ドクターコラム

糖尿病腎症の診断と治療

糖尿病腎症の診断と治療

新潟大学 保健管理センター 教授・所長 鈴木 芳樹 先生

新潟大学 保健管理センター 教授・所長 鈴木 芳樹 先生

糖尿病腎症の診断と治療

掲載日:2016/08/25

治療の要点

基本的な治療は血糖値と血圧の管理で、血清脂質値の管理、食事療法・運動療法などの生活指導なども重要です。要点は以下の通りです。

●血糖値の管理
血糖値の目標は空腹時130mg/dL未満、食後2時間値180mg/dL未満ですが、採血前1~2カ月間の血糖状態を反映するHbA1c値を重視します。理想的には6.0%未満、一般的には7.0%未満を目標としますが(*)、高齢者で認知症や合併症などがある場合は、重症低血糖を予防するために、目標値をこれより高くする場合があります。
治療は食事療法と運動療法が基本で、必要に応じて経口血糖降下薬やインスリン注射などを使用します。最近はその種類が飛躍的に増加していますが、腎機能の程度によっては使用できない薬剤があるので、腎症の病期を把握したうえで、主治医の先生と相談して下さい。

食事・運動・薬物療法

●血圧の管理
血圧の目標は130/80mmHg未満ですが(*)、高齢者の場合はやや高目にする場合があります。
治療には、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)を用いることが推奨されています。また、必要に応じてカルシウム拮抗薬や利尿薬などを併用します。

☞参考:慢性腎臓病の薬物療法:降圧薬

●血清脂質値の管理
血清脂質値の代表としてLDL-コレステロール値を用いることが多く、これを120mg/dL未満、場合によっては100mg/dL未満を目標にします(*)
治療には、多くの場合、スタチン系の高脂血症治療薬を使用します。

●食事療法
血糖管理のためのエネルギー制限に加えて、腎症ではたんぱく質と食塩の摂取量も制限します。その制限の程度は、病期によって異なりますが、個々の患者さんの病態によっても異なりますので、主治医の先生と相談して下さい。食事療法の実際には、管理栄養士による継続的な栄養指導が有効ですので、指導を受けられることをお勧めします。
また、必要に応じて、カリウムやリンなどの制限をすることがあります。

☞参考:糖尿病性腎症の食事療法

●運動療法
食事療法と同様に運動療法も重要ですが、運動療法で消費されるエネルギーは意外と少ないことに注意する必要があります。筋肉量や筋力を維持するために適度な運動を継続することが必要ですが、腎症が進行した場合は運動量を少なくすることがあります。
また、増殖網膜症による眼底出血がある場合など、運動療法を禁止あるいは制限することもあるので、主治医の先生と相談して下さい。
※ 増殖網膜症:糖尿病網膜症が進行して、網膜の血流が不足し、新生血管ができた状態。新生血管は破れやすいため、血圧上昇や衝撃によって眼底出血を起こしやすくなる。

☞ 参考:ドクターコラム「糖尿病のCKD・透析」「糖尿病患者さんの腎移植

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<出典>
* 日本糖尿病学会 糖尿病治療ガイド2016-2017


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