ドクターインタビュー

大阪大学大学院医学系研究科
腎臓内科学 教授

大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学 教授

猪阪 善隆 先生

猪阪 善隆 <font size="4">先生</font>

大阪大学医学部附属病院 腎臓内科では、腎臓に関する全ての疾患に対して最新のエビデンスに基づいた診療がされており、慢性腎臓病(CKD)の治療においては、服薬治療と食事療法による"透析に至らない"ことを目標とした集学的治療が行なわれています。また、末期腎不全における「腎代替療法選択外来」を設け、血液透析、CAPD、泌尿器科と連携した腎移植治療と、すべての腎代替療法に対応されています。
長年、慢性腎臓病治療に携わってこられた、大阪大学医学部附属病院 腎臓内科 教授の猪阪善隆先生に、慢性腎臓病の進行抑制と治療、末期腎不全治療における腎代替療法の選択について、そして大阪大学医学部附属病院 腎臓内科における慢性腎臓病治療への取組みについてお聞きしました。

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取材日:2015/10/27

目次

Chapter 1: 慢性腎臓病(CKD)の進行を抑えるには

-----現在、全国には1330万人の慢性腎臓病(CKD)の患者さんがいると言われていますが、どのくらいの腎機能になった段階で、専門医を受診した方がいいのでしょうか。

CKDの初期には自覚症状がありません。自覚症状が無い段階で発見するには、尿検査と血液検査を行うことが必要です。血液検査により分かる血清クレアチニンの値と年齢、性別から、eGFR(推算糸球体濾過量)を計算することができます。
eGFRは、腎臓が老廃物を尿へ排泄する能力がどのくらいあるかということを示しており、数値が低いほど腎臓の働きが悪いということになります。例えばeGFRが60なら、腎臓は約60%しか働いていないという状態です。
年齢にもよりますが、40代くらいの比較的若い方であれば、eGFRが60未満、50代の方であれば50、もう少し高齢の方であれば40くらいになってしまった場合には、早めに専門医を受診された方がいいと思います。

-----CKDの進行リスクが高い人というのはどのような人ですか。

糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病がある人は、CKDが進行しやすい傾向があります。

-----CKDは治るのでしょうか。

腎機能が一時的に上向くことはありますが、基本的にはある一定のレベルまで悪化してしまうと治らないと考えていただいた方がいいと思います。そのため、できる限り進行のスピードを抑えることが治療の目的になります。

-----治らないにしても、やや進行したCKDステージ3b(GFR 30~44mL/分/1.73m²:腎機能の中等度~高度低下)以降になってしまった場合でも、進行を抑えることはできるのでしょうか。

健常人でも加齢と共に腎機能は低下していくのですが、CKDステージ3b以降の方でも、血圧をコントロールしたり、尿蛋白を抑えたり、脂質異常のコントロールをしたりすることによって、健常人の腎機能低下のスピードにほぼ近い形に進行を抑えることはできると思います。

-----CKDの治療の進め方、ポイントなどを教えていただけますでしょうか。

まず、原因となる疾患に対して治療を行うことが一番大切です。例えば糖尿病がベースにあるのであれば糖尿病に対する治療、高血圧がベースにあるのであれば高血圧に対する治療、あるいはそれに伴う生活習慣の改善が必要です。

-----まずは原因となる疾患を治療することが大切なのですね。慢性腎臓病の進行を抑えるための生活習慣改善を行う上で、注意すべきポイントはありますか。

猪阪先生1

例えば高血圧に対する治療を行う場合、レニン‐アンジオテンシン系の高血圧治療薬は腎臓病の進展を抑制するとされていますが、そのような薬剤を服用していても、生活習慣の改善、例えば塩分を制限するというようなことが伴わないと、その効果が半減することがあります。日本人は比較的塩分摂取量が多いので注意が必要です。ご自身が認識している以上に塩分を摂取してしまっていることもありますので、主治医と相談しながら、生活習慣の改善がきちんとできているかということを定期的にチェックしていくことが必要だと思います。

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