ドクターインタビュー

進歩し続ける慢性腎臓病治療

増子記念病院 理事長

進歩し続ける慢性腎臓病治療

増子記念病院 理事長

両角 國男 先生

両角先生

近年、慢性腎臓病(CKD)は国民病の1つとして注目され、その治療法は大きな進歩を遂げつつあります。一方で、より良い医療のために克服すべき課題も見えてきています。
腎臓病の豊富な診療実績を持つ増子記念病院(名古屋市中村区)にて、長年、慢性腎臓病の診療に携わってきた両角國男先生に、近年の慢性腎臓病治療の進歩と今後の課題についてお聞きしました。

取材日:2023/10/19

目次

Chapter 1:治療薬の進歩と課題

期待の新薬が登場。より適正な使用法の確立へ

----- 腎援隊をオープンして今年で7年になりますが、その間で慢性腎臓病(CKD)の治療は変わってきているのでしょうか。

近年、いくつかの新しいお薬が登場し、注目されています。例えば、SGLT2阻害薬です。もともとは糖尿病のお薬でしたが、腎機能の低下を遅らせる作用があることが分かり、慢性腎臓病の治療にも用いられるようになりました。これらの新しいお薬は、患者さんの治療成績を改善する可能性があるものとして期待されています。
ただし、腎機能が著し低下している患者さんにも有用なのか、慢性腎臓病治療の支持療法として一般的に用いられているRAS阻害薬と併用したときにどうなるのか、といったことについて、現状十分なデータがあるわけではありません。今後、多くの診療データを集めて研究し、より適正な使用法を確立していく必要があると思います。

----- 腎性貧血の治療薬にも新しいお薬が登場しましたね。

以前は腎性貧血の治療に主に注射薬が用いられていましたが、2020年前後に患者さんの負担が少ない飲み薬が複数発売されました。ただし、こちらもまだ発売されてから数年で、十分な使用実績があるとは言えないので、最適な用法・用量や副作用の発現頻度など、データを集めて検証していく必要があると思います。

----- お薬に関して、発売後に分かってくることも多いのですか。

発売後、広く処方されるようになって明確になってくることもあります。発売されているお薬は、臨床試験(治験)によって効果や安全性が十分に検討されたものですが、実際の臨床現場にはさまざまな患者さんがいて、治験のデータがすべての患者さんに当てはまるわけではありません。発売後に多くのデータを収集していくことによって、お薬に適した、あるいは適していない患者さんの条件や、適切な用法・用量、副作用の発現頻度などが、より詳しく分かっていきます。承認されているお薬の適応条件や用法・用量、副作用などについて、発売後も目を光らせて確認し、必要に応じて補正していくことは、私たち医療者や製薬会社の務めでもあると思います。

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