2017.12.14 腎移植の基本情報
※このインタビューは、東京医科大学八王子医療センター 腎臓病センターより候補となる方をご紹介いただき、ご本人様に応諾いただけた方を対象に実施しました。事前にご了承いただけた範囲で関連する情報を開示しております。記事の内容につきましては患者様から伺ったお話をそのまま掲載しておりますが、あくまで個人の経験と主観に基づくご意見・ご感想です。
Chapter 1: 慢性腎臓病の診断を受けて
----- ご自身の腎臓が悪いことに気付いたのは、いつ頃でしたか。
大城正重さん:
63歳の時です。1週間くらい風邪が治らなかったので、近くの総合病院を受診して詳しく調べてもらったところ、片方の腎臓が萎縮してすでに機能しておらず、慢性腎臓病と呼ばれる腎機能が低下した状態であることが分かりました。
それ以前の健康診断の結果を見返してみると、腎臓の欄に要注意の記載はありましたが、高血圧の治療で通院していた病院でその健康診断の結果を見せた時も、腎臓について特別な注意は受けませんでしたし、症状も全くなかったので、その時まで腎臓が悪いという認識はありませんでした。
----- 慢性腎臓病の原因疾患は何だったのでしょうか。
正重さん:
原因疾患の診断は受けていません。慢性腎臓病と診断された時は、高血圧以外に慢性的な病気はありませんでした。
尾田先生:
原因疾患を明らかにするためには腎生検(腎臓に針を刺して組織の一部を取り出し顕微鏡で評価する検査)が必要です。当院に紹介された時の紹介状を見ると、大城さんの当時の血清クレアチニン値は2.93 mg/dLで、すでに高度に腎機能が低下した状態(CKDステージ4)でした。その状態ですと、腎臓がすでに萎縮していて、針を刺す際に血管を傷つけて大出血を起こすリスクが高くなりますし、無事組織を採取できても、障害が進行しすぎていると原因疾患の特定がしばしば困難になります。また、原因疾患を特定できたとしても、今のところ萎縮した腎臓を元に戻す治療法がありません。それらの理由から、腎生検による原因疾患の特定を行わなかったのだと思います。特に、片方の腎臓が完全に機能していない片腎と言われる状態の場合、一般に腎生検は禁忌とされています。
----- 慢性腎臓病と診断された後、どのようなことに気を付けましたか。
正重さん:
正直なところ、食事に少し気を付けた程度です。自覚症状がなく、体調もそれまでと変わらなかったので、あまり病気を意識していませんでした。食事さえ気を付けていたら、この状態のまま10~20年過ごせるだろうと考えていました。他の病院を受診すれば違う診断結果になるのではないかとも思っていました。
瑠美さん(奥様、ドナー):
私も当時は病気に対する認識が不足していました。腎臓病患者の食事について勉強したつもりでしたが、腎臓に良い食事と、一般的な体に良い食事を混同していました。塩分を減らすことは心がけていましたが、最初のうちは体に良いと思って生野菜を多く食事に取り入れていました。1~2カ月経ってもカリウムの値が下がらず、おかしいと思って調べてみたら、腎臓病患者に生野菜は良くないと分かり、慌てて生野菜を控えるようにしました。
☞ 慢性腎臓病の基礎知識「慢性腎臓病の食事療法(カリウム)」
正重さん:
ただ、タバコはやめました。以前は1日1~1箱半くらい吸っていましたが、慢性腎臓病と診断された頃から禁煙し、現在も吸っていません。
尾田先生:
禁煙は、慢性腎臓病の進行抑制のために大変重要です。喫煙が動脈硬化と関連していることは良く知られていますし、慢性腎臓病の進展とも深く関係しているものと考えられます。
また、手術一般において喫煙は手術合併症のリスクを上昇させ、術後の経過を悪化させることが知られていますので、腎移植手術においても禁煙は非常に重要です。腎移植後も、腎機能が改善するとはいえ、慢性腎臓病であることに変わりはありませんので、移植腎を長持ちさせるためにも禁煙は必要です。
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