慢性腎臓病の原因疾患

慢性腎臓病の原疾患(原因疾患)にはさまざまなものがあります。

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慢性糸球体腎炎

監修:福井大学 学術研究院医学系部門 腎臓病態内科学 教授 岩野 正之 先生

若い人にも多い「慢性糸球体腎炎」

「慢性糸球体腎炎」とは、腎臓の糸球体が炎症を起こして、血液をうまくろ過できなくなる疾患を総称したものです。通常はろ過されない血液中のタンパク質や赤血球が尿中にもれ出る状態が、長期間続きます。若年成人の腎臓病では最も多く(*1)透析導入の原因としても糖尿病性腎症腎硬化症に次いで第3位です(*2)

慢性糸球体腎炎

慢性糸球体腎炎に伴う「ネフローゼ症候群」

尿中にもれ出るタンパク質が大量になり、血液中のタンパク質が少なくなると、脚や顔などにむくみが現れたり、血液中の悪玉コレステロールが増えたり(脂質異常症)、血液が固まりやすくなったり(凝固能亢進)します。このような状態をネフローゼ症候群といい、多くの慢性糸球体腎炎でそれらの現象が見られます。慢性糸球体腎炎の治療においては、ネフローゼ症候群への対処も重要になります。

ネフローゼ症候群

さまざまな慢性糸球体腎炎

慢性糸球体腎炎の主な疾患は以下のとおりです。疾患は腎生検によって特定され、それぞれの病態や症状にあわせて治療が行われます。

☞ 教えて!ドクター「腎生検とはどのような検査ですか?痛いですか?

腎生検

IgA腎症(アイ・ジー・エーじんしょう)
抗体の1つである免疫グロブリンA(IgA)が糸球体に沈着する、慢性糸球体腎炎の代表的な疾患です。
※抗体:病原体などの異物を体内から排除する働きを持つ、免疫グロブリンというタンパク質。

IgA腎症

<症状>
ゆっくりと時間をかけて腎機能が低下していくため、長期間、自覚症状がほとんどなく、健診などの尿検査がきっかけとなってわかる場合がほとんどです。風邪をひくとコーラ色の尿が出ることもあります。
他の疾患に比べると多くはありませんが、ネフローゼ症候群を伴う場合もあります。

<腎機能障害の進行>
診断後20年で約40%の患者さんが末期腎不全に至るとされています(*3)

<治療>
日常生活においては、禁煙や適正飲酒量、適正体重の維持を心がけます。運動量の調整が必要な場合もあります。食事療法では、塩分の摂取を制限します。腎機能が悪くなると、タンパク質の摂取を制限することもあります。
必要に応じて、降圧薬、副腎皮質ステロイド、抗血小板薬などの薬剤も服用します。副腎皮質ステロイドを一定期間集中的に点滴注射する場合もあります(ステロイドパルス療法)。

膜性腎症(まくせいじんしょう)
抗体の1つである免疫グロブリンG(IgG)などが糸球体に沈着する疾患です。がんや肝炎などの疾患が原因となる場合もあります。慢性糸球体腎炎の中では、中高年での発症が比較的多いことも特徴です。

膜性腎症

<症状>
多くの場合、ネフローゼ症候群を伴います。

<腎機能障害の進行>
自然に症状が落ち着くこともありますが、ネフローゼ症候群がある場合、診断後20年で約40%の患者さんが末期腎不全に至るとされています(*3)

<治療>
まず、原因となっている疾患(特にがん)がないか確認します。原因疾患を治療することで、膜性腎症が治る場合もあります。
原因疾患がなく、ネフローゼ症候群がある場合は、副腎皮質ステロイドを服用します。効果が不十分なときは、免疫抑制薬も合わせて服用します。
また、症状に応じて降圧薬や脂質降下薬、抗血小板薬などの薬剤も服用します。

膜性増殖性糸球体腎炎(まくせいぞうしょくせいしきゅうたいじんえん)
糸球体の血管の壁が厚くなる疾患です。近年、多くの場合でC型肝炎などの感染症が原因であることがわかってきました。

膜性増殖性

<症状>
50%以上の患者さんは、経過中にネフローゼ症候群を伴います(*3)

<腎機能障害の進行>
腎機能障害が進行しやすく、ネフローゼ症候群がある場合、診断後10年で約60%の患者さんが末期腎不全に至るとされています(*3)

<治療>
原因となっている疾患(特にC型肝炎)の確認と、その治療を優先して行います。
原因疾患が見つからない場合は、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬、抗血小板薬などの薬剤を服用します。重症の場合は、ステロイドパルス療法を行います。
また、ネフローゼ症候群や腎機能障害の程度に応じて、塩分・タンパク質の摂取制限や運動の制限などの治療も行います。

☞ 参考:C3腎症患者さんとご家族向け特設コンテンツ

巣状分節性糸球体硬化症(そうじょうせいぶんせつせいしきゅうたいこうかしょう)
糸球体の一部が硬くなる疾患です。この疾患に伴うネフローゼ症候群は、治療に反応しにくいことが特徴です。

巣状分節性

<症状>
ネフローゼ症候群を伴う場合が多く、高血圧や顔・脚のむくみ、体重増加といった症状が急激に現れます。

<腎機能障害の進行>
診断後20年で50%以上の患者さんが末期腎不全に至るとされていましたが(*3)、治療が進歩しているため、現在の割合はもう少し低いと考えられています。

<治療>
一般的には、まず副腎皮質ステロイドで治療します。重症の場合は、ステロイドパルス療法を行います。副腎皮質ステロイドの効果が不十分な場合は、免疫抑制薬も合わせて服用します。
必要に応じて降圧薬、脂質降下薬、抗血小板薬、抗凝固薬などの薬剤を服用したり、水分・塩分の摂取を制限したりします。
ネフローゼ症候群に伴う脂質異常症が重度の場合、LDLアフェレーシスを行うこともあります。
※LDLアフェレーシス:体から血液を取り出し、血液中の過剰なLDLコレステロール (悪玉コレステロールの一種)を取り除いて、再び体に戻す治療。

まとめ

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<出典>
*1 日本腎臓学会 CKD診療ガイド2012
*2 花房規男 他. わが国の慢性透析療法の現況(2021年12月31日現在) 透析会誌 2022;55:665-723
*3 矢崎義雄(編)内科学 第11版 朝倉書店


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