2017.12.14 腎移植の基本情報
夫婦間腎移植
監修:筑波大学 医学医療系 消化器外科・臓器移植外科 講師 高野 恵輔 先生
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夫婦間腎移植とは、配偶者から腎臓の提供を受ける生体腎移植のことです。
近年、夫婦間腎移植は増加しており、2021年には658例(全国で行われた生体腎移植件数の42.8%)の夫婦間腎移植が行われてます(*)。
夫婦間腎移植が増加した要因としては、レシピエントの高齢化によって、親がドナーとなることが難しいケースが増えてきたことや、後述する、ABO血液型不適合移植が可能になったこと、HLAの不一致数が多い移植でも、一致している場合と遜色ない移植腎生着率が得られるようになったことなどがあげられます。
◎ABO血液型不適合移植とは
ABO血液型不適合移植とは、ドナーからレシピエントに輸血ができない血液型の組み合わせで行う移植のことです。
ABO血液型不適合移植は、強い拒絶反応が起こるため、以前はほとんど行われていませんでしたが、免疫抑制薬や医療技術の進歩によってこの拒絶反応を抑えることができるようになったため、現在では一般的に行われるようになりました。
日本の生体腎移植におけるABO血液型不適合腎移植の割合は、2000年は13.3%でしたが、2021年には29.2%となっています(*)。
◎HLAとは
HLA(Human Leucocyte Antigen)は、ヒト白血球抗原といい、体内に侵入した異物を認識して排除する目印になっています。
HLAは一対となっており、両親からその半分ずつを受け継ぐため、子供では4つの組み合わせがあり、兄弟姉妹間では4分の1の確率でHLA型がすべて一致しますが、他人同士ですべて一致する確率は、数百人から数万人に1人といわれています。
HLAの不一致数が少ない方が移植腎の生着率はいいとされていますが、免疫抑制薬の進歩により、現在では、HLAの不一致数が多い非血縁者間の移植でも、一致している場合と遜色ない移植腎生着率が得られるようになっています。
夫婦間の生体腎移植には、以下のようなメリットがあると言われています。
◆長い人生において、多くの時間を共有している夫婦にとっては、レシピエント(夫または妻)の生活の質の向上が、ドナー(夫または妻)の生活の質の向上にもつながるため、ドナーにとっても移植の意義が大きい。
◆ドナーとなってくれた人が常に身近にいることで、レシピエントが提供された腎臓を大事にする意識をより強く持つようになり、腎移植後の服薬順守や生活習慣病の予防などの自己管理が徹底される。
◆親から子への移植と異なり、多くの場合はドナーとレシピエントの年齢が近いので、提供される腎臓は、レシピエントの年齢相応の腎機能を持っていることが多い。
生体腎ドナーの安全が保障されていないと、生体腎移植医療は成り立ちません。生体腎ドナーとなるには、さまざまな検査を行い、腎臓の機能はもちろんのこと、他の病気がないかを検査し、腎提供後の健康が損なわれることがないことを確認する必要があります。
加えて、夫婦間腎移植においては、婚姻期間が長いことなどの条件を設けている移植施設もあります。また、夫婦間腎移植に限らず、挙児希望がある女性はドナーの候補から外している移植施設が多いです。
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☞【参考】
動画体験シリーズ「生体腎移植」
腎移植ライフ「腎提供後の生体腎ドナーの自己管理」
ドクターコラム「生体腎ドナーの腎機能と健康」
<出典>
*日本臨床腎移植学会・日本移植学会. 腎移植臨床登録集計報告(2022)移植 2022;57:199-219