1 クロスマッチ検査:
ドナーのHLA(ヒト白血球抗原)に対する抗体(特定の異物にある抗原(目印)に特異的に結合して、その異物を生体内から除去する分子)がレシピエントの血液中にないかどうかを調べる検査。この検査が陽性の場合は、超急性拒絶反応が起こる可能性が高いため、手術前に抗体を除去し、抗体産生を抑制する免疫抑制療法を行う必要がある。
※2 血漿交換:
体外に取り出した血液を血漿分離器で血球成分と血漿成分に分離した後、分離した血漿を廃棄し、その分を健常な方の血漿(新鮮凍結血漿)もしくはアルブミン溶液で置き換える治療。腎移植の場合、レシピエントの血液中にある、ドナーの血液型に対する抗体が含まれる血漿を入れ替えて、抗体を体内から取り除くことが目的で行われる。

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<出典>
* Handbook of Kidney Transplantation fifth edition