ドクターコラム

慢性腎臓病と心血管疾患(1)虚血性心疾患

慢性腎臓病と心血管疾患(1)虚血性心疾患

東邦大学医学部 腎臓学講座 教授 長谷 弘記 先生

東邦大学医学部 腎臓学講座 教授 長谷 弘記 先生

慢性腎臓病と心血管疾患(1)虚血性心疾患

掲載日:2017/04/13

■予防
冠動脈疾患の最も初期の段階では、冠動脈の内側の細胞(内皮細胞)が傷害され、その修復が間に合わないことによって病気が進行します。冠動脈の内皮細胞の障害を防ぐためには、禁煙や早い段階からの高血圧治療、リウマチなどの慢性炎症の早期治療、抗炎症作用を有する強力なHMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が有効です。
CKD患者さんの場合は、前述のような心室肥大や大動脈の硬化が虚血性心疾患の要因になるので、腎性貧血や高リン血症などの予防や治療も必要です。

■治療
<薬物治療>
通常、全心筋に対して、血液が不足している心筋(虚血心筋)の範囲が10%未満の場合には薬物治療の適応となります(*)。薬物治療に用いられる薬剤は、以下の3種類が主流です。

IHDの治療薬

<冠動脈血行再建治療>
虚血心筋量が10%以上の場合や、薬物治療が効かない場合、あるいは急性冠症候群(心筋梗塞や不安定狭心症)を発症した場合には、冠動脈の血流を改善するために「冠動脈血行再建術」が行われます(*)
主な方法としては、バルーンを用いて冠動脈の狭窄部位を押し広げ、ステントと呼ばれる金属を留置するステント治療があります。

ステント留置

ステント治療後には、ステント内に血栓ができやすくなるため、抗血小板薬の長期服用が必要となります。
CABG

冠動脈病変が重症な場合には、外科的冠動脈バイパス術の適応となります。冠動脈の狭窄した部位を迂回するように別の血管をつなげることにより、つなげた先の冠動脈(および心筋)に再び十分な血液が送られるようになります。外科的冠動脈バイパス術が優れている点は、治療後に冠動脈の再狭窄が起こりにくいことです。

☞【参考】
ドクターコラム:慢性腎臓病と心血管疾患「大動脈弁狭窄症」「慢性うっ血性心不全

バナー

<出典>
* Hachamovitch R, Hayes SW, Friedman JD, et al.: Comparison of the Short-Term Survival Benefit Associated With Revascularization Compared With Medical Therapy in Patients With No Prior Coronary Artery Disease Undergoing Stress Myocardial Perfusion Single Photon Emission Computed Tomography. Circulation 2003;107:2900-2907


この記事を見た人が読んでいるのは

専門家に聞こう!


関連記事


病院検索 閉じる
トップへ