ドクターコラム

慢性腎臓病と心血管疾患(2)大動脈弁狭窄症

慢性腎臓病と心血管疾患(2)大動脈弁狭窄症

東邦大学医学部 腎臓学講座 教授 長谷 弘記 先生

東邦大学医学部 腎臓学講座 教授 長谷 弘記 先生

慢性腎臓病と心血管疾患(2)大動脈弁狭窄症

掲載日:2017/06/08

■診断
大動脈弁狭窄症になると、心臓の音に雑音が現れるので、聴診に慣れた医師であれば比較的早期に診断することができます。診断の確定および重症度の判定は心臓超音波検査(心エコー検査)によって行われます。
※胸に超音波をあて、心臓の形や働きを診る検査。

聴診&心エコー


大動脈弁狭窄症は、初期段階ではほとんど自覚症状がないので、早期発見のためには、健診などで定期的に診察・検査を受けることが重要です。

■予防
大動脈弁狭窄症は、弁の内皮細胞が傷つくことが発端となっているので、予防するためには、傷の原因なっているさまざまなストレスを取り除く必要があります。具体的には、禁煙や早い段階からの高血圧の治療などがあります。

大動脈弁狭窄症は、弁の石灰化によって重症化するので、石灰化の進行を抑えることも重要です。特にCKD患者さんでは石灰化が起こりやすいので、食事療法やリン吸着薬の服用によって、石灰化の原因となるリンやカルシウムが血液中に増えすぎないように気を付けます。

予防法

■治療
胸痛や心不全の症状がある場合や、無症状でも、弁口面積が0.6 ㎠以下、または左心室と大動脈の血圧の差が60 mmHg以上の場合、重度の不整脈が現れる場合には手術が必要となります(*)。手術法としては、大動脈弁を人工弁に交換する「弁置換術」が一般的です。

弁置換術

胸を開く外科的手術にリスクを伴うような患者さんでは、「経カテーテル的弁置換術」が勧められます。経カテーテル的弁置換術では、主に脚の付け根からカテーテルという管を入れ、動脈を伝って心臓まで通し、大動脈弁のある場所に人工弁を留置します。
※2017年4月時点では、透析患者さんの保険適応はありません。

経カテーテル的弁置換術

また、近年では、心臓の組織の一部から弁を作成して交換する「弁形成術」も広く行われるようになりました。

☞【参考】
ドクターコラム:慢性腎臓病と心血管疾患「虚血性心疾患」「慢性うっ血性心不全

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<出典>
* 平方秀樹 他 日本透析医学会 血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン 日本透析医学会雑誌44:337-425,2011


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