どのような病院を受診すればいいですか?
どのような病院を受診すればいいですか?
腎臓内科学 教授 丸山 彰一 先生
2017.07.20 教えて!ドクター
薬剤師コラム
東京薬科大学 薬学部 医療実務薬学教室 准教授 竹内 裕紀 先生
東京薬科大学 薬学部 医療実務薬学教室 准教授
竹内 裕紀 先生
掲載日:2016/12/08
腎臓の機能が低下してくると、水分と塩分(ナトリウム)が腎臓(尿)から排泄されにくくなり、体内に水分とナトリウムが過剰に溜まってきてしまいます。ナトリウムは体内で水分を保持する作用があるので、ナトリウムが溜まると、さらに体の中に水分が溜まってきてしまい、浮腫(むくみ)が現れてきます。
症状としては、以下のようなものがあります。
むくみの特徴として、通常、むくんだ箇所を指で数秒間強く押すと圧痕※が残ります。
※圧痕(あっこん):押されたり、圧力を加えられたりしたときにできる跡。
むくみが重篤な場合には、内臓もむくんで、うまく機能しなくなり、心臓に負担をかけたりします。胸やお腹に水が溜まってくると呼吸困難になり、生命にかかわることもあります。
なお、ネフローゼ症候群※の患者さんの場合、多量のタンパク質が尿から出て行ってしまうことで血液中のタンパク質(特にアルブミン)が減少することも、むくみの原因の一つです。血液中のタンパク質は、血管内に水分を保持する作用があり、少なくなると血管の外へ水分が漏れ出し、むくみがでます。
※ネフローゼ症候群:尿中にタンパク質が多く出てしまうことで血液中のタンパク質が減り、むくみなどの症状が現れる疾患。腎臓の疾患などが原因で起こる。
また、「慢性腎臓病の薬物療法:降圧薬 」のコラムでも触れましたが、上記のようにナトリウムは血管内に水分を引き寄せる作用があるため、ナトリウムが溜まると、結果的に血液量が増えて血圧が高くなってしまいます。高血圧がCKDを悪化させる悪循環があることも、降圧薬のコラムでご説明したとおりです。
体内のナトリウム量が多いとむくみや高血圧の原因となりますので、第一に塩分摂取を控えること(減塩)が最も重要になってきます。むくみや高血圧には利尿薬による薬物治療が有効ですが(のちほど説明します)、いくら利尿薬を使用しても、塩分の摂取量が過剰な場合は利尿薬が効かなくなり、むくみも改善しませんし、血圧も下げることができません。
また、体内に水分が過剰に溜まってくると、体重が増え、血圧も高くなります。日ごろから体重や血圧を測定し、自身で状態を確認することも重要です。
薬物治療を行う場合は、利尿薬が使われます。利尿薬は、水分やナトリウムを尿として排泄することを促進します。そのため、CKD患者さんにおいては、主にむくみや高血圧の改善を目的にして利尿薬が用いられます。
利尿薬には様々な種類がありますが、CKD患者さんで主に使用されるお薬は、ループ利尿薬とサイアザイド系利尿薬の2つになります。
1)ループ利尿
利尿作用(尿を排泄する力)が強いため、主にむくみなど、体内に水分やナトリウムが溜まっている状態を改善するために使用されることが多い薬剤です。軽症から重度の腎不全まで、幅広い患者さんで使用することができます。
2)サイアザイド系利尿薬
水分貯留の改善にも使用されますが、血管を拡張する作用もあり、降圧薬として使用されることが多い薬剤です。重度の腎不全患者さんには主にループ利尿薬が用いられますが、利尿作用を強めるためにサイアザイド系利尿薬を併用する場合もあります(*)。降圧薬のARBとの合剤もあるので、サイアザイド系利尿薬とARBの2種類の服用が必要な方では、服用する薬の剤数を減らすことができます。
ループ利尿薬とサイアザイド系利尿薬で最も注意しなければならない副作用は脱水です。食欲不振などの水分摂取が不足する状況や、体の水分が奪われやすい状況でこれらの薬剤を服用すると、体内の水分量が不足して、反対に脱水を起こしてしまいます。脱水になると腎臓の血流が低下し、急激に腎臓の機能を悪化させてしまう場合があります。そのため、利尿薬を飲んでいる方は、夏場などの水分が不足しやすい状況では注意が必要です。特に高齢の方は、脱水になっても喉の渇きを感じにくく、脱水になりやすいので十分に注意して下さい。
また、ループ利尿薬とサイアザイド系利尿薬は、ナトリウムだけでなく、カリウムやマグネシウムの排泄も促進するため、血液中のカリウムやマグネシウムの値が低下する場合があります。反対に尿酸は、尿として排泄される前に体内へ再吸収する働きが促進されるため、血液中の尿酸値が高くなることがあります。血液中のカルシウムに関しては、ループ利尿薬は低下させますが、サイアザイド系利尿薬は上昇させる点が異なります。
利尿薬を使用するときは、このような血液中の物質の変動にも注意が必要なので、医師や薬剤師の指示に従って正しく服用しましょう。
<出典>
* 日本腎臓学会 CKD診療ガイド2012
2017.07.20 教えて!ドクター
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