ドクターインタビュー

進歩し続ける慢性腎臓病治療

大阪大学大学院医学系研究科
腎臓内科学 教授

進歩し続ける慢性腎臓病治療

大阪大学大学院医学系研究科
腎臓内科学 教授

猪阪 善隆 先生

猪阪先生

近年、慢性腎臓病(CKD)は国民病の1つとして注目され、その治療法は大きな進歩を遂げつつあります。また、IgA腎症や多発性嚢胞腎などの難治性腎障害についても、国の政策として研究が続けられています。
日本腎臓学会の副理事長であり、「難治性腎障害に関する調査研究」の研究班代表も務める猪阪善隆先生に、近年の慢性腎臓病治療の進歩と今後の展望、現在行われている難治性腎障害の研究の状況などについてお聞きしました。

取材日:2023/10/16

目次

Chapter 1:近年の慢性腎臓病治療の進歩と今後の展望

変革期を迎える薬物療法。食事・運動は専門指導の時代へ

----- 腎援隊を開設して今年で7年になりますが、その間で慢性腎臓病(CKD)の治療は変わってきているのでしょうか。

慢性腎臓病の薬物療法は、今、変革期を迎えていると思います。慢性腎臓病のお薬の開発は長らく停滞していましたが、近年、SGLT2阻害薬などの新しいお薬がいくつか登場しており、さらなる新薬の研究も続けられています。このような治療法の進歩によって、今後、治療成績が改善していくことが期待されます。
ただし、まだそれらのお薬の使用方法が確立しているわけではありません。どのような患者さんに効果があるのか、どのような患者さんに副作用が起こりやすいのか、多くのデータを集めて見極めていく必要があります。その上で、適正な使用法を医療者に広めていくことが、日本腎臓学会の使命の1つだと考えています。

----- 食事療法運動療法についてはいかがでしょうか。

いくらお薬が良くなっても、食事療法、運動療法は今までと変わらず重要ですし、今後はより重要になっていくと考えています。やはり、日常の食事、運動といった患者さん自身の行動が変わっていかないと、慢性腎臓病の進行を抑えることは難しいです。ご自身の病気を早く知って、正しく理解し、適切な自己管理をしていただきたいです。

----- そのためには、どのようなことが必要になってくるでしょうか。

食事や運動をそれぞれの専門スタッフが指導する体制を作っていくことが必要だと思います。すべての患者指導を医師が行うのには限界があり、どうしても教科書的な指導になりがちで、患者さんが正しく自己管理できない場合も少なくありません。食事であれば管理栄養士が、運動であれば理学療法士が、より具体的かつ継続的に指導することで、多くの患者さんの自己管理が改善すると思います。ただし、すべての病院や診療所にそれらの専門スタッフがいるわけではないので、例えば専門スタッフの派遣やオンライン指導といった仕組み作りが必要です。

----- 専門スタッフの指導を受けられる機会があれば、積極的に受けた方がいいのですね。

そうですね。これからは、医師だけでなく、管理栄養士や理学療法士、薬剤師といったさまざまなスタッフが関わるチーム医療が大事だと思っています。それぞれが専門性を活かし、みんなで患者さんを励ましながら治療することで、総合的に治療成績が向上していくと考えています。

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