腎臓の機能を長くもたせるには?

薬物療法、生活習慣改善、食事療法、運動療法などの保存療法を行います。

慢性腎臓病の食事療法

監修:東京医科大学 腎臓内科学分野 主任教授 菅野 義彦 先生

慢性腎臓病の食事療法

慢性腎臓病の食事療法では、主にたんぱく質、食塩、エネルギー、カリウムの摂取量の調節を行います。
摂取量の調整
具体的な摂取量は、日本腎臓学会が定めた「慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014年版」を基本として考えます。
食事療法基準
ただし、食事療法は、合併している病気の状態や性別、年齢、身体活動レベルといった要素によって内容が大きく変わるので、必ず主治医や管理栄養士の指導のもとに行いましょう。

たんぱく質 ~摂取不足に注意しながら制限~

肉や魚、卵、豆類、乳製品などに多く含まれ、主に身体を構成するために使用される栄養素です。

タンパク質

<慢性腎臓病になると>
必要以上に摂取したたんぱく質は、通常、老廃物として腎臓から尿中に排泄されます。しかし、腎機能が低下して老廃物が十分に排泄されなくなると、血液中に老廃物が蓄積して尿毒症になりやすくなります。また、蓄積した老廃物が腎臓に負担をかけて、更なる腎機能の低下を招きます。
そのため、たんぱく質の摂取は、慢性腎臓病のステージ(病期)に応じて適正な量に制限する必要があります。

<食事療法の基準>
たんぱく質の標準的な摂取基準は、以下のように定められています。
たんぱく質の標準摂取基準
この場合の体重は、基本的に標準体重が用いられます。
標準体重=身長(m)×身長(m)×22
(例)身長165㎝の方の場合:1.65(m)×1.65(m)×22 ≒ 59.9㎏
※ 22は、標準的な体格を示すBMI(Body Mass Index)の値。 BMIの計算式:体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}


参考までに、身長ごとの標準体重と、標準体重に基づく1日あたりのたんぱく質摂取基準量を以下にまとめました。
たんぱく質一日あたり 【参考】日本人の成人が1日に摂取する平均たんぱく質量 男性:76.7g 女性:64.9g(*1)

ただし、必要以上にたんぱく質を制限しすぎると、筋肉量の減少などのさまざまな弊害が起きる可能性があります。たんぱく質の制限は、主治医や管理栄養士の指導に基づいて適切に行いましょう。

☞参考「腎臓病食の調理の基本:タンパク質の制限

食塩 ~基準内に収まるように制限~

食塩中に多く含まれるナトリウム(Na)は、身体の水分量や血圧の調節などにかかわっており、欠かすことのできないミネラルです。

塩

<慢性腎臓病になると>
血管 腎機能が低下すると、余分なナトリウムが十分に尿中へ排泄されなくなり、血液中のナトリウム濃度が高くなります。高くなったナトリウム濃度を下げるために身体の中の水分が血管内に移動すると、血液量が増えて血圧が上がり、高血圧になりやすくなります。また、水分が血管などから漏れ出して浮腫(むくみ)が起きやすくなります。
更に、身体の中の水分が血管内に移動すると、のどが渇くようになり、水分を多くとってしまうことでこれらの症状が助長されます。

このようなことを防ぐため、摂取する塩分を適正に制限する必要があります。

<食事療法の基準>
食塩は、慢性腎臓病の病期(ステージ)にかかわらず、3g/日以上、6g/日未満が基準とされています。
厚生労働省の示す「日本人の食事摂取基準(2015年版)」 (*2)では、日本人の食塩の摂取量の目標を、成人男性:8g/日未満、成人女性:7g/日未満としておりますが、慢性腎臓病患者さんの場合は更に制限する必要があります。
【参考】日本人の成人が1日に摂取する平均食塩相当量 男性:10.8g 女性:9.1g(*1)

