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Chapter 2：　腎移植医療の現状と今後の課題

-----ここからは、日本における腎移植の現状についてお聞きしたいのですが、まずは献腎移植の状況について教えてください。

2014年の献腎移植件数は、心停止下が42件、脳死下が85件（＊1）でした。待機年数は成人で平均約16年（＊2）です。実際に献腎移植手術を受けられた人の中には20年を超えている人もいます。
※2021年においては、心停止下：19、脳死下：106件（＊3）でした。献腎移植の待機期間は、2021年末時点で平均約14年8カ月（小児を含む）です（＊4）。

-----今お聞きしたように、待機期間が非常に長いですが、献腎移植希望の登録後にはどのように健康管理や心構えをしておけばよいでしょうか。

とにかく腎不全以外の病気にならないように健康管理をしてほしいです。リン、カルシウムの調整や、動脈硬化が進まないような食事、血圧管理などです。加えてがん検診なども定期的に受けてほしいですね。また、もし合併症があるのであれば、早めに治療をしておくことも大切です。いつかは電話が来ると思って健康管理をしておいてほしいと思います。
ただ、待機期間が平均16年という事実もありますので、もし、生体腎ドナーとなっていただける方がいらっしゃるのであれば、透析による合併症が進行する前に、生体腎移植を検討されるのも1つの方法だと思います。

-----次に、生体腎移植についてお聞きしたいのですが、移植を受ける病院はどのように探せばいいのでしょうか。

通院している透析施設の先生に紹介してもらうのも1つの方法ですし、それが難しければ、腎臓内科や腎臓移植外科がある病院を探して問い合わせるのがいいと思います。もちろん移植外科という名前がついていなくても腎移植を行っている病院も多いので、そのような病院をインターネットなどで探すのもいいでしょう。ドナーやレシピエントの基準を満たすことは、そこまで難しいことではありません。腎移植は敷居が高いと考えずに、まずは移植を行っている病院に相談してみてください。
また、腎移植に関する市民フォーラムなども全国各地で行われていると思いますので、そのような場所に参加して移植施設の情報を得るのも1つの方法だと思います。

-----最近の生体腎移植の治療成績について教えてください。

日本移植学会の報告では、2000年以降における生体腎移植の移植後10年の生着率は84.9%（＊1）となっています。当院における成績は生体腎移植の場合、10年で90％くらいとなっています。
※2010～2020年に行われた生体腎移植では、移植後10年の生着率は2021年時点で81.1％（＊3）です。

-----移植腎を長持ちさせるためにレシピエントができること、しなければならないことはどのようなことですか。

基本的なことになりますが、服薬順守、合併症の発症予防、生活習慣病予防などです。毎日決められた時間に決められた量の薬を飲む、減塩、低脂肪の食事を心がける、適度な運動を行う、移植後のフォローアップ診察はもちろんのこと、がん検診などの定期的な検診を受けて健康管理を行う、ということが大切です。

-----生体腎ドナーとなられた方は、腎提供後どのような健康管理をしていけばいいのでしょうか。

生体腎ドナーに関しては、日本移植学会、日本臨床腎移植学会による生体腎移植のドナーガイドラインもあり、そもそもそこから外れる方がドナーとなることはありません。さまざまな術前検査によって、腎提供が可能と判断された場合は、ドナーとなられる方も、手術を行う我々も、安心して進めることができるようになっています。
ただし、腎提供後は、健康チェックも兼ねて、1年に1回は必ずドナー外来を受診し、長期に渡って腎機能のチェックを行うことがとても大切です。腎提供を受けてレシピエントが元気になることももちろん大切ですが、それ以上にドナーとなられた方がいつまでも元気でいることが大切です。

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＜出典＞
＊1 日本臨床腎移植学会・日本移植学会 腎移植臨床登録集計報告（2015） 移植 2015;53:138-155
＊2 日本臓器移植ネットワーク NEWS LETTER 19,2015
＊3 日本臨床腎移植学会・日本移植学会 腎移植臨床登録集計報告（2022） 移植 2022;53:89-108
＊4 日本臓器移植ネットワーク NEWS LETTER 26,2022