ドクターインタビュー

進歩し続ける慢性腎臓病治療

筑波大学医学医療系臨床医学域
腎臓内科学 教授

進歩し続ける慢性腎臓病治療

筑波大学医学医療系臨床医学域
腎臓内科学 教授

山縣 邦弘 先生

山縣先生

近年、慢性腎臓病(CKD)は国民病の1つとして注目され、その治療法は大きな進歩を遂げつつあります。また、患者層の高齢化に伴い、食事や運動などの生活指導も変化してきています。
日本腎臓リハビリテーション学会の理事長でもある山縣邦弘先生に、近年の慢性腎臓病治療の進歩と今後の展望、生活指導の現況などについてお聞きしました。

取材日:2023/10/18

目次

Chapter 1:慢性腎臓病の早期発見・早期治療について

腎臓病の始まりの多くは"尿の異常"--定期的な健診・検尿を

----- 本日は、慢性腎臓病(CKD)治療の近年の進歩や今後の展望についてお話をうかがいたいと思いますが、まずは現状で有効な慢性腎臓病の対処法について教えてください。

>特に大事なのは、病気を早期に発見し、早期に治療を開始することです。これができれば、慢性腎臓病を治癒(ちゆ)できる場合もあります。

----- どうしたら慢性腎臓病を早期に発見できるのでしょうか。

まず1つは、一般の方にも慢性腎臓病というものを知っていただくことが大切だと思います。最近はCMや広告で「慢性腎臓病」という言葉をよく見聞きするようになり、以前に比べるとずいぶん知られてきていると思います。筑波大学のある茨城県にも「いばらき腎臓財団」という団体があって、慢性腎臓病や腎移植の啓発を何十年も続けています。慢性腎臓病は今や、糖尿病や高血圧と同様に国民病の1つですので、あらゆる人に知っていただきたいです。

公益財団法人 いばらき腎臓財団

もう1つは、しっかりと定期的に健診・検尿を受けていただくことです。
最近は、加齢に伴って腎機能が衰え、血液検査のクレアチニンの値をもとに、慢性腎臓病と診断される方が多いです。ただし、このように血液検査の結果で腎機能がわずかに低下しただけで、尿異常をまったく認めない方の場合、大部分は、その後も腎機能障害の進行は緩やかで、問題となることは通常ありません。前年や前々年の腎機能の結果と比較して、低下速度を確認していだければと思います。
将来的に腎機能障害が更に進行して問題となるような腎臓病は、多くの場合が尿の異常の有無で分かります。ただし、それは患者さん自身で気づくものではなく、検査によって初めて見つかります。慢性腎臓病の初期段階は自覚症状が何もなく、検査が行わなければ病気が見つかることは決してありません。ですから、最低でも1年に1回は健診・検尿を受けていただきたいです。

----- 日本では昔から学校検尿が行われていますし、企業健診や市区町村の健診もあります。

日本の健診・検尿制度は、腎臓病の予後改善に大きく貢献し、慢性糸球体腎炎が原因で末期腎不全になる人を減らすのに有効であったと思います。1970年代に、蛋白尿(たんぱくにょう)が慢性糸球体腎炎の初期症状であるとして、病気を早期発見するために日本全国で幼児から大人までの定期的な健診・検尿を始めました。当時は早期発見できたとしても有効な治療法が少なかったため、この取り組みは海外ではあまり評価されませんでした。しかし、早期に治療を始めたことや、その後に治療法が進歩したことなどから、病気の進行を抑えられる患者さんが増えていきました。その結果、2000年ごろからは透析導入になる慢性糸球体腎炎患者さんが明らかに減りました(*1)。これは海外では見られない傾向で、病気の早期発見を目指した日本の健診・検尿制度の大きな成果です。

----- 日本にはすでに世界に誇る腎臓病の早期発見システムがあるということですね。

特定健診では、高血圧、糖尿病などのある方は、腎障害進行のリスクがあるとして、血液クレアチニン検査を受けることもできます。こんなに行き届いた素晴らしいシステムがあるわけですから、全ての人に利用していただきたいです。学生や会社員と違って、主婦の方などは自ら足を運ぶ必要がありますが、面倒に思わず、お子さんを連れてでも健診センターに行っていただきたいです。
そして、健診結果が「要医療」や「要再検」であれば、必ず一度病院で診てもらってください。当たり前ですが、蛋白尿などの異常が見つかっても、そこで終わりではありません。異常の原因が分かって初めて「早期発見」ですので、そのことを忘れないでいただきたいです。

一度でも蛋白尿が出たら、必ず病院を受診しましょう

----- 健診結果に異常があっても、つい放置してしまう方も多いようですね。

山縣先生

蛋白尿が陽性でも、実は一時的な場合も多く、再検査したら陰性になることも少なくありません。そのときは安心していただければいいですし、続けて陽性が出るようなら、詳しく調べてもらえば病気を早く見つけられます。良いことしかないので、必ず一度病院を受診していただきたいです。
また、「蛋白尿が1+だったけど、去年も同じだったから問題ない」と考えてしまう方もいますが、蛋白尿は「変わらないから大丈夫」ということは絶対になく、むしろ持続していることは大きな問題です。決して放置しないようお願いしたいです。

----- どのような病院を受診すればいいのですか。

まずは、お近くの内科に行くのがいいと思います。ただし、尿検査ができない診療所やクリニックもたまにありますので、そこは事前に確認していただきたいです。最近は診療科目に「腎臓内科」を掲げている診療所やクリニックもありますので、そのような施設を受診するとより良いでしょう。

----- 病院では、どのような検査が行われますか。

基本的には、尿検査や血液検査が行われます。尿検査は健診などで行われる簡易的なものではなく、尿中の具体的な蛋白量を測ります(尿蛋白定量)。検査の結果によっては、大きな病院の腎臓内科に紹介してもらう必要があります。CKD診療ガイドラインで「腎臓専門医・専門医療機関への紹介基準」が定められており、例えば尿中の蛋白とクレアチニン(Cr、CRE)の比率(尿蛋白/Cr比)が0.5以上だった場合は、すぐに紹介が必要とされています(*2)。受診した病院では、必ず尿蛋白定量を行ってもらってください。

----- 尿検査が慢性腎臓病の治療の第一歩ということですね。

そうですね。患者さん自身で「腎臓の働きが悪くなった」と気づくようなことは、絶対にありません。また、治療を受けていても「同じお薬を毎回処方されるばかりで何も変わらない」と思って通院しなくなってしまう方もいますが、これも大変危険です。決して自己判断せず、きちんと検査を受けて、医師の診断・治療を受けていただきたいと思います。

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<出典>
*1 花房規男, 他. わが国の慢性透析療法の現況(2021年12月31日現在) 透析会誌 2022;55:665-723
*2 日本腎臓学会 エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023:p4


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