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Q

透析も腎移植も受けないという
選択肢はありますか?

透析も腎移植も受けないという
選択肢はありますか?

回答いただいた先生
埼玉医科大学 腎臓内科 教授 岡田 浩一 先生
埼玉医科大学 腎臓内科 教授 岡田 浩一 先生
透析・腎移植

掲載日:2024/09/05

A

近年では、特に高齢の末期腎不全患者さんやそのご家族から、「透析腎移植を受けないという選択はできないか」、「透析をやめることはできないか」といったご相談を受けることも珍しくありません。認知症などで通院透析や透析中の安静横臥(横たわること)を続けるのが難しい、透析中の血圧変動のためにこれ以上治療を行うと体の負担が大きい、といった理由から、治療の開始や継続に消極的になるようです。
また、フレイルや担癌状態(体にがんがあること)などにより、透析導入や透析の継続が難しい高齢患者さんもいらっしゃいます。
※フレイル:筋力の低下や活動性の低下、認知機能の低下、精神活動の低下などによって、介護が必要なほどの健康障害を起こしやすくなっている状態。

保存的腎臓療法という選択肢

慢性腎臓病(CKD)が進行して末期腎不全の状態となった患者さんは、透析や腎移植といった腎代替療法を行わなければ、生命を維持することができません。しかし、腎代替療法を受けるには、いくつかの満たすべき条件があり、特に高齢患者さんにおいては、条件を満たすことが難しい場合も少なくありません。腎移植を受けられる状況ではなく、がんばって透析を開始したとしても、それ自体が患者さんの大きな負担になってしまう場合もあります。
そのようなときは、透析を行わず、腎不全に伴うさまざまなつらい症状(吐き気、呼吸困難など)はお薬などを用いて積極的に緩和しつつ、これまでの治療を継続しながら自然経過に任せる「保存的腎臓療法」という選択肢もあります。保存的腎臓療法では、適宜、対症療法※1と緩和ケア※2を併用しながら、これまでの生活指導、食事療法、運動療法、薬物療法などを極力続けます(*)
※1 対症療法:病気そのものや病気の原因を治療する「原因療法」と異なり、病気によって生じる症状をやわらげたり、なくしたりする治療法。
※2 緩和ケア:身体的・精神的な苦痛をやわらげるためのケア。

納得のいく決定に向け 医療従事者もサポートします

昨今、医療においても多様性が尊重されるようになりました。体の状態だけでなく、心の状態や経済・社会的側面などにも配慮した、患者さん一人ひとりの価値観・死生観を尊重した支援を重視する考え方が医療者の間でも広がり始めています。
人生の最終段階をどのように自分らしく生きるか。そのために、どのような治療やケアを選択するか。十分に納得のいく決定をするためには、患者さん、ご家族、医療チームが一緒になって話し合うことが重要です。人生の質(QOL:Quality of Life)を見据えた最善の選択ができるよう、私たち医療従事者もできるだけ支えになりたいと思っていますので、迷われた場合は相談してみてください。

<出典>
* 日本医療研究開発機構(AEMD) 長寿科学研究開発事業 高齢腎不全患者に対する腎代替療法の開始/見合わせの意思決定プロセスと最適な緩和医療・ケアの構築」研究班編. 高齢腎不全患者のための保存的腎臓療法―conservative kidney management(CKM)の考え方と実践―. 東京医学社 2022


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