移植手術にかかる費用

生体腎移植、献腎移植を受ける際の費用について説明します。

腎移植手術の費用

監修:山口大学医学部医学科 泌尿器科学 講師 藤川 公樹 先生

腎移植手術
腎移植手術を受ける際の医療費は、手術、検査、入院、薬剤などの費用を合わせて、移植した月で400~500万円程度かかるとされています。
ただし、健康保険が適用されるので、患者さんの自己負担は1~3割となります。その上で、各種の医療費助成制度を利用することによってさらに負担を軽減することができます。そのため、移植した月の実際の自己負担額は、多くの場合、0~数万円程度です。
※生体腎移植の場合、腎提供者(生体腎ドナー)の医療費は、腎移植者の健康保険でまかなわれます。ただし、何かしらの理由で移植が行われなかった場合は、それまでの検査や入院などの費用に自己負担が発生することがあります。

腎移植の際に利用できる医療費助成制度

18歳以上の患者さんが腎移植を受ける場合に利用できる医療費助成制度には、自立支援医療(更生医療)と重度心身障害者医療費助成制度があります。2つの制度を組み合わせて利用することもできますし、いずれか一方のみを利用することも可能です。

医療費助成制度

1)自立支援医療(更生医療)
身体障害者の治療後の自立と更生のために、医療費の助成を行う制度です。

・制度実施主体は市区町村
・申請時に身体障害者手帳が必要(障害の等級による制限はありません)
・1か月あたりの自己負担額※の上限を0~2万円に抑えられる(金額は所得に応じて変わります)
※腎移植手術およびそれに伴う医療の自己負担費用のみが対象です。

2)重度心身障害者医療費助成制度
心身に重度の障害がある方を対象に、医療費の自己負担を軽減する制度です。

・制度実施主体は都道府県または市区町村
・申請時に身体障害者手帳が必要(自治体によって対象となる障害の等級が異なります)
・助成内容は自治体によって異なる

<身体障害者手帳の取得>
身体障害者手帳
上記いずれの制度を利用する場合も、身体障害者手帳が必要です。透析を受けている方であれば身体障害者手帳1級をお持ちの場合が多いですが、透析導入がすぐに必要ではない腎不全患者さんでも、日常生活の活動度や腎不全の症状、腎機能の検査値に応じて、身体障害者手帳3級または4級を取得することができます。特に透析を経ることなく腎移植を受ける場合(先行的腎移植)、移植前に身体障害者手帳を取得しておくことが大切です。
※ただし、重度心身障害者医療費助成制度については、自治体によって1級・2級のみを対象としている場合があります。

身体障害認定基準

なお、移植日からは身体障害者手帳1級の取得が可能になります。移植前から1級をお持ちの場合は、移植後もそのまま継続されます。

<助成対象外の費用>
腎移植にかかわる費用のうち、以下のものは助成の対象外となります。

・入院中の差額ベッド代や個室料
献腎移植の場合の、日本臓器移植ネットワークに支払うコーディネート経費(10万円)
など

☞参考:アニメで知る!シリーズ「献腎移植を受けるには

腎移植を受けた後の医療費について

腎移植後は、毎日の免疫抑制薬の服用と、月1回程度の通院・検査が必要になりますが、上記の医療費助成制度は、腎移植後も同様に利用することができます(☞参考:腎移植ライフ「腎移植後の医療費と自己負担」)。健康保険適用後に助成制度を利用することで、月々の医療費の自己負担額は0~2万円程度に収めることができます。
※腎移植後の免疫抑制療法に関わらない医療費(例:歯科治療)は、自立支援医療の助成対象外です。

費用についての相談先

<市役所・区役所などの担当部署>
医療費の自己負担額は、自治体や個人の状況(所得など)によって変わってきます。詳しい自己負担額や利用可能な制度などについては、お住まいの市区町村の役所担当部署(障害福祉課など)で確認することができます。

<腎移植について相談できる病院>
腎移植を行っている病院や、腎移植について相談できる病院では、治療内容についてだけでなく、治療を受けるにあたっての費用についても相談することができます。特に大きな病院には、「医療ソーシャルワーカー」という経済的な問題の相談にも乗ってくれる専門スタッフがいる場合もあります。

家族で医師に相談

腎移植医療はさまざまな制度が整っており、手術や術後の免疫抑制療法に対する医療費の自己負担が大幅に軽減される優遇措置を受けられます。腎移植について興味をもたれたら、上記のような病院で、具体的な費用も含めて一度詳しく話を聞いてみましょう。

※金額や制度の内容は2017年12月時点のものです。

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