教授 山縣 邦弘 先生
2023.04.01 教えて!ドクター
薬物療法、生活習慣改善、食事療法、運動療法などの保存療法を行います。
監修:筑波大学附属病院 腎臓内科 山縣 邦弘 先生
慢性腎臓病(CKD)の原因にはさまざまなものがありますが、代表的なものとしては、糖尿病、高血圧、動脈硬化などの生活習慣病に長期間罹患したあとに発症する場合や、慢性腎炎などがあげられます。
2021年の透析患者の統計調査から、透析導入の原因となった疾患をみると、その第1位が糖尿病性腎症(40.2%)、第2位が腎硬化症(18.2%)、第3位が慢性糸球体腎炎(14.2%)、第4位が原疾患不明(13.4%)となっています。(*)
糖尿病性腎症は1998年に透析導入の原因として1位となって以来、その割合は増加を続けていましたが、ここ数年は横ばいで推移しています。第2位の腎硬化症は、高血圧による動脈硬化が原因となって起こるもので、透析導入患者の高齢化によって増加しています。第3位の慢性糸球体腎炎は、学校検尿の普及や治療の進歩などにより、透析導入に至る患者さんは減少しています。
実際に外来にかかっているCKDの患者さんの原因の詳細はわかりませんが、高血圧、動脈硬化、加齢といったことで腎機能が軽度低下して、その上に糖尿病や脂質異常症といったさらなる悪化要因が重なり、さらに腎機能を悪くして、CKDにいたる患者さんが多いものと思われます。
1.糖尿病性腎症
糖尿病性腎症は、糖尿病の3大合併症(腎症、網膜症、神経症)の1つです。
糖尿病性腎症に対する治療は、病気の進行度によって異なります。治療の基本は、血糖・血圧の管理、食事療法(たんぱく質の摂取制限)、薬物療法となりますので、主治医と相談し、自分の病期に合った治療を受けることが大切です。
☞参考:基礎知識 「糖尿病性腎症」、ドクターコラム 「糖尿病腎症の診断と治療」
2.腎硬化症
腎硬化症は高血圧が原因で腎臓の血管が動脈硬化を起こし、血管の内腔が狭くなって血流量が減少し、徐々に糸球体が硬化して腎機能が低下する疾患です。病気の進行が遅い良性腎硬化症と、急速に症状が悪化する悪性腎硬化症があります。
良性腎硬化症は一般に本態性高血圧※によって腎臓の血管に動脈硬化を引き起こし、腎臓の障害をもたらす疾患です。良性腎硬化症に対する治療は、高血圧の治療が中心となります。食事療法や運動療法などによる生活習慣の改善や適切な降圧薬による治療を行います。
悪性腎硬化症では急激な血圧上昇によって腎機能の低下が急速に進行して尿毒症に至り、心不全や脳出血で死亡することもあります。血圧管理とともに全身管理が必要なため、一般に入院安静となります。内服による降圧薬が効きにくい場合は注射薬を用いることもあります。
※本態性高血圧:高血圧となっている原因がはっきりとしない状態のことで、高血圧患者さんの大半があてはまる。
3.慢性糸球体腎炎
慢性糸球体腎炎は1つの疾患ではなく、多くの疾患の総称です。慢性糸球体腎炎には、IgA腎症、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症などさまざまな腎炎があります。それぞれ原因が異なり治療法も異なりますが、治療の基本は食事療法や薬物療法です。
食事療法では、塩分摂取量を抑え、たんぱく質の取り過ぎに注意します。薬物療法では、疾患に応じて降圧薬や副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制薬、抗血小板薬・抗凝固薬などを使用します。生活の上では、過度のストレス、睡眠不足、過度の運動を避けます。
このような原因に対する治療と同時に、CKDの共通の悪化因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、高尿酸血症)のコントロール・治療が重要です。
☞【参考】
ご家庭で作れる美味しい腎臓病食「ごほうび腎臓病食を楽しもう!」
末期腎不全の治療法「腎代替療法とは」
* 花房規男 他. わが国の慢性透析療法の現況(2021年12月31日現在) 透析会誌 2022;55:665-723
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