糖尿病と糖尿病性腎症の食事療法の違い 糖尿病から糖尿病性腎症を合併した後も、血糖コントロールが最も重要ということは変わりません。そのため、食事療法においても、血糖コントロールは継続しつつ、さらに、腎臓にやさしい食事(腎臓の保護)を加える必要があります。 糖尿病食と糖尿病性腎食の違い <食事療法の目的> ・糖尿病食:血糖コントロール ・糖尿病性腎症食:血糖コントロールと腎臓の保護 <具体的な方針> ・糖尿病食:控えめ ・糖尿病性腎症食:適切に(エネルギーを確保) ・糖尿病食:適正に(高血圧があれば、制限) ・糖尿病性腎症食:基本は制限 ・糖尿病食:適切に ・糖尿病性腎症食:病期に応じた制限 ・糖尿病食:制限なし ・糖尿病性腎症食:病期に応じた制限 糖尿病性腎症の病期別食事療法のポイント 糖尿病性腎症の食事療法は、その進行した病期に合わせた食事が必要になります。腎症前・早期腎症期では、血糖コントロールと血圧コントロール(高血圧がある場合)を目的とした食事療法を継続します。顕性腎症期まで進行した場合、血糖コントロールと血圧コントロールに加え、その腎臓の機能に応じたたんぱく質の制限やカリウムの制限がさらに必要となります(下表)。 ただし、糖尿病性腎症の病期別食事療法は、血糖コントロールの程度やその他の合併症、性別、年齢、身体活動レベルによって、その内容は大きく異なります。そのため、必ず主治医や管理栄養士の指導のもと行いましょう。 食事内容は、実際には、どう変わる? 糖尿病食と糖尿病性腎症食(病期別)の「エネルギーとたんぱく質の摂取量」の違いを具体的(例:160㎝、標準体重:56.3㎏)に示します。 やはり大きく変化するのは、たんぱく質の摂取量となります。第3期(顕性腎症期)から、ある程度のたんぱく制限が必要となり、第4期(腎不全期)からは、本格的なたんぱく制限に移行します。そのため、たんぱく質を制限した分だけ、炭水化物や脂質を利用しエネルギー不足にならないように注意が必要となります。それにより、血糖コントロールが乱れた場合は、薬物療法などを再調整する必要もでてきます。 ただし、糖尿病性腎症の病期別食事療法では、血糖コントロールの状況やその他の合併症などにより、指示エネルギー量やたんぱく制限の程度(強さ)は、大きく異なります。そのため、必ず主治医や管理栄養士の指導のもと行いましょう。 わからないことや不安なことは、どんどん質問しましょう! 糖尿病性腎症の食事療法は、非常に複雑な食事療法となっています。また、その病状や病期の進行により、求められる食事内容も、次々に変化します。決して自分ひとりや家族だけで抱え込まず、主治医や管理栄養士へ積極的に質問し、その都度不安を解消していきましょう。 ☞ 参考:ドクターコラム「糖尿病腎症の診断と治療」「糖尿病のCKD・透析」「糖尿病患者さんの腎移植」
CKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常)① CKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常)① 和歌山県立医科大学 腎臓内科学 教授 重松 隆 先生 和歌山県立医科大学 腎臓内科学 教授 重松 隆 先生 2019.12.05 慢性腎臓病のドクターコラム