~よりよい透析生活のために ②~
よりよい透析生活のために ②
2016.10.31 透析ライフ
透析療法を続けていると、さまざまな合併症が起こることがあります。透析患者さんに起きやすい合併症について説明します。
監修:久留米大学医学部 内科学講座 腎臓内科部門 主任教授 深水 圭 先生
☞ 「病院を探そう!」久留米大学病院のご紹介ページ
腎臓は、骨に関わるミネラルであるリンとカルシウムの代謝調節に重要な役割を果たしています。腎機能が低下している透析患者さんは、リンがうまく排泄されず、また腸管からのカルシウム吸収も不足するために、骨がもろくなったり、血管などの組織が石灰化したりして、さまざまな問題が起きることがあります。 このような病態は「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)」と呼ばれており、透析導入前からの管理も必要と考えられています(*1)。
健康な人の骨は、つくるスピード(骨形成)と壊すスピード(骨吸収)が釣り合って、一定の骨密度を保っています。
腎機能が低下していてリンがうまく管理できない場合、骨がもろくなりやすいだけでなく、体のさまざまな箇所に問題が生じる可能性もあります。
前述した二次性副甲状腺機能亢進症になると、血液中のカルシウムが過剰になりますが、リンの排泄がうまくできずにリンも過剰な状態にあるため、カルシウムもリンも高い状態になります。すると、血液中で余分なカルシウムとリンが結合して、リン酸カルシウムという骨や歯のもととなる結晶がつくられます。
このようにしてつくられたリン酸カルシウムは、関節や筋肉、皮膚、肺、心臓そして血管など全身に沈着します。これが異所性石灰化です。
異所性石灰化が起こると、関節や筋肉では痛み、皮膚ではかゆみ、肺では呼吸不全、心臓では弁膜症、そして血管では動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞といったさまざまな病変があらわれることがあります。
以上のように、血液中のリン、カルシウム、PTHの管理は透析患者さんにとって重要なため、定期的に検査を行って、一定範囲内に収まっているか確認します。透析患者さんの実際の治療では、リン、カルシウム、PTHの順に優先してコントロールすることが推奨されています(*1)。
リン、カルシウム、PTHを上記の目標値内に管理するために、以下のような治療を行います。
3.外科的治療
二次性副甲状腺機能亢進症になると、副甲状腺が肥大して、PTHが過剰に分泌され続けます。薬物療法で十分な効果が得られない場合は、副甲状腺に注射器でアルコールを注入してPTHの分泌を抑えたり、手術で副甲状腺を摘出したりします。
前述のとおり、CKD-BMDは透析導入前から始まっています。そのため、透析導入前でも、食事療法や炭酸カルシウム、活性型ビタミンD3製剤の飲み薬などで、リンやカルシウムの管理を行う場合があります。
☞ 「病院を探そう!」久留米大学病院のご紹介ページ
<出典>
*1 日本透析医学会 慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン 日本透析医学会雑誌45:301-356,2012
*2 日本透析医学会 統計調査委員会 図説 わが国の慢性透析療法の現況(2014年12月31日現在)
2016.10.31 透析ライフ
2016.12.22 透析のアニメ
2019.06.20 透析の基本情報
2017.11.29 透析のドクターコラム