2016.12.22 腎移植の基本情報
腎不全保存期の患者さんは、運動が制限される場合もありますが、腎移植後は、移植後6カ月を過ぎ、腎機能が安定すれば、移植腎を圧迫する可能性がある運動や、体に極端な負荷がかかる運動以外であれば、どのような運動でもできるようになります。
積極的に体を動かして、腎移植後の生活を楽しみましょう。
2.腎移植後の食事でもお伝えしたように、腎移植後は腎機能が安定すれば、食事制限がほとんどなくなり、多くの人は体調が良くなることで食欲が増進します。
しかし、太り過ぎは移植した腎臓に負担をかけ、中・長期的に移植腎機能の低下を引き起こします。腎移植後は食事管理と合わせて、自分に合った適度な運動を定期的に行っていくことが大切です。
いくつかのポイントや注意点を押さえて、興味があって楽しく続けられることから始め、徐々に体力をつけていきましょう!
■腎移植後の運動 <ポイント>
以下のようなポイントを押さえて腎移植後の運動を楽しみましょう。
① 運動を始めるきっかけをつかみましょう
運動する習慣が無い場合は、まずはスポーツに限らず、興味があって楽しく続けられることから始めて、徐々に体力をつけていきましょう。
◎楽しく歩くことから始める:犬の散歩、ウィンドウショッピング など
◎家の中でもできることから始める:テレビ・ラジオ体操 など
◎運動強度の低いスポーツから始める:ダーツ、フリスビー、ボウリング など
② 腎移植後にお勧めの運動を知りましょう
腎移植後にお勧めの運動を知り、主治医と相談の上、腎機能や体調に合わせて始めていきましょう。
<腎移植後にお勧めの運動>
◎ストレッチング
筋肉の緊張をゆるめて血行を促し、心身をリラックスさせるのに効果的です。運動の前後に行うことで、運動によるけがを防止したり、痛みを予防したり、疲労回復に役立ちます。
◎有酸素運動(少し速めのウォーキング、軽いジョギング、水泳など)
腎移植後6カ月までは拒絶反応や感染症のリスクが高いため、散歩などの軽い運動に留めるようにしましょう。移植後6カ月以降になれば、通常の運動は可能ですので、少し速めのウォーキングや水泳などを始めていきましょう。
※メッツ:運動強度の単位 「Metabolic equivalents」の略で、安静時を1とし、活動・運動を行ったときに、安静状態の何倍の代謝をしているかを表す。
◎自宅でできる筋力トレーニング
有酸素運動の他に、自宅でできる自重トレーニング(器具を使わず、自分の体重を使って行うトレーニングのこと)もお勧めです。やりすぎに気を付け、筋肉が落ちない程度に筋力トレーニングを行いましょう。
③ 運動を続ける工夫をしましょう
運動は続けることが大切ですので、継続できるように工夫をしましょう。
<運動を続ける工夫>
◎運動を毎日の生活に取り入れる
・近所への買い物は車や自転車を使わずに歩く
・階段のあるところではできるだけ階段を使う
・電車の中ではできるだけ座らずに立つようにする など
◎一緒に運動する仲間をみつけて楽しみながら運動する
運動する仲間がいるとモチベーションも上がります。
◎ノートやスマートフォンのアプリなどに、運動の記録をつける
目標を決めて記録をつけることで、運動の成果を確認することができます。
■腎移植後の運動 <注意点>
以下のようなポイントを押さえて腎移植後の運動を楽しみましょう。
① 移植腎を圧迫する可能性がある運動、体に極端な負荷がかかる運動は行わないようにしましょう
以下のような運動は行わないようにしましょう。
◎移植腎を圧迫する可能性があるスポーツ
格闘技:ボクシング、柔道、空手、合気道、相撲 など
球技 :ラグビー、アメフト、アイスホッケー など
◎極限スポーツ
ウルトラマラソン(42.195㎞を超える道のりを走るマラソン)、トライアスロン、雪山登山など
以下の運動を行う場合は、注意して行うようにしましょう。
サッカー、バスケットボール、サーフィン など
② やりすぎないように気をつけましょう
次の日に筋肉痛がある場合は運動量を若干減らしましょう。
③ こまめに水分補給し、脱水には十分注意しましょう
移植腎は脱水や血圧低下に敏感に反応します。そのため、尿量が減ると腎機能へ影響を与えることもあります。移植後は尿量を確保するために、水分を多く取るように心がけ、のどが乾いたら適宜水分を取るようにしましょう。
④ 極端に寒い、暑い、湿気の多いところでの運動は避けるようにしましょう
ゴルフ、夏山登山など、自然の中で行うスポーツは、夏の炎天下で行うことは避けましょう。
⑤ プールに入る場合は、衛生管理が行き届いているプールを選びましょう
プールに入る場合は、レジオネラ属菌の検査に合格しているプールを選んで入るようにしましょう。プールから上がった後は、体や目をよく洗い、うがいをしましょう。
⑥ 体調がすぐれないときは、すぐに運動を中止しましょう
運動中に体調が悪くなった場合には、すぐに中止し、必要に応じて病院を受診しましょう。
最後に、今回の項はあくまでも移植者の方全般に関する、運動の利点および注意点について述べました。ただ一概に移植者といっても年齢差もありますし、腎臓病以外の他の病気の状態によって一言では語れません。やってもよいスポーツはこの程度のものなのかと、がっかりされた方も少なくないと思います。そのような方には、NPO日本移植者スポーツ協会などに入会されることをお勧めします。
世界移植者スポーツ大会が1978年にイギリスで初開催され、遅れること13年、1991年に日本でも全国移植者スポーツ大会が開催されました。現在も、年に1回開催される大会では、バドミントン、ボウリング、ゴルフ、水泳、陸上競技、卓球、テニス、ダーツ、ユニカール、ローンボウルズなどの競技が行われ、皆さん楽しんでおられます。興味のある方はぜひ連絡してみてください。
☞ 参考:腎移植者インタビュー 山上隆さん