ドクターコラム

腎移植で服用する免疫抑制薬

腎移植で服用する免疫抑制薬

秋田大学医学部附属病院 腎疾患先端医療センター 教授 佐藤 滋 先生

秋田大学医学部附属病院 腎疾患先端医療センター 教授
佐藤 滋 先生

腎移植で服用する免疫抑制薬

掲載日:2016/09/29

腎移植に免疫抑制薬が欠かせない理由

病原体などの非自己(自分ではない)物質やがん細胞などの異常細胞を自分ではないと認識して、これを殺滅することで生体を病気から保護する機能が多数集積した機構を、免疫系といいます。細胞・組織・器官が複雑に連携作動します。この機構はウイルスから寄生虫まで広く病原体を感知し、自分自身の健常細胞や組織と区別します。この免疫系があるから、無数の病原体が存在する空間で私達は生きていけるのです。
移植された腎臓は非自己です。自己として認めるのは一卵性双生児間のみです。他人同士はもちろん、親子兄弟姉妹の腎臓でも、すべて非自己です。したがって、免疫系を抑制しなければ、免疫系の作用によって移植腎は攻撃を受け、短期間で機能廃絶します。移植には免疫抑制薬が必須です。

拒絶反応のしくみ


腎移植で服用する免疫抑制薬の種類

現在使用されている経口免疫抑制薬の種類には、カルシニューリン阻害薬(CNI)、代謝拮抗薬、分子標的薬である哺乳類ラパマイシン標的蛋白質阻害薬(mTORi)、副腎皮質ホルモンなどがあります。いずれの種類にも、2剤以上の免疫抑制薬があります。最も頻用されている免疫抑制法は、CNI1剤、代謝拮抗薬1剤、副腎脂質ホルモンであるステロイド1剤の併用療法です。
CNIはT細胞内の細胞シグナル伝達に関与するカルシニューリンを阻害することで、T細胞活性を抑制します。強力な免疫抑制薬ですが、重要な副作用として腎障害があります。代謝拮抗薬は、免疫を活性化しようとするリンパ球の分裂・増殖の際に、DNAの合成を妨げ、リンパ球の増殖を抑制します。主な副作用は消化管症状と骨髄抑制です。mTORiは細胞内での信号伝達を阻害し、Tリンパ球およびBリンパ球を抑制します。頻度の高い副作用として口内炎があります。ステロイド薬は、炎症をしずめ、免疫系を押さえる作用があります。

免疫抑制薬の種類

移植腎を長持ちさせるために重要な服薬アドヒアランス

アドヒアランス

免疫抑制薬の服用は移植前から始まり、移植腎が機能している限り服用し続けなければなりません。服用量は移植後経過とともに減量し、移植後数カ月後にはほぼ維持量となります。
移植後の管理には医療者によるものと、患者さん自身による管理があります。患者さん自身による管理には、服薬管理、体重・血圧・食事などの管理、睡眠不足や過労などを避ける生活習慣の管理などがあります。なかでも、重要なことの一つは服薬管理です。薬剤を定められた時間に決められた量を、間違いなく、また怠ることなく、規則正しく服用し続けることを「服薬アドヒアランス」といいます。かつては遵守・従順を意味する英語コンプライアンス(compliance)と表現していましたが、現在は患者さん自身が理解し、意思決定して治療協力に基づいて内服遵守することを意味するアドヒアランス(adherence)という表現を用います。

「毎食後服用」という指示に対し、しばしば「食事を取らなかったので服用しなかった」という患者さんがいらっしゃいます。患者さんとしては服薬指示に従ったつもりでも、医療者側としては服薬を忘れないために「食後」としているだけで、実は空腹時に服用するほうが薬剤の吸収がよい場合もあります。薬剤を服用すると、その有効成分は腸管から吸収され、血液中に入って薬剤効果を発揮し、多くは肝臓で代謝され薬剤効果が消失していきます。1日1回服用薬は約24時間、3回服用薬は約8時間有効であると理解しましょう。

☞参考:腎移植ライフ「腎移植後の服薬

免疫抑制薬、特にCNIは強力な免疫抑制薬であるとともに、これ自体が腎毒性を有しています。実際、肝臓移植や骨髄移植などで、必要以上の量を長期に服用して腎不全になった方もいます。そのため、服用する直前の薬物血中濃度(トラフ値)を測定し、服用量の調整をしています。私達の施設では、この薬剤の重要性と服薬法を、移植前のみならず移植後も、医療スタッフが指導をする機会があります。また、その薬剤の服用時間も決まっています。これは、外来通院後でも、受診の度にトラフ値を測定しているからです。
免疫抑制薬の服薬管理は、単純に指示されたとおりに服用するだけでなく、薬剤の効果と副作用、怠惰な服用では移植腎機能消失になる可能性が大きくなること、などを理解する必要があります。

薬の量は多すぎても少なすぎてもだめです



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