ドクターインタビュー

増子記念病院 理事長

両角 國男 先生
増子記念病院 理事長

両角 國男 先生
両角 國男 <font size="4">先生</font>先生

目次

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Chapter 2: 末期腎不全における腎代替療法(血液透析・腹膜透析・腎移植)について

-----腎臓病の進行を抑制するためには、まずは病院選びや先生選びが、とても大切だということですね。
ただ、そのような努力をしても、残念ながら一部の方は末期腎不全へと進行してしまいます。その場合には、血液透析、腹膜透析、もしくは腎移植を行うことになりますが、まずは透析医療について、わが国の現況を教えていただけますでしょうか。

現在、末期腎不全の患者さんの95%以上が、血液透析を選択しています。一般的には週3回、各4〜5時間、多くは昼間に行います。透析療法が長年に及ぶと治療困難な合併症が現れますが、ある程度の年数であれば、まず問題はありません。
一方、腹膜透析は、患者数が増加していないのが現状です。長期の治療効果への保証がない点が問題で、10年続けるのは難しいというのが一般的な考え方です。
また、最近は、血液透析と腹膜透析を併用した「ハイブリッド型」と呼ばれる治療方法もありますが、患者数はなかなか増えていません。

-----腎移植はどのような状況でしょうか。

腎移植は、年間実施件数が約1,600件と少ないのですが、移植後に腎臓が機能している確率(生着率)は、2006~2012年に行われた生体および献腎移植でみると、生体腎移植では1年生着率が97.8 %、5年生着率が92.8 %、献腎移植では1年生着率が93.9 %、5年生着率が83.9 %と高くなっており(*1)、とても優れた治療法といえます
※ 2021年末時点における、2010年~2020年に行われた腎移植の成績:<生体腎移植>1年生着率=98.7 %、5年生着率=93.1 % <献腎移植>1年生着率=95.9 %、5年生着率=87.8 %(*2)

ただ、亡くなられた方からの腎臓の提供は腎移植実施件数全体の1割程度で(*1)、多くは生体腎移植、すなわち、ご家族や親族の健康な身体にメスを入れる(手術的な侵襲を行う)ことで成立している、という状況です。その問題は大きいですね。

-----両角先生は、腎代替療法を検討する段階の末期腎不全の患者さんやご家族に対して、どのような説明をされるのでしょうか。

両角先生正面

血液透析、腹膜透析、腎移植の3つの治療法については、必ず全て説明します。いずれかの治療法が医学的に難しい患者さんに対しても、3つあることをまずお話しします。その上で、各治療法に対して「この治療法は可能です」「この治療法は無理だと思います」といったことをお伝えします。
実際のところ、腎不全患者さんの多くは、全ての治療法に対応できます。ただ、血液透析を開始する患者さんの最多の年齢層は75〜80歳です(*3)(2021年末では70~74歳(*4))。そうした高齢の方が腎移植を選ぶというのは、提供者のことも考えると現実的には難しいことが多いです。

-----逆に、例えば60歳未満の方に対して、医学的な問題がなければ、腎移植をおすすめすることはあるのでしょうか。

腎移植のみを積極的にお勧めすることはありません。すべての治療法について平等にお話をさせていただきます。
例えば、ドナーになる可能性がある方が同席する場で、我々が患者さんに腎移植を強く勧めると、ドナー候補者への心理的な圧迫につながる恐れがあります。これは私の個人的な考えですが、生体腎移植は、提供者の自発的な意思により行われるものですので、それを医療者側が勧めるべきではないと思います。

-----3つの治療法について説明を受けた後、患者さんはどのように腎代替療法を選べばいいのでしょうか。

まず考えていただきたいのは、どのような生活をしたいのかということ、そして、腎代替療法を選択した後の日々の生活がどのように変わるかということですね。例えば血液透析を始めると、週3回、通院の往復時間を含めて6〜7時間が透析のために取られます。それが果たしてご自身にとって、社会生活や家族を維持するために許容されることなのか、ということです。一番大事なのは、患者さんご自身の生きがい、生き方だと思います。

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<出典>
*1 日本移植学会・日本臨床腎移植学会. 腎移植臨床登録集計報告(2015) 移植 2015;50:138-155
*2 日本臨床腎移植学会・日本移植学会. 腎移植臨床登録集計報告(2022) 移植 2022;57:199-219
*3 日本透析医学会 統計調査委員会. 図説 わが国の慢性透析療法の現況(2016年12月31日現在)
*4 花房規男 他. わが国の慢性透析療法の現況(2021年12月31日現在) 透析会誌 2022;55:665-723


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