どのような病院を受診すればいいですか?
どのような病院を受診すればいいですか?
腎臓内科学 教授 丸山 彰一 先生
2017.07.20 教えて!ドクター
管理栄養士コラム
川崎医療福祉大学 医療技術学部 臨床栄養学科 特任准教授 市川 和子 先生
川崎医療福祉大学 医療技術学部 臨床栄養学科 特任准教授
市川 和子 先生
掲載日:2016/10/31
腎臓は体内のミネラル代謝の調節に大きな役割を果たしています。ミネラルは私たちの体に欠かせない元素で、糖質、脂質、タンパク質、ビタミンと並ぶ、五大栄養素の1つです。
人の体に必要なミネラルには、亜鉛、カリウム、カルシウム、クロム、セレン、鉄、銅、ナトリウム、マンガン、モリブデン、ヨウ素、リンなどがあり、それぞれが骨や歯の形成、神経伝達、体内のイオンの調節などの重要な役割を担っています。
リンとは
リンは、カルシウムの次に体内に多く存在するミネラルです。リンは骨の形成や細胞のエネルギー代謝に不可欠な元素で、約85%がカルシウムと結合して骨や歯になり、残りは筋肉や脳、神経などに存在しています。
リンは肉類や魚類、卵黄などのたんぱく質の多い食品に含まれています。
慢性腎臓病(CKD)とリンの関係
リンは主に食事によって体内に取りこまれ、その内の約半分が腸管から吸収され、尿中に排泄されます。腎臓の機能が低下するとリンを尿中に排泄することが難しくなり、徐々に体内に溜まって高リン血症を引き起こします。血液中のリン濃度が高くなると、リン利尿を促進するホルモンが分泌されてビタミンDの活性化が障害され、副甲状腺ホルモン※1が過剰に分泌されるようになり、二次性副甲状腺機能亢進症※2という病態を引き起こします。
この異常は、CKDステージG3aにはすでに始まっていますが、リン利尿を促進するホルモンや、副甲状腺ホルモンの作用によってリンは排泄されるため、実際に血清リン値が上昇してくるのは、ステージG4以降です(*1)。
☞参考:CKDの重症度
血清リン値が高い状態が続くと、骨折や、血管の壁の石灰化が起こり、心血管疾患や脳血管疾患のリスクが高くなります。
そのため、CKD患者さんは症状が無くても日頃から血清リン値に注意を払い、異常が出た場合には、食事療法やリン吸着薬の服用により、リンの値を基準値内にコントロールすることが必要です。まずは食事療法を行い、血清リン値が基準値の上限を超えた場合には、リン吸着薬の使用を開始します。
※1 副甲状腺ホルモン:
副甲状腺から分泌されるホルモンで、血液中のカルシウム濃度を維持する作用を持つ。骨から血液中にカルシウムを放出させ、腎臓に作用してリンの再吸収を抑制し、カルシウムの再吸収を促す。
※2 二次性副甲状腺機能亢進症:
慢性腎不全などの副甲状腺以外の病気が原因で、副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されて、血液中のカルシウム濃度が必要以上に高くなる病態。血液中のカルシウム濃度が高くなると、さまざまな場所へカルシウムが沈着し、動脈硬化や心血管疾患、関節炎などを引き起こす。
☞参考:透析患者さんの合併症②:骨・ミネラル代謝異常
毎日の食事で血清リン値を抑えるには
リンの管理は血清リン値が基準値を超える前から、食事療法によって始めることが望ましいとされています(*1)。
リンはたんぱく質が豊富な食品に含まれているため、たんぱく質を制限することで同時にリンの過剰摂取は防げます。そのため、CKDステージG3~4の患者さんの場合は、極端にリン含量の多い食品を摂取しない限り、低たんぱく食が実施できていれば、高リン血症を恐れることはありません(*2)。
血清リン値を抑えるための食事療法のポイントを押さえて、毎日の食事を楽しみましょう。
① 同じ食品の中でもリンの少ないものを選ぶ
リンは、肉や魚、卵、乳製品などのたんぱく質の多い食品に含まれていますが、同じ食品の中でもリンの含量が高いものと低いものがあるため、選び方に気を付ければ、リンの摂取量を減らすことができます(*3)。
<肉類>
牛肉、豚肉、鶏肉の中でも、レバーはリンが多く含まれている部位です。ヒレなどの部位と同様に摂取量に注意しましょう。
日本食品標準成分表2015年版(七訂)より
<魚介類>
魚はリンが多い食材ですが、中でも骨や内臓ごと食べる小魚にはリンが多く含まれています。食べる量を控えるようにしましょう。
日本食品標準成分表2015年版(七訂)より
<卵>
卵の中でも、リンは卵黄に多く含まれています。卵白はリンが少なく良質なたんぱく質を摂ることができます。
日本食品標準成分表2015年版(七訂)より
<乳製品>
乳製品も多くのリンを含みます。摂り過ぎには注意しましょう。
日本食品標準成分表2015年版(七訂)より
<米>
米にもリンが多く含まれています。特に外周に多く含まれているため、精米度を上げると、リンの値を下げることができます。
日本食品標準成分表2015年版(七訂)より
② リンを減らすための調理法の工夫をする
リンには自然食品に含まれる有機リンと、食品添加物にリン酸塩として存在する無機リンがあります。有機リンの吸収率は40~60%であるのに対し、無機リンの吸収率は90%以上に上り(*4)、高リン血症に大きく関与します。
無機リンは、ハムやソーセージなどの食肉製品、麺類、瓶詰、缶詰、清涼飲料水などに添加されています。そのため、このような食品を好んで食べていると、たんぱく質の摂取量に関わらず、多量のリンを摂ってしまうため、注意が必要です。
このような食品を食べる際には一工夫して、リンを減らすようにしましょう。
<リンを減らすための調理の工夫>
◎食品添加物はお湯に通すと短時間で溶け出すので、加工食品は一度茹でて、そのお湯は捨てるようにしましょう。
◎インスタント麺を茹でたお湯は使用しないようにしましょう。スープは別に作るようにしましょう。
◎魚肉・練り製品は下茹でしてから使用するようにしましょう。
☞ 【参考】
管理栄養士コラム「食事療法の基本① タンパク質」「食事療法の基本③ 塩分」
<出典>
*1 日本腎臓学会 CKD診療ガイド2012
*2 加藤明彦,市川和子(編)(2011)腎不全医療における栄養管理の基礎知識 日本メディカルセンター
*3 日本食品標準成分表2015年版(七訂)
*4 Sullivan CM, et al. Phosphorus--containing food additives and the accuracy of nutrient databases:implications for renal patients. J Ren Nutr 2007;17:350-354
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