ただし、慢性腎臓病のステージ1~2で高血圧や体液過剰を伴わない場合には、上記の日本人の食塩の摂取量の目標(成人男性:8g/日未満、成人女性:7g/日未満)にまで、上限が緩和されることもあります。

☞参考「腎臓病食の調理の基本:食塩の制限

エネルギー ~十分に確保~

生命活動に必要不可欠なものであり、主に3大栄養素である炭水化物、脂質、たんぱく質が分解されることによって得られます。エネルギー量の多い食品には、穀類や砂糖、油脂類などがあります。

エネルギー

<慢性腎臓病になると>
エネルギーは生命活動の源なので、十分な量を必要とします。しかし、たんぱく質を制限すると、食事全体の量が減り、それに伴ってエネルギーも不足しがちになります。エネルギーが不足すると、身体は筋肉などのたんぱく質を分解して不足分を補おうとします。その結果、血液中の老廃物が増え、たんぱく質を摂り過ぎたときと同じように、腎臓への負担が増えます。
このようなことを防ぐため、たんぱく質の摂取を制限しながらも、エネルギーは不足することなく、必要量を十分に確保することが非常に重要です。ただし、普通のお米やパンなどでエネルギーを補充しようとすると、同時にたんぱく質も多く摂取してしまうため、この場合にはふさわしくありません。エネルギーを確保するためには、たんぱく質を含まず、効率良くエネルギーを補える砂糖や油を料理にうまく利用するようにしましょう。

<食事療法の基準>
基準とするエネルギーの摂取量は、性別、年齢、身体活動レベルなどを考慮した上で、基本的には25~35 kcal/kg体重/日の範囲内で個別に設定されます。

身長ごとに、標準体重と1日あたりのエネルギー摂取基準量を以下にまとめました。
エネルギー一日あたり 【参考】日本人の成人が1日に摂取する平均エネルギー量 男性:2,134kcal 女性:1,720kcal(*1)

ただし、設定した基準摂取量は、体重や検査値などの推移によって適宜変更される必要があります。

☞参考「腎臓病食の調理の基本:適正なエネルギーの確保

カリウム ~必要に応じて制限~

ナトリウム同様、欠かすことのできないミネラルの1つで、主に神経の情報伝達、筋肉の弛緩の調節などに関与しています。果物、芋、海藻、野菜類などに多く含まれています。

カリウム

<慢性腎臓病になると>
腎機能が低下すると、体内のカリウムが尿中に排泄されにくくなり、高カリウム血症になることがあります。高カリウム血症になると、悪心・嘔吐などの胃腸症状、しびれ、筋力の低下(脱力感)などの神経・筋肉症状、不整脈などがあらわれ、重度になると不整脈の中でも生命にかかわる心室細動を起こすこともあります。そのため、血液中のカリウム値には注意が必要です。
ただし、カリウム値の上昇には、一部の降圧薬の副作用や、心不全・糖尿病の合併など、様々な要因があると考えられているので、カリウムの摂取制限は、患者さんごとに必要性が判断されます。

<食事療法の基準>
カリウムはステージ3aまでは制限せず、ステージ3bでは2,000mg/日以下、ステージ4~5では1,500mg/日以下が目標とされます。
【参考】日本人の成人が1日に摂取する平均カリウム量 男性:2,382mg、女性:2,256mg(*1)

たんぱく質を多く含む食品にはカリウムも多く含まれる傾向があるので、たんぱく質の制限は、同時にある程度のカリウム制限にもなります。

☞参考「腎臓病食の調理の基本:カリウムの制限


食事療法は、患者さんそれぞれの状態に合わせた適切な内容で行うことが重要です。具体的な食事の内容など、必ず主治医や管理栄養士と相談し、指導を受けながら実行しましょう。

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<出典>
*1 平成29年 国民健康・栄養調査 (厚生労働省)
(https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000351576.pdf)
*2 日本人の食事摂取基準(2015年版)(厚生労働省)
(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000041824.html)


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