ドクターコラム

慢性腎臓病(CKD)と生活習慣(概論) 

慢性腎臓病(CKD)と生活習慣(概論) 

筑波大学 医学医療系 腎臓内科学 教授 山縣 邦弘 先生

筑波大学 医学医療系 腎臓内科学 教授 山縣 邦弘 先生

慢性腎臓病(CKD)と生活習慣(概論) 

掲載日:2016/01/21

慢性腎臓病(CKD)の発症と進行には、生活習慣病やメタボリックシンドロームが深く関わっています。わが国の研究でも、腹部肥満や高血圧、高血糖、脂質異常がある患者さんで、CKDの発症・進行のリスクが高くなることが報告されています。
それらの疾患の根底にあるのは、ご存知の通り、生活習慣の乱れです。バランスを欠いた食事や運動不足、喫煙、過度の飲酒、睡眠不足、ストレスはもちろん、治療中であれば、通院や服薬を怠るといったことも、病気の進行を大きく左右します。
逆にいえば、患者さんの悪い生活習慣を改める、治療中であれば通院、医師の指示を守ることができれば、CKDの発症や重症化を予防できる、治療できるということです。理想を言えば、若い頃から悪い生活習慣を改めることが大切です。悪い生活習慣の改善はCKDが軽症であるほど改善効果は高く、重症であっても、末期腎不全への進行を遅らせることが可能です。

生活習慣改善の治療方針は、患者さんの状態や合併症、CKDの進行度(ステージ)によって決定されます。例えば食事療法の場合、適正な体重に基づくエネルギー制限と、3g/日以上6g/日未満の塩分制限を基本として(*)、CKDステージが上がるに伴い、たんぱく質制限、カリウム制限などが加わります。
詳細についてはここでは割愛しますが、大切なのは、医師が出した治療方針を「具体的な行動目標」に落とし込むことです。例えば、「塩分摂取量1日6g未満」という方針に対して、「汁物は週3回にする」といった「努力すれば実行できそうな、具体的な項目」に置き換えることが重要です。暮らしもさまざまですから、患者さんの生活状況に照らしあわせながら、現実的な方策を一緒に決定していきます。

CKD治療の鍵は、患者さん自身が意義を理解し、「これまでの行動と生活様式を変えてみせる」という意欲を持つことです。習慣化してしまった自分の行動を変えるのは決して簡単なことではありませんが、医師や医療スタッフと一緒に「新たな習慣」を築いていただきたいと思います。

☞ 参考:山縣先生が登場するアニメ「慢性腎臓病の進行を抑えよう!

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<出典>
*日本腎臓学会 編. 慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版:1-2


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