腎センター 教授 相川 厚 先生
2016.02.12 腎移植のドクターインタビュー
腎移植ライフ
東京女子医科大学病院 泌尿器科 臨床教授 石田 英樹 先生
東京女子医科大学病院 泌尿器科 臨床教授 石田 英樹 先生
掲載日:2016/08/25
透析導入前の保存期(CKDステージ3~5)の患者さんの多くは、タンパク質や塩分、カリウムの制限が必要になります(参考:慢性腎臓病の食事療法)。また、透析患者さんの多くは、これらに加えてリンや水分の制限も必要になります。一方で、腎移植後は腎機能が安定すれば、基本的にはそれらの食事制限がほぼ無くなり、ほとんどのものが自由に食べられるようになります。多くの人は体調が良くなることで食欲が増進し、味覚が改善されて食事が美味しく感じられるようになります。
しかし、移植した腎臓を長くもたせるためには、一般的な健康管理と同じく、減塩、低脂肪のバランスのよい食事を取り、太らないように気を付ける必要があります。
また、
1.腎移植後の服薬
にもあるように、移植後は移植腎が機能している限り、免疫抑制薬を毎日服用し続ける必要があります。免疫抑制薬は一部の他の薬や食べ物との飲み合わせで、薬の効果が変化することがありますので、薬の効果に影響を及ぼすものは飲食しないようにする必要があります。
いくつかのポイントや注意点を押さえて、腎移植後の食事を楽しみましょう!
■腎移植後の食事 <ポイント>
完全に自由というわけではないですが、多くの場合、厳しい食事制限からは解放されます。
以下のポイントを押さえましょう。
① バランスのよい食事を取り、食べ過ぎに注意しましょう
腎不全保存期や透析中のような厳しい食事制限はありませんが、移植腎を長持ちさせるためにもバランスのよい食事を取りましょう。
塩分、脂肪分、カロリーの取り過ぎ、食事の時間が不規則など、バランスが悪い食生活は、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、肥満症などの発症要因となります。これらは動脈硬化を進行させ、虚血性心疾患などの重大な病気を引き起こしてしまいます。
移植後は体調が良くなり、水分制限や厳しい食事制限から解放され、味覚も改善されるため、食べ過ぎによる体重増加によって肥満になってしまう人が多くいます。肥満は腎臓に大きな負担がかかるため、太らないように気を付けましょう。
② 塩分の取り過ぎに注意しましょう
塩分は基本的には日本人の食事摂取基準である、男性7.5g/日 未満、女性6.5g/日 未満(*)を目標にしましょう。
高血圧や慢性腎臓病などのガイドラインでは、6g/日 未満を推奨しています。
③ 水分は1日の尿量が1.5~2リットル程度確保できるように取りましょう
移植後は、脱水にならないようにするためにも、適宜水分補給を行い、1日の尿量が1.5~2リットル程度確保できるようにしましょう。
特に、汗をかいたときやなどは、脱水状態を防ぐために、いつもより多めに水分補給をするようにしましょう。
また、移植後はお酒も楽しむことができますが、適正量を守るようにしましょう。過度の飲酒は中性脂肪を増やし、脂質異常症・動脈硬化の原因にもなり、それが合併症の進行につながります。移植後のお酒の適正量は、日本酒なら1合、ビールなら中びん1本、ウイスキーならダブルで1杯、ワインならグラスで2杯程度です。
お酒を飲むときには、酔っぱらって免疫抑制薬などの服用を忘れることがないように注意することも大切です。
■腎移植後の食事 <注意点>
腎移植後の食事においては、以下の注意点を守りましょう。
① 免疫抑制薬の効果に影響を及ぼすものは飲食しないようにしましょう
移植後は、免疫抑制薬や他の薬を服用していますので、薬の効果に影響を及ぼすものは食べたり飲んだりしないようにしましょう。
◎免疫抑制薬や他の薬の効果に影響を及ぼすもの
<柑橘類の一部>
グレープフルーツ、ブンタン、スウィーティー、ダイダイ、ハッサクなど(ジュース、ゼリーなどのお菓子も含む)は食べてはいけません。免疫抑制薬や降圧薬の血液中の濃度が上昇して、副作用が出たり、薬の効果が強く出てしまうことがあります。
オレンジ、みかん、伊予柑、デコポン、かぼす、すだち、レモンなどは、食べても大丈夫です。
<セイヨウオトギリソウを含む食品>
セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)というハーブが含まれる食品(サプリメントやお茶など)は飲食してはいけません。
免疫抑制薬などの血液中の濃度が低下し、拒絶反応が起こりやすくなる可能性があります。
② 生ものを食べる場合には、新鮮なものを食べましょう
免疫抑制薬を服用していますので、感染症を防ぐためにも、生ものを食べるときは新鮮なものを食べるようにしましょう。消化器の感染症にかかると下痢や嘔吐などによって、薬の吸収が妨げられてしまいます。
■腎移植後の糖尿病の食事管理 <ポイント>
透析導入の原因疾患として、現在最も多いのが糖尿病性腎症です。
腎移植後は、腎機能は回復しますが、糖尿病が治るわけではありません。
免疫抑制薬などを服用することにより、また移植腎機能が回復することによって、かえって血糖コントロールが難しくなることもあります。糖尿病の方は特に食事に気を付け、良好な血糖コントロールと体重管理を行うことが重要です。
腎移植後の糖尿病の食事管理では以下のポイントを押さえましょう。
<出典>
* 「日本人の食事摂取基準」策定検討会 日本人の食事摂取基準(2020年版):270
2016.02.12 腎移植のドクターインタビュー
2016.10.31 ドナーインタビュー
2019.12.12 ドナーインタビュー
2018.12.20 教えて!ドクター