透析ライフ

透析患者さんの食事
~よりよい透析生活のために ④~

透析患者さんの食事
~よりよい透析生活のために ④~

東京医科大学 腎臓内科学分野 主任教授 菅野 義彦 先生

東京医科大学 腎臓内科学分野 主任教授 菅野 義彦 先生

透析患者さんの食事<br/><font size="3">~よりよい透析生活のために ④~</font>

掲載日:2017/08/03

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■食塩は引き続き制限し、水分の取り過ぎを抑える

食べられるたんぱく質の量が増えると、食事から取る食塩量も多くなりがちですが、食塩摂取量の上限は、透析療法を始める前と同じく1日6gとされています(*)

食塩を多く取ると、体が食塩の濃度を薄めようとして水を必要とするので、どうしても喉が渇いて、水分も多く摂取することになります。

食塩→口渇

体に余分な水分が溜まると心臓や血管に負担がかかるため、透析療法を始める前と同様に食塩を適切に管理して、水分の取り過ぎを防ぐことが大切です。特に尿が出なくなってくると透析以外では余分な水分をほとんど取り除けなくなるので、水分を取り過ぎないためにも、より食塩摂取量に注意が必要になります。

☞参考:管理栄養士コラム「食事療法の基本③ 塩分:減塩の工夫

■エネルギーは十分に確保するよう心がける

痩せちゃった
エネルギーは、必要以上に取り過ぎると肥満につながりますが、不足して体がやせ細ってしまうのも大きな問題です。そのため、透析療法を始める前と同様に、十分なエネルギーを食事から確保することも大切です。

エネルギーは、消費する分だけ摂取するのが理想的です。年齢や性別、運動量などによって異なりますが、1日の摂取量は、標準体重(身長(m)×身長(m)×22)1kgあたり30~35kcalが基準です(*1)。例えば、身長160cmの人であれば、標準体重は56.3kgになるので、1日に約1,700kcal~2,000kcalのエネルギー摂取が必要ということになります。
エネルギーの摂取量を推定するのは難しいので、血液透析においては、毎月設定するドライウェイトが減らないようにするのが1つの目安になります。
※ドライウェイト:体の中の余分な水分を取り除いたときの体重。体に余分な水分が溜まっていない状態で、透析後の目標体重になる。

たんぱく質の摂取量が増えるとエネルギーの摂取量も増える傾向にありますが、一方で、リンやカリウム、食塩、水分などの制限があることで食事量が減少してエネルギー不足になることがあります。特に高齢者はエネルギーが不足しがちなので注意が必要です。

☞参考:食事療法を知る「腎臓病食の調理の基本:適正なエネルギーの確保

■必要に応じてカリウムを制限する

透析患者さんによっては、カリウムの制限が必要になることもあります。透析療法を始める前からカリウム制限をする場合もありますが、一般的な透析患者さんでは、尿量が減ってきてカリウムが十分に排泄できなくなり、体に溜まってくるようになると、摂取制限を始めます。

茹でこぼし
カリウムを制限するためには、カリウムの多い果物(バナナやメロンなど)を食べる量を抑えたり、生野菜を食べる際には水にさらすなどして摂取するカリウムを減らす工夫をします。

☞参考:食事療法を知る「腎臓病食の調理の基本:カリウムの制限


ただし、上記の内容は一般的な透析患者さんを想定した基準です。実際の食事療法は、尿がどれくらい出ているか、日ごろの透析で余分な水分や老廃物をどれくらい取り除けているか、といったそれぞれの患者さんの状態によって変わります。近年患者さんが少しずつ増えている在宅血液透析では、週に4回以上、場合によっては毎日透析を行うこともできるため、在宅血液透析患者さんの中には、ほとんど食事制限がない方もいらっしゃいます。
透析患者さんの食事療法は、医師や管理栄養士から個別に指導された内容に基づいて、しっかりと行うことが大切です。

栄養指導

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<出典>
* 日本腎臓学会 慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014年版 日腎会誌 2014; 56: 553‒599


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