ドクターインタビュー

藤田医科大学病院

臓器移植科 剣持 敬 先生
腎臓内科  稲熊 大城 先生

藤田医科大学病院

臓器移植科 剣持 敬 先生  
腎臓内科  稲熊 大城 先生

<font size="3">臓器移植科 教授 </font>剣持 敬 <font size="4">先生</font><br/><font size="3">腎臓内科 教授 </font>稲熊 大城 <font size="4">先生</font>

目次

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Chapter 4: より良い腎移植医療の実現に向けて

-----臓器移植科と腎臓内科の連携の効果について、どのように感じていますか。

剣持先生
お互いの専門性を活かした良い連携ができていると思います。腎臓内科で行っている慢性腎臓病の原因疾患の特定や、病態の詳細な分析は、腎移植においても非常に重要です。

稲熊先生
同じ原因疾患であっても、病態によって腎機能を維持できる期間は変わってきます。患者さんに応じて移植の準備開始のタイミングをアドバイスするなど、さらなるサポートもできるのではないかと考えています。
また、前述のとおり、腎移植を受けた患者さんは慢性腎臓病であることに変わりはありません。慢性腎臓病や、その合併症である高血圧や腎性貧血骨・ミネラル代謝異常などの診療は腎臓内科の専門分野なので、移植後についても、それらの管理を通じて腎移植に貢献していきたいと思います。

剣持先生
腎性貧血の管理状況によって、移植腎が機能できる期間が変わってくるという報告もありますし(*1,2)、生活習慣病の発症も移植腎に悪影響を与えます。免疫抑制薬の用量調整や感染症に関しては臓器移植科の専門とするところですが、慢性腎臓病に関する診察を腎臓内科で並行して行ってもらえると大変ありがたいです。より良い腎移植を行うために、腎臓内科とはさらに連携を深めていきたいと思っています。

稲熊先生
現在は一部の移植患者さんのみ診察していますが、将来的には、患者さんによって頻度は違っても、すべての移植患者さんを定期的に診察できるようになると良いと考えています。以前診察していた慢性腎臓病患者さんが腎移植を受けて元気になった姿が見られれば、私たちも嬉しいですし、刺激にもなります。

対談シーン2

-----腎移植医療をより良いものにするために、どのようなことを課題と感じていますか。

剣持先生
一般的に、今でも腎移植についての誤解が多いと感じています。
原因の1つとして、まず新しい情報が十分に普及していないことがあると思います。現在の腎移植医療は、10年前、20年前と比べて大きく変わっています。
以前は60歳以上だと移植を受けることは難しいと言われていましたが、現在は60歳以上で腎移植を受けた方が全体の約20%を占めています(*3)。生体腎ドナーにおいては、60歳以上で腎提供を行った方が全体の半数近くを占め、70歳以上の方でも全体の約15%です(*3)
※2021年に行われた腎移植においては、60歳以上で腎移植を受けた方は全体の約27%、60歳以上および70歳以上の生体腎ドナーはそれぞれ約50%、約17%でした(*4)

また、レシピエントとドナーの血液型が違うと移植はできないと思っている方もいらっしゃいますが、移植医療の進歩により、現在はどのような血液型の組み合わせでも腎移植は可能です。

☞ 腎移植の基礎知識「ABO血液型不適合移植」「高齢者の腎移植

そして、もう1つの原因として考えられるのが、一般の患者さんは、元気に生活している移植者と接する機会が少ないということです。腎移植を受けても、一定数の方は再び腎機能を失って透析導入となり(*3)、透析施設に通院するようになります。透析患者さんが出会う腎移植経験者は、ほとんどがこのような方だと思いますが、同じく透析患者さんなので、ご自身と比べて特別に具合が良いわけではありません。その様子が、周囲の透析患者さんが抱く腎移植の印象となり、さらに腎代替療法選択前の慢性腎臓病患者さんへと伝わっている可能性があります。しかし、実際は生体腎移植で85.2%、献腎移植で70.7%の方が移植腎の機能を10年間維持しており(*3)、多くの移植患者さんが長期間、移植腎を維持できています。
※2021年末時点では、2010年~2020年に行われた腎移植の10年生着率は、生体腎移植で81.1%、献腎移植で74.2%です(*4)

そのような現実を知らず、ご自身で最初から腎移植の選択肢を除外してしまっている方が多いように思います。もちろん、血液透析腹膜透析にもメリットがあり、どの治療法が合っているかは患者さんによって異なります。ですから、医療者は当然、すべての治療法について患者さんに正しい情報をお伝えしなければいけません。そして、これから腎代替療法を選択する患者さんも、最初から決めつけずに、まずはすべての治療法について一旦耳を傾けていただきたいと思います。

稲熊先生
既に透析を受けている患者さんにも同じことが言えると思います。一旦治療を始めると、他の治療法について知る機会は少なくなると思いますが、腎移植も透析も、より良い治療成績を得るための試みが続けられています。ですから、患者さん対象の勉強会などには定期的に参加して、知識を更新していってほしいですね。腎援隊のようなインターネットサイトも非常に有用だと思います。
そして、少しでも興味を持った治療法があれば、積極的に主治医の先生に相談していただきたいです。


腎移植医療の課題(1:14)


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*1 Molnar MZ, Czira M, Ambrus C, et al. Anemia is associated with mortality in kidney‒transplanted patients‒a prospective cohort study. Am J Transplant 2007;7:818.
*2 Chhabra D, Grafals M, Skaro AI, et al. Impact of anemia after renal transplantation on patients and graft survival and on rate of acute rejection. Clin J Am Soc Nephrol 2008; 3:1168.
*3 日本臨床腎移植学会・日本移植学会. 腎移植臨床登録集計報告(2018) 移植 2018;53:89-108
*4 日本臨床腎移植学会・日本移植学会. 腎移植臨床登録集計報告(2022) 移植 2022;57:199-219


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