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Q

透析をやめることはできますか?

透析をやめることはできますか?

回答いただいた先生
本町矢吹クリニック 院長 政金 生人 先生
本町矢吹クリニック 院長 政金 生人 先生
透析をやめることはできますか?

掲載日:2019/04/04

A

透析を始める前や、透析を始めて間もない頃は、「透析を受けたくない」「透析をやめたい」と考える方が多いようです。また、高齢となり透析を続けていくことが難しいため、そのように考える方もいらっしゃいます。いかに長く生きるかだけではなく、いかに納得して生きるかを皆さんが真剣に考える時代になったのだと思います。 しかし、腎不全患者さんは、生命維持のためには透析などの腎代替療法を受ける必要があります。

☞ 参考:Q. 透析は、何のために受けるのですか?

透析を受けたくない、透析をやめたいという方は、まずは腎代替療法についてもう一度よく知り、考えてみてはいかがでしょうか。

◆ 腎移植 -透析以外の腎代替療法-
透析以外の腎代替療法としては腎移植があり、生体腎移植献腎移植の2種類があります。
生体腎移植は、医学の進歩によって適応が広がり、近年では年間1,700件程度が行われるようになりました(*1)。また、透析を経ることなく生体腎移植を受ける先行的腎移植も増えてきています(2021年に行われた生体腎移植においては、約40%が先行的腎移植となっています(*1))。興味がある方は、一度腎移植を行っている病院でお話を聞いてみると良いでしょう。
献腎移植は、年間200件程度が行われています(*1)。献腎移植を希望する場合は、主治医に相談して、日本臓器移植ネットワークに移植希望登録を行います。献腎移植を受けるまでの待機期間は、現在は平均約14年8カ月(小児を含む)となっています(*2)


◆ 透析 -さまざまな透析方法について-
透析は、週3回、日中に透析施設に通って1回4~5時間の透析を受ける方法が一般的ですが、それ以外にもいくつかの選択肢があります。ご自身が望む生活に近づけるように、透析方法の変更を主治医に相談してみるのも良いと思います。

例えば、日中はできるだけ仕事の時間を確保したいという場合、透析を受ける時間帯を変更するのも1つの方法です。夕方から血液透析を受けられる透析施設も多いですし、まだ実施している施設は少ないものの、透析施設に宿泊して就寝中に血液透析を受けるオーバーナイト透析という方法もあります。また、自宅で血液透析を行う在宅血液透析という方法もあります。

もう少し食事を楽しみたいという場合は、長時間透析を受けると良いかもしれません。長時間透析によって、より多くの余分な水分・塩分や老廃物を取り除ければ、食事の自由度が高くなる可能性があります。前述のオーバーナイト透析や在宅血液透析は、長時間透析を行いやすい透析方法でもあります。
また、長時間透析を受けると、合併症の改善が期待でき(*3~8)、透析開始後、より長く生きられるといった報告もあります(*9)

透析には腹膜透析という方法もあります。通院は月1、2回程度ですので、透析液を交換する時間(1日2~4回程度、1回あたり20~30分程度)を確保できれば、社会復帰がしやすいという特長があります。就寝中に専用の機械を用いて自動的に透析液を交換する方法(APD)もあります。尿が出ているうちは食事の自由度も比較的高く、また、血液透析のように透析の度に穿刺をする必要はありません。
※ 患者さん自身が手動で透析液を交換する方法はCAPDと言います。

このような情報を主治医や病院のスタッフ、インターネット、本などから広く集めて、主治医と相談の上、より自分のライフスタイルに合った透析方法を探してみてはいかがでしょうか。

◆ 腎代替療法を受けない(やめる)という選択肢
ご高齢の患者さんや悪性腫瘍を合併した場合など、腎移植も透析も受けず、緩和ケアのみを受けることを、患者さん自身(場合によってはご家族)が希望する場合は、そのような選択肢もあります。自分が残された時間をどのように過ごしたいのかをよく考え、それを主治医や福祉担当者に伝えてよく相談して、患者さんご本人にとって最も良い選択をしていただきたいと思います。

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<出典>
*1 日本臨床腎移植学会・日本移植学会. 腎移植臨床登録集計報告(2022) 移植 2022;57:199-219
*2 日本臓器移植ネットワーク. NEWS LETTER Vol.26,2022:7
*3 Charra B,Calemard E,Ruffet M, et al.Survival as an index of adequacy of dialysis. Kidney Int 1992;41:1286-1291
*4 Charra B,Chazot C, Jean G, Laurent G. Long, slow dialysis. Miner Electrolyte Metab 1999;25:391-396
*5 Kurella M,Chertow GM. Dialysis session length('t') as a determinant of the adequacy of dialysis.Semin Nephrol 2005;25:90-95
*6 Brunet P,Saingra Y, Leonetti F,Vacher-Coponat H, Ramananarivo P, Berland Y. Tolerance of haemodialysis:a randomized cross-over trial of 5-h versus 4-h treatment time.Nephrol Dial Transplant 1996;11 (Suppl 8):46-51
*7 McGregor DO, Buttimore AL, Lynn KL,Nicholls MG, Jardine DL.Acomparative study of blood pressure control with short in-center versus long home hemodialysis. Blood Purif 2001;1:293-300
*8 Luik AJ, Sande FM, Weideman P,Cheriex E, Kooman JP, Leunissen KM.The influence of increasing dialysis treatment time and reducing dry weight on blood pressure control in hemodialysis patients:a prospective study. Am JNephrol 2001;21:471-478
*9 前田利朗 6時間透析における生存率-20年の経験から- 日本透析医会雑誌 2010;25;95-100


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