ドクターインタビュー

神戸大学医学部附属病院
腎臓内科/腎・血液浄化センター 教授・センター長

西 愼一 先生
神戸大学医学部附属病院
腎臓内科/腎・血液浄化センター 教授・センター長

西 愼一 先生
西 愼一 <font size="4">先生</font>先生

目次

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Chapter 2: 末期腎不全における腎代替療法の選択について

-----次に、CKDが進行した場合の腎代替療法の選択についてお聞きしていきます。
CKDステージが進んだ状態の3bや4の方は、その後、どのくらいの期間で腎代替療法が必要になるのでしょうか。

西先生1

腎機能が低下するスピードは人によって異なるので一概には言えません。腎機能がある程度低下した状態で保たれている人もいますし、腎臓病の教育入院をしたことで生活習慣が改善されて、腎機能の低下速度が緩やかになったという人もいます。
ただし、過去の検査値があれば、その時点から現在までの低下の程度から腎機能の低下速度を算出して、腎代替療法が必要になる時期をある程度予測することはできます。


-----疾患によって腎機能が低下するスピードに違いはありますか。

これも一概には言えないのですが、血圧のコントロールが悪い、あるいは、蛋白尿の量が多いという方では、低下スピードが比較的速い傾向があります。

-----CKDが進行し、末期腎不全となってしまった場合には、腎代替療法として、透析療法又は腎移植がありますが、どのような状態になったら腎代替療法の準備が必要になるのでしょうか。

日本腎臓学会などの腎臓病に関連する複数の学会が協力し、どの段階から腎代替療法の説明、あるいは準備をしたらよいかを検証して、「腎障害進展予防とスムーズな腎代替療法への移行:CKDステージG3b~5診療ガイドライン2017」というガイドラインを作成しています。ガイドラインでは、原則、CKDステージ4の段階から説明をし、5の段階から準備することとしています。ただし、腎機能の低下速度には個人差があるので、低下速度が速い場合はステージ3bから準備に入っていただくときもあります。

-----血液透析、腹膜透析、腎移植それぞれのメリット、デメリットについて説明される際には、どのようなことに気を付けていらっしゃいますか。

まず、それぞれの治療法について、偏りなく平等にお伝えすることを心がけています。日本腎臓学会などの腎臓病に関連する複数の学会で共同作成している、「腎不全 治療選択とその実際」という小冊子があるのですが、イラスト入りでわかりやすく、それぞれの治療法が平等に解説されているので、こちらの冊子を用いて説明するようにしています。
またその際、必ず家族と一緒に説明を聞いていただくようにお願いしています。最近は高齢の患者さんが多くなってきているので、家族のサポートが必要なことも含めてお話しし、患者さんとご家族にどの腎代替療法にするのかを選んでもらうようにしています。

-----腎代替療法を選ぶ際には、家族のかかわり方が重要になるのですね。

そうですね。特に最近は患者層が高齢化しているので、一人暮らしなのか、同居家族がいるのか、といった家族構成は、腎代替療法を選ぶ上で重要な条件です。
また、家族の方から積極的に希望の腎代替療法を申し出られる場合もあります。特に腎移植は、ドナーとなる家族から希望されることが多いです。

-----患者さん自身から家族にドナーの相談はしにくいことが多いと思うのですが、実際のところ、(生体)ドナーはどのようにして決まっているのでしょうか。

医療者がドナーを指定することはできませんので、ドナーとなる方の自発的な意思のもとに、患者さんと家族・親族とで決めていただくのですが、患者さんのみに腎代替療法の説明をすると、患者さんが一人で移植やドナーのことを考えなければならなくなります。やはり、患者さんの中には、「自分から家族に『ドナーになってほしい』とは言いづらい」という方もいます。自然な形で、家族にも一緒に腎代替療法についての説明を聞いていただき、家族の中で移植について考えていただけるような雰囲気づくりを最初に行う、ということも大事だと思っています。

-----腎移植をお勧めする場合の条件はありますか。

例えば年齢は腎移植を検討する上での重要な条件の1つですので、60代くらいまでの患者さんであれば腎移植をお勧めするようにしています。最近は60代のご夫婦間での移植も増えています。

-----先生としては、「若い患者さんにはできれば移植を受けていただきたい」という思いもあるのですか。

やはり、透析と移植とではQOLが格段に違います。若い方の場合、仕事もありますし、結婚、妊娠、出産などのイベントが控えていることも多いので、若ければ若いほど、腎移植のチャンスがあれば検討していただきたいと思っています。

-----血液透析はほとんどの患者さんに適応となると思いますが、腹膜透析をお勧めする場合の条件についてはいかがでしょうか。

西先生4

もちろん患者さんご自身の選定意思が優先されますが、お仕事の内容によっては腹膜透析をお勧めする場合もあります。例えば自営業の方など、ご自宅で仕事をしているような場合は自己管理がしやすいので、腹膜透析をお勧めします。一方で時間の融通が利かない仕事をされているような場合は、お勧めできないこともあります。
また、高齢の方でも、家族の支援があるのなら腹膜透析をお勧めできる場合もあるので、家族構成や、どの程度の支援ができるのかなども考慮しています。


-----腹膜透析よりも血液透析を、あえてお勧めする場合もあるのでしょうか。

研究上、血液透析と腹膜透析とで、早期段階での生命予後などの成績に差はないとされているので、いずれかを選ぶときには、やはり患者さんのライフスタイルを重視しています。
ただ、腹膜透析について、もう一つ大事なポイントは、治療の寿命があるということです。現状、腹膜透析を5年以上継続する方は少なく、約75%の方が5年未満で終えています(*)。その後は血液透析に移行するか腎移植を行うかになります。長く続けられない可能性のある治療であるということは、十分に説明するようにしています。

-----腎移植ができるのであれば腎移植を行い、できないのであれば先に腹膜透析を行って、腹膜の寿命が来たら血液透析に移行する、という選択方法も考えられますね。

そうですね。そのように考えて腎代替療法を選ぶ患者さんも多いです。

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<出典>
* 中山昌明,寺脇博之 CAPD療法の変遷とPD-HD併用療法 日本腎臓学会誌55:491-497,2013


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