教授・センター長 林 松彦 先生
血液浄化・透析センター
教授・センター長 林 松彦 先生
2016.11.24 透析のドクターインタビュー
ドクターインタビュー
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Chapter3: 奈良県立医科大学附属病院におけるCKD治療について
-----奈良県立医科大学附属病院におけるCKD治療についてお聞かせください。
当院では、腎臓内科と泌尿器科、移植医、腎不全看護の資格を持った看護師、管理栄養士などがチームとなってCKD治療に取り組んでいます。CKDステージの3、4の患者さんに対しても、諦めずに、透析や腎移植までの時間を先に延ばす取組みを行っています。
腎代替療法の選択に関してもかなり早い段階から余裕を持ってインフォームドコンセントをしておりますので、残念ながら末期腎不全となってしまった場合にも、慌てることなく、その患者さんに合った腎代替療法を選べるようになっています。
-----こちらの透析部は奈良県の透析に関するセンター的な役割だと思いますが、奈良県全体では、どのくらいの透析患者さんがいらっしゃるのでしょうか。
奈良県全体では3000人以上の透析患者さんを46の施設で診ております。また末期腎不全患者さんの合併症の対応は当院と、奈良県総合医療センター、天理よろづ相談所病院の3つの施設で対応しています。
-----血液透析と腹膜透析に関しては患者さんにどのように治療選択をしてもらっているのでしょうか。
基本的にはその患者さんの生活環境、年齢などによって選んでもらっています。ただ、奈良県は、当院を中心に、どの病院でも腹膜透析に対応できるようになっていますので、腎臓内科の先生もまずは可能であれば腎移植という選択肢を考え、それが難しければ腹膜透析、その上で患者さんの年齢や状況によって血液透析を選択するというように動くことが多いです。そのため、奈良県は腹膜透析と、透析を経ない先行的腎移植も多くなっています。
-----腎移植は特にどのような方に適しているのでしょうか。
腎移植を行う上で一番の問題はドナーがいらっしゃるかということですので、CKDステージの3、4くらいの時点で、まず腎移植の話をさせていただき、献腎移植希望の登録をすることはもちろんですが、生体腎移植を考えた場合、提供いただける方がいないかどうかお聞きするようにしています。特に若い患者さんには積極的に勧めています。それも(透析を経ない)先行的腎移植を積極的に勧めています。そのため、奈良県では先行的腎移植の割合が非常に多くなっています。
-----特に腎移植を勧める年齢層というのはありますか。
どの年齢層でも腎移植が可能なのであれば、移植をお勧めしています。腎臓は尿をつくるだけでなく、骨を丈夫にする活性型ビダミンDを作る働きも持っていますので、生まれつき腎臓が悪い方などは、骨が弱くなって背が伸びなくなることもあり、それによって身体的、精神的障害が起こる可能性もあるため、思春期までの人には特に積極的に勧めています。もちろんその他にも、働いている世代にも勧めますし、最近では、定年後の人で、これから夫婦の時間を楽しもうと考えているご夫婦間の移植もお勧めしています。
-----今後奈良県では、CKD治療においてどのような取組みを行っていかれるのですか。
今後はやはり、若年者で将来腎不全になる可能性がある人を微量アルブミン尿検査でとらえ、早期どころか超早期に発見し、超早期に治療を開始するような取組みを行いたいと思っています。そうすれば末期腎不全に至る人はかなり減ると思います。現在はいい薬剤もありますし、管理栄養士のもとできちんとした食事療法も行うことができますので。
-----今後は末期腎不全に至る人が減る時代になるのでしょうか。
今後はそもそも透析導入にならない治療を目指す時代が来ると思います。
-----最後にこの腎援隊サイトをご覧になっているCKD患者さんにメッセージをいただけますか。
私は、血液透析、腹膜透析、腎移植を約40年診ておりますが、40年前の透析療法はさんたんたるものでした。今現在、透析患者さんが街を歩いていても、その人が透析患者さんだと分かるでしょうか。分かりません。分からないはずです。皆さんそれくらい腎臓以外はすべて健康なのです。透析治療を40年以上受けている人もたくさんいらっしゃいます。20年を超える人は当たり前です。透析患者さんの平均余命も健常人の平均余命にだんだんと近づく時代が来ると思います。
血液透析と腹膜透析は怖くありません。腎不全と診断されても何も心配することはありませんので、先生の話を十分聞いて十分質問し、十分話をして、血液透析や腹膜透析を前向きに考えてもらえれば、前途は洋々としてくると思いますので、皆さん、前向きに頑張ってください。
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