どのような病院を受診すればいいですか?
どのような病院を受診すればいいですか?
腎臓内科学 教授 丸山 彰一 先生
2017.07.20 教えて!ドクター
慢性腎臓病の原疾患(原因疾患)にはさまざまなものがあります。
監修:虎の門病院 腎センター内科 部長 乳原 善文 先生
多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん:ADPKD※)は、両側の腎臓にたくさんの嚢胞(液体のつまった袋)ができる遺伝性の病気です。日本では約4,000人に1人発症すると推定されており(*1)、透析導入原因の2~3%程度を占めています(*2)。
※ 多発性嚢胞腎には、成人で症状が現れる常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)と、出生前~新生児期に症状が現れる常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)がありますが、ここではADPKDについて説明します。
ADPKDでは、腎臓の尿細管に嚢胞ができ、それらが増えて大きくなっていきます。腎臓の大きさは数倍になり、正常な腎臓の組織が圧迫されるようになると、腎機能が低下していきます。
ADPKDは、一般的に30~40歳代まではほとんど症状がありませんが、病気の進行に伴って以下のような症状が現れる場合があります。ただし、進行の速さは人それぞれで、同じ家系の患者さんでも異なります。
<高血圧>
若い年代から発症します。人によっては子どもの頃に発症する場合もあります。嚢胞が大きくなる前、腎機能が低下する前から発症することも多いとされています(*4)。
ADPKDは以下のような合併症を起こしやすいとされています。発症すると激しい痛みを伴うものや、命にかかわるものもあるため、定期的に必要な検査を受けることが大切です。
◆ 腎臓に起きやすい主な合併症
<嚢胞出血>
嚢胞の細い血管から出血し、嚢胞内にたまるものです。痛みを伴うこともあり、血尿の原因にもなります。
<尿路結石>
腎臓から尿道までの「尿路」に石(結石)ができる病気です。男性患者さんの21%、女性患者さんの13%に合併するとされており(*8)、背中の腰のあたりやお腹の急激な痛み、血尿といった症状が起こります。
一般的に、家族の病歴や上記のような症状・合併症の有無の確認、腎臓の状態を調べるための画像検査などを行います。
ADPKDでは、60歳までに約半数の患者さんが末期腎不全になり、腎移植や透析が必要になると言われています(*1)。ただし、ADPKDが原因で透析導入となった患者さんの生命予後は、他の病気で透析導入となった患者さんに比べて良好とされています(*10,11)。
<血圧のコントロール>
ADPKDでは、多くの場合、早い段階で高血圧を発症します。高血圧は慢性腎臓病を悪化させるため、腎機能低下をより早めてしまいます。また、高血圧は心筋梗塞や脳卒中などの合併症の原因でもあります。そのため、降圧療法はADPKDの治療の基本です。
食事療法で塩分を制限し、必要に応じて降圧薬を服用します。
*1 Higashihara E, Nutahara K, Kojima M, et al. Prevalence and renal prognosis of diagnosed autosomal dominant polycystic kidney disease in Japan Nephron 1998;80:421-427
*2 花房規男 他. わが国の慢性透析療法の現況(2021年12月31日現在) 透析会誌 2022;55:665-723
*3 Grantham JJ. Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease N Engl J Med 2008;359:1477-1485
*4 Higashihara E, Horie S, Nutahara K, et al. Renal disease progression in autosomal dominant polycystic kidney disease Clin Exp Nephrol 2012;16:622-628
*5 Gabow PA, Duley I, Johnson AM. Clinical profiles of gross hematuria in autosomal dominant polycystic kidney disease Am J Kidney Dis 1992;20:140-143
*6 Johnson AM, Gabow PA. Identification of patients with autosomal dominant polycystic kidney disease at highest risk for end-stage renal disease J Am Soc Nephrol 1997;8:1560-1567
*7 Hogan MC, Norby SM. Evaluation and management of pain in autosomal dominant polycystic kidney disease Adv Chronic Kidney Dis 2010;17:e1.-16
*8 Higashihara E, et al. Clinical aspects of polycystic kidney disease J Urol 1992;147;329-332
*9 Alam A, et al. Managing cyst infections in ADPKD: an old problem looking for new answers Clin J Am Soc Nephrol 2009;4:1154-1155
*10 荒井純子. 透析療法(東原英二監修)多発性囊胞腎の全て インターメディカ 2006;16-21:225-232
*11 Perrone RD, Ruthaazer R, Terrin NC. Survival after end stage renal disease in autosomal dominant polycystic kidney disease: contribution of extrarenal complications to mortality Am J Kidney Dis 2001;38:777-784
*12 Barash I, Ponda MP, Goldfarb DS, Skolnik EY. A pilot clinical study to evaluate changes in urine osmolality and urine cAMP in response to acute and chronic water loading in autosomal dominant polycystic kidney disease Clin J Am Soc Nephrol 2010;5:693-697
* 13 Wang CJ, Creed C, Winklhofer FT, et al. Water prescription in autosomal dominant polycystic kidney disease: a pilot study Clin J Am Soc Nephrol 2011;6:192-197
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