腎・膠原病・内分泌内科学分野 教授 田中 哲洋 先生
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教えて!ドクター
掲載日:2023/04/01
蛋白尿とは、尿中に基準値以上のタンパク質が排泄されている状態のことです。
尿は、体の中の老廃物や余分な水分を排泄したものですが、病気のない方は、検尿で蛋白尿が陽性になるほど尿中にタンパク質がもれ出すことは通常ありません。ただし、以下のような場合は、一時的に蛋白尿が出ることがあります。
● 激しい運動の後
● 発熱時
● 起立性蛋白尿(立ったり、腰を曲げたりするときだけ出る蛋白尿)
● 水分不足のとき(濃縮尿)
など
蛋白尿が一時的でなく、3カ月以上持続的に出ている場合は、慢性腎臓病(CKD)と診断されます(*1)。蛋白尿が陽性の場合、将来的に腎機能が低下していく兆候であることが多く、「2+」「3+」といった蛋白尿の程度が強くなるほど腎移植や透析が必要になる危険性が高くなります。
☞ 参考:教えて!ドクター「蛋白尿(たんぱくにょう)「2+」「3+」は、どのくらい悪いのですか?」
ただし、早い段階から適切な診断のもとに治療を受けることで、蛋白尿を治癒させ、腎機能障害の危険性をなくすことも可能です。蛋白尿が出ていると言われた場合、まずは近くの内科などの病院を受診しましょう。
蛋白尿の原因はさまざまです。腎臓そのものに原因がある慢性糸球体腎炎も多いのですが、遺伝性の腎臓病の場合もあります。糖尿病性腎症や腎硬化症などが原因の場合も多く、蛋白尿がきっかけで糖尿病や高血圧などの全身性の病気が見つかることもあります。血液(骨髄)の病気などで、異常な蛋白が体内で作られたために蛋白尿が現れることもあり、重い病気の初期徴候である場合もあります。蛋白尿がある場合は、主治医に相談して、腎臓内科を紹介してもらうことをお勧めします。
また、蛋白尿が±でも、血尿(けつにょう)が出ている場合などは、IgA腎症に代表される進行性の慢性糸球体腎炎の可能性が高く、腎臓専門医による診療が必要ですので(*2)、できるだけ早く腎臓内科を受診しましょう。
☞ 参考:教えて!ドクター「慢性腎臓病を治療するためには、どのような病院を受診すればいいですか?」
<出典>
*1 日本腎臓学会 編. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023:3-4
*2 日本腎臓学会 編. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023:17-19
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