ドクターコラム

慢性腎臓病と心血管疾患(1)虚血性心疾患

東邦大学医学部 腎臓学講座 教授 長谷 弘記 先生

慢性腎臓病と心血管疾患(1)虚血性心疾患

掲載日:2017/04/13

心血管疾患とは、心筋梗塞や脳卒中など、心臓や血管に関わる病気のことです。慢性腎臓病(CKD)は、心血管疾患を高い割合で合併することが知られています。心血管疾患を起こすことや、心血管疾患によって死亡することなどを「心血管イベント」と言いますが、腎機能が低下するにしたがって心血管イベントの発症率は増加します(*1)

心血管イベント発症率

虚血性心疾患

心血管イベントとして最も多いのが虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞、虚血性心不全)です。虚血性心疾患とは、心臓の筋肉(心筋)に必要な酸素や栄養を運ぶ血液量が不足した状態、または心筋が過大な血液量を要求するのに対して血液供給が不十分な状態で起きる心臓の障害のことです。

心筋梗塞、心不全

■原因
<冠動脈疾患と虚血性心疾患>
虚血性心疾患における心筋の血液不足には、供給される血液量自体の不足と、心筋の血液需要量が増え、それに見合った血液を補えないことによる不足があり、それぞれ原因が異なります。

心筋の血液不足の原因

これらのうち、最も重要な原因が「冠動脈疾患」です。冠動脈は心臓の筋肉に酸素や栄養を含んだ血液を送る血管で、冠動脈が狭くなったり詰まったりすることによって起きる心臓の障害を冠動脈疾患と言います。

冠動脈疾患

一般的には、虚血性心疾患の原因はほとんどが冠動脈疾患のため、虚血性心疾患と冠動脈疾患は同じような意味で扱われますが、CKD患者さんでは少し事情が異なります。

私たちは、冠動脈疾患の既往のないCKD患者さん529名を対象に、心筋の血流状態を検査して虚血性心疾患の合併率を調査しました。その結果、冠動脈疾患の既往がないにも関わらず、腎機能の程度とは関係なく15~23%の割合で虚血性心疾患を合併していることが分かりました(*2)
つまり、CKD患者さんにおいては、冠動脈疾患がなくても虚血性心疾患を合併している可能性があり、冠動脈疾患だけが虚血性心疾患の原因ではないことを示しています。

IHDの合併率

<CKD患者さんにおける虚血性心疾患の原因>
腎臓病のない患者さんの虚血性心疾患は、ほとんどの場合、冠動脈疾患が原因です。しかし、CKD患者さんでは、左室肥大や大動脈の硬化などのさまざまな要因が虚血性心疾患の発症に関与することが分かっています。

CKD患者のIHDの原因

1)左室肥大
心筋
左室肥大とは、心臓の左室の筋肉量が増加した状態です。左室の筋肉量が増えると、1分間に心臓全体が必要とする酸素量(心筋酸素需要量)も増加しますので、冠動脈からの酸素供給量(血液供給量)を増やす必要が生じます。そのため、通常は治療の必要がない程度の冠動脈の狭窄があっても、増大した心筋酸素需要量を補うことができなくなって虚血性心疾患が発症します。
左室肥大の原因には、以下のようなものがあります。

左室肥大の原因

これらはいずれも腎機能の低下に伴って発症するため、CKD患者さんは左室肥大になりやすく、虚血性心疾患を起こす原因の1つになる場合があります。

2)大動脈の硬化
心臓から送り出される血液は、大動脈が拡張することによって一部が貯留されます。心臓が拡張した時点で大動脈が収縮して、貯留されていた血液が冠動脈を経て心臓の筋肉に供給されます。

冠動脈の血流

ところが、大動脈が硬くなると、うまく拡張できなくなり、大動脈における血液の貯留量が減少するため、冠動脈の血流量が低下することになります。
大動脈が硬くなる原因には、以下のようなものがあります。

大動脈硬化の原因

これらも腎機能の低下に伴って発症するため、CKD患者さんでは大動脈の硬化が起こりやすく、虚血性心疾患につながる場合があります。


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