ドクターインタビュー

進歩し続ける慢性腎臓病治療

増子記念病院 理事長 両角 國男 先生

進歩し続ける慢性腎臓病治療

増子記念病院 理事長
両角 國男 先生

両角先生

目次

Chapter 3:慢性腎臓病の診療体制の課題

慢性腎臓病治療は社会運動

----- 慢性腎臓病は、どのような病院で治療を受けるのがいいのでしょうか。

日本では成人の8人に1人が慢性腎臓病とされており(*1)、もはや大規模病院などの腎臓内科だけですべての患者さんの治療を完結させることは現実的ではありません。また、大半の慢性腎臓病には糖尿病や高血圧などのさまざまな病気が関係しており、それらの治療が慢性腎臓病の治療にも大きく影響します。ですから、通常は、日ごろから糖尿病や高血圧などで患者さんを診ている開業医の先生方に慢性腎臓病の基本的な管理をしてもらい、要所で病院の腎臓内科を受診していただく形が好ましいと考えています。

----- 増子記念病院は腎疾患の専門的な診療を行っていますが、近隣の開業医とはどのように連携されていますか。

当院がある名古屋市中村区では、今年から医師会の協力の下で、地域単位の慢性腎臓病対策が行われています。これは、中村区内の糖尿病内科、循環器内科、腎臓内科の医師による取り組みで、開業医と3病院(日本赤十字社 愛知医療センター 名古屋第一病院、名古屋セントラル病院、増子記念病院)が連携し、地域として慢性腎臓病患者さんに対応していくという構想です。基本的には開業医で慢性腎臓病の進行を抑えるよう患者さんを管理しますが、3病院の腎臓内科が検査・診断、治療、生活指導などを随時サポートします。そのために、双方で患者さん紹介をスムーズに行えるよう、紹介手続きも簡便化しました。
慢性腎臓病の治療は、今後地域として取り組んでいく必要があると考えており、一種の社会運動だと思っています。

"患者さんの不安を取り除く"ことも、腎臓内科医の使命

----- 腎臓を専門としない先生方の協力が重要ですね。

そうですね。彼らの負担が増えないような仕組みづくりが必要ですし、われわれ腎臓内科医も、十分なサポートができるようにレベルアップしていかなければなりません。前述のとおり、慢性腎臓病はさまざまな病気と密接な関係を持っています。内科系疾患全般の理解を深め、その中の1つとして慢性腎臓病を捉えて診療していくことがより重要になってきています。

----- より幅広い知識が必要になっているのですね。

両角先生

一方で、さらに専門性を高めていく必要もあります。日本腎臓学会のCKD診療ガイドラインは、腎臓を専門としない医師も一定以上の診療が行えるように作成されたものです。腎臓を専門とする腎臓内科医は、それを踏まえた上で、より踏み込んだ診療をしていかなければなりません。病気を治す・悪化させないことはもちろん、患者さんの不安を取り除いてあげるためには、どうしたらいいのか。その観点から、それぞれの患者さんをさまざまな角度から診察し、適切な治療を提供していくことが、私たち腎臓内科医の使命だと考えています。

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<出典>
*1 日本腎臓学会 CKD診療ガイド2012:p5-7


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