2019.02.21 教えて!ドクター
iPS細胞とは、皮膚などの体細胞から作った、さまざまな組織や臓器の細胞に分化することができる能力と、ほぼ無限に増殖できる能力を持っている細胞です。近年、このiPS細胞を用いて腎臓を再生する研究が進められてきました。
☞参考:腎臓の構造
また、そのヒトiPS細胞から作られた腎臓組織をネズミの体内に移植すると、ネズミの血管と移植された腎臓組織内の糸球体がつながることが発見され、その糸球体ではネズミの血液から尿(原尿)がろ過されていると考えられています。
また、糸球体と尿細管のつながった腎臓の組織は作れるようになっていますが、それから先の尿管や膀胱へとつながり尿を体の外に排泄する方法はまだ開発されていません。この問題をクリアすることも、もう1つの大きな課題です。
目標①:CKDの進行を抑制する治療法の確立
1つ目は、CKD(慢性腎臓病)の進行を抑制し、CKD患者さんの透析導入を遅らせる治療法を開発することです。CKD患者さんの腎臓にヒトiPS細胞から作った健康な腎臓の細胞や組織を移植することで、腎臓の働きを助けてCKDの進行と透析導入を出来る限り遅らせることを目指しています。現在は動物に移植する研究を行っていますが、10年以内にはCKD患者さんに参加していただける研究を開始したいと思っています。
目標②:透析療法に代わる再生腎臓の移植療法の実現
もう1つの目標は、腎不全患者さんの体の中に尿を排泄できる新しい腎臓を作って、透析が必要なくなるようにすることです。上述のとおり、ネズミの体内に尿をろ過する糸球体と尿細管を含む小さな腎臓の組織を作ることには成功しています。しかし、腎不全患者さんの体内に完全な臓器としての腎臓を作るためにはまだまだ解決しないといけない課題が多く残されています。現時点では、いつになったら腎不全患者さんに参加していただける研究を始められるか未定ですが、10年以内には研究開始時期の目途を立てたいと思っています。
しかし、ここ数年の間に研究がかなり進み、上述のようにヒトiPS細胞から小さな腎臓の組織を作ることができるようになりました。実際にCKD患者さんのお役に立てる治療法ができるまで、まだまだ時間がかかることが予想されますが、私たち研究者は毎日全力で研究に取り組んでいますので、今後とも引き続き応援をよろしくお願いいたします。
☞【参考】
京都大学 iPS細胞研究所 CiRA(サイラ)ホームページ
3療法経験者インタビュー 松尾 裕子 さん