教えて!ドクター

Q

子どもが欲しいと思っています。
慢性腎炎は遺伝しますか?

子どもが欲しいと思っています。
慢性腎炎は遺伝しますか?

回答いただいた先生
群馬大学大学院医学系研究科 内科学講座 腎臓・リウマチ内科学分野
教授 廣村 桂樹 先生
群馬大学大学院医学系研究科 内科学講座
腎臓・リウマチ内科学分野 教授 廣村 桂樹 先生
子どもをあやす母親

掲載日:2023/10/13

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A

慢性腎炎は、腎臓内の炎症が長期間続く病気の総称です。特に血液をろ過する装置である糸球体に炎症が生じることが多く、これを慢性糸球体腎炎と呼んでいます。慢性腎炎にはさまざまな病気がありますが、多くの場合、遺伝することはありませんのでご安心ください。しかし、一部には遺伝する病気もあります。以下に、その代表的なものを述べます。

● アルポート症候群
この病気はコラーゲン線維の遺伝子変異により、慢性腎炎、難聴、眼合併症を生じる病気です。男性の患者さんは症状が重く、10代後半から30歳代で末期腎不全に至ることがあります(*1)

● ファブリー病
細胞内の酵素の遺伝子変異により糖脂質が蓄積し、腎障害、脳血管障害、心筋障害、皮膚病変、四肢疼痛、角膜混濁などを生じる病気です。この病気も男性の患者さんは症状が重くなります(*2)

● 家族性IgA腎症
慢性糸球体腎炎の代表的な病気であるIgA腎症は、一部の患者さんで家系的に発症することが分かっています(*3)。遺伝子の変異に、環境要因が加わって発症するものと考えられています。

● 慢性腎炎以外の遺伝性腎疾患
慢性腎炎以外にも、遺伝する腎疾患はいろいろあります。特に、多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)と基底膜菲薄病(きていまくひはくびょう)は、患者さんの数が多い遺伝性腎疾患です。


遺伝する慢性腎炎かどうか調べるためには、腎生検や遺伝子検査などの詳しい検査が必要です。気になる場合は、主治医に相談しましょう。

☞ 参考:教えて!ドクター「Q. 腎生検はどのような検査ですか?痛いのですか?

なお、遺伝の有無にかかわらず、病気の状態によっては、妊娠・出産において、慢性腎炎の悪化(蛋白尿増加、腎機能低下)、早産、低出生体重児などのリスクを伴う可能性があります(*4)。妊娠を希望するときは、事前に主治医に相談しましょう。

医師に相談

☞ 参考:教えて!ドクター「Q. 『慢性腎炎』と診断されました。治りますか?

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<出典>
*1 難病情報センター「アルポート症候群」https://www.nanbyou.or.jp/entry/4348(参照 2023.9.29)
*2 小児慢性特性疾病情報センター「ファブリー(Fabry)病」https://www.shouman.jp/disease/details/08_06_091/(参照 2023.9.29)
*3 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)難治性腎障害に関する調査研究班 編. エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン2020 東京医学社 2020:3-7
*4 日本腎臓学会学術委員会 腎疾患患者の妊娠:診療の手引き改訂委員会 編. 腎疾患患者の妊娠:診療ガイドライン2017 診断と治療社 2017:8-15


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