薬剤師コラム

慢性腎臓病の薬物療法:腎性貧血治療薬(ESA)

慢性腎臓病の薬物療法:腎性貧血治療薬(ESA)

兵庫医科大学病院 薬剤部長 木村 健 先生

兵庫医科大学病院 薬剤部長 木村 健 先生

慢性腎臓病の薬物療法:腎性貧血治療薬(ESA)

掲載日:2019/08/08

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慢性腎臓病(CKD)と腎性貧血の関係

慢性腎臓病が進行すると多くの患者さんで貧血の症状がみられるようになります。CKDに伴った貧血の主な原因は腎性貧血です。

腎性貧血とは
腎臓にはさまざまな機能があり、その中の1つに、骨髄での赤血球の産生を促す造血ホルモン(エリスロポエチン)を作ることがあります。そのため、腎臓の機能が低下すると、十分量のエリスロポエチンが作られないことにより、赤血球の産生が減少して貧血(腎性貧血)になります。
貧血になると、体がだるい、疲れやすい、動悸、息切れ、めまいなどの症状が現れます。ところが、腎性貧血は徐々に進行するため自覚症状に乏しい場合があります。

腎性貧血

腎性貧血と慢性腎臓病の悪循環
腎性貧血は、全身に血液を送る心臓に負荷となり、腎臓の血流量が低下するなど互いに影響して悪循環を起こします。そのため腎性貧血を早くから治療する必要があります。

悪循環

腎性貧血を治療することで、貧血の症状が改善するだけでなく、心臓病の予防や悪化の抑制、透析導入までの時間を延ばすことが期待できます(*1)。 しかし、過剰な治療は予後の悪化をもたらす可能性があります(*2)。そのため、定期的に検査を行う必要があります。わが国のガイドライン※1では、保存期CKD患者さんの目標ヘモグロビン※2(Hb)値として11.0 ~ 13.0 g/dLが推奨されています。
※1 日本透析医学会「2015年版 日本透析医学会 慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」
※2 ヘモグロビン:赤血球の中に存在し、肺で酸素と結合して血液の流れに乗って全身の組織に酸素を運ぶ役割を持つ。ヘモグロビンの量(Hb値)が貧血の指標とされる。

腎性貧血を改善する薬:赤血球造血刺激因子製剤(ESA)

赤血球造血刺激因子製剤(ESA)は、体の中でエリスロポエチンと同じ働きをします。そのため、腎性貧血の治療薬として、ESAが第一選択薬となります。
ESAは腎機能の低下に伴い十分な量ではなくなったエリスロポエチンの分泌を補い、骨髄中で赤血球のもとになる細胞を刺激して、赤血球を増やすことで腎性貧血を改善する効果があります。
ESAには遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤と、長時間効果の持続する持続型ESAがあり、いずれも注射薬です。

ESA

保存期CKD患者さんでは、複数回の検査でHb値が11g/dL未満となった時点で腎性貧血の治療を開始することが提案されています(*3)
保存期CKD患者さんの場合、遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤による治療では、週1回~2週間に1回の通院が必要になります。持続型ESAの場合には、初回は2週間に1回、その後は2週間に1回か、4週間に1回の投与となります。効果をみながら長期間使用します。
また、前述のとおり、保存期CKD患者の目標Hb値は11.0 ~ 13.0 g/dLの範囲が推奨されています(*3)。13 g/dLを超える場合には、ESAの量を減らしたり、休薬したりします。心臓や血管に重篤な疾患がある方などはHb値12 g/dLを超えると薬を減らしたり、休薬したりしてするなど、定期的にHb値を検査して患者さんにあった目標値が設定されます(*3)

赤血球造血刺激因子製剤(ESA)投与中の注意点

ESAによる主な副作用とその症状を以下にまとめました 。このような症状に気づいたら、医師または薬剤師などの医療スタッフに相談しましょう。

血圧上昇
(症状)頭痛・頭重感、めまい など

頭痛

高血圧性脳症
(症状)めまい、急激な強い頭痛、吐き気、手足のしびれ など

激しい頭痛

赤芽球癆(せきがきゅうろう)
(症状)顔色が悪い、体がだるい、階段や坂を上る時の動悸や息切れ など

だるさ

血栓塞栓症(脳梗塞・心筋梗塞・肺梗塞)
(症状)
◎ 脳梗塞:片側の手足や顔の麻痺、しびれ、頭痛、ろれつが回らない、しゃべりにくい、吐き気、嘔吐 など
吐き気

◎ 心筋梗塞:胸の痛み、冷や汗、胸を強く押えつけた感じ など

心筋梗塞

◎ 肺塞栓:胸の痛み、呼吸困難、意識障害 など
呼吸困難

ESAの使用による血圧上昇は、ESA開始時と高い目標Hb値で管理された場合に多いことが示されています(*4,5)。そのため、ESAの使用にあたっては、血圧上昇に注意しながら徐々に貧血を改善していきます。
ESAにより高カリウム血症を認める場合があるので、食事からのカリウムの摂取に注意しましょう。また、水分のとり方について、医師や薬剤師の指示に従ってください。
※カリウム:人体に欠かすことのできないミネラルの1つ。主に神経の情報伝達、筋肉の弛緩の調節などに関与しており、果物、芋、海藻、野菜類などに多く含まれる。
カリウム、水分の取り方

ESAの効果発現には鉄の存在が重要です。鉄欠乏時には鉄剤も併せて使われることがあります。

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<出典>
*1 Tsubakihara Y, Gejyo F, Nishi S, et al. High target hemoglobin with erythropoiesis‒stimulating agents has advantages in the renal function of non‒dialysis chronic kidney disease patients. Ther Apher Dial 2012;16:529‒540
*2 Singh AK, et al. Correction of Anemia with Epoetin Alfa in Chronic Kidney Disease N Engl J Med 2006;355:2085‒2098
*3 日本透析医学会 2015年版 日本透析医学会 慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン 日本透析医学会雑誌 2016;49:89-158
*4 KDIGO Clinical Practice Guideline for Anemia in Chronic Kidney Disease. Kidney Int 2012;2:299‒319
*5 Palmer SC, Navaneethan SD, Craig JC, et al. Meta‒analysis: erythropoiesis‒stimulating agents in patients with chronic kidney disease. Ann Intern Med 2010;153:23‒33


